2017年03月07日

2017年2月の主なツイート(科学と社会)

2017年3月7日 16:45 一部表現を大幅に改訂、リンク追加

2月のツイート発信件数は57件と1月に比べて27件増であった。その中で、ツイートアクティビティ(3月6日現在、以下同じ)によると、インプレッション総数(ツイートを見たユーザーの総数)の上位3件は、多い順に、

Imp1)2月23日
毎日新聞のコラム「今どきサイエンス」での「地層に残る地球の歴史」と題する記事を読んだ感想(1245インプレッション)
Imp2)2月23日
毎日新聞の特集シリーズ「科学の森」での「海に沈んだ謎の大陸 「ジーランディア」掘削し本格調査へ」と題する記事の紹介(1214インプレッション)
Imp3)2月17日
「ル・モンド・ディプロマティーク」2016年11月号掲載記事:「欧州エリートに浸透した米国式『ソフト・パワー』」の紹介(912インプレッション)

であった。なお、エンゲージメント総数(ユーザーがツイートに反応した合計回数)は、Imp1では1回、Imp2では2回にすぎなかったがImp3は26回と多かった。そこで、エンゲージメント総数を比べた。その上位4件(2件は同数)は、多い順に、

Eng1)2月12日
毎日新聞の書評欄「今週の本棚」での内田麻理香さんの『フンボルトの冒険-自然という<生命の網>の発明』についての書評の紹介(29エンゲージメント)
Eng2)2月17日
「ル・モンド・ディプロマティーク」2016年11月号掲載記事:欧州エリートに浸透した米国式「ソフト・パワー」の紹介(26エンゲージメント)
Eng3)2月2日
毎日新聞の特集シリーズ「科学の森」での「南極「昭和基地」設置60周年 温暖化観測の重要拠点に」と題する記事の紹介(25エンゲージメント)
Eng3)2月25日
毎日新聞のコラム「メディア時評」での稲垣えみ子さんの「『日本』とはどういう国なのか」と題する記事の紹介(25エンゲージメント)

であった。

このように、2月17日に「ル・モンド・ディプロマティーク」の記事を紹介したツイートは、インプレッション総数でも、エンゲージメント総数でも上位3位以内に入っており、最も反響を呼んだツイートだったといえる。その他の6件のツイートは、奇しくも、全て毎日新聞の記事に触れたツイートであった。また、インプレッション総数の上位2件およびエンゲージメント総数の上位4件のうちの2件がいわゆる科学ネタであった。

以下はこれらのツイートの補足と2月の活動記録。

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2015年04月07日

学位の名称


4月9日18時から東京大学本郷キャンパスで科学コミュニケーション研究会第30回関東支部勉強会が開催される。『現代の事例から学ぶサイエンスコミュニケーション 科学技術と社会とのかかわり, その課題とジレンマ(4月6日刊)』の監訳者のお一人である加納圭さんが本書の解説をされるという。この本の第10章「サイエンスコミュニケーションにおける学びを助ける」を翻訳されている都築章子さんには、海洋学会教育問題研究会主催の「COSIA(海洋科学コミュニケーション実践講座)体験ワークショップ」でお世話になっていることもあり、是非とも参加したいと思っている。

そのつもりであれこれ考えてみると、退職後の名刺をまだ作っていないことに気付いた。この10年間の名刺は勤務先が定めていた既成のデザインのものを使っていたため、久々に自分で名刺原稿の制作から初めた。当初は、氏名、住所、メルアドだけで良いと考えたが、今後の科学コミュニケーション活動を考えると、学位、専門、個人ウェブサイト、本ブログ、その他の情報も記す方が良いと考えた。

その中で、学位の名称をどうするか迷った。迷った理由は、最近、ある人から「(管理人から)初めて受け取った名刺には京大理博と書かれていたが、どうして理博だけではなく、大学名を付けていたのか?」との質問を受けたことによる。結局、新しい名刺では、正式名称の「理学博士(京都大学)」を使うことにした。以下はその理由など。

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2014年10月11日

「金だけ、今だけ、自分だけ」の風潮への対処法

9月8日に以下のようなツイートをした。
 
『「月刊むすぶ」2014年7月号と8月号に連載された「からだの健康 社会の健康(槌田 劭)」を読んだ。「金だけ、今だけ、自分だけ」から「自立、共生」という提言に強く同意』
 
 この強いインパクトを持つ「金だけ、今だけ、自分だけ」というフレーズについての槌田劭さんの他の主張を読もうと思ってネットで調べた。「金だけ、今だけ、自分だけ」を検索しても槌田劭さんの記事はヒットせず、「今だけ、金だけ、自分だけ」という似たようなフレーズに鈴木宣弘東京大学大学院教授が言及している記事が多数ヒットした。
 
以下に、槌田劭さんの連載記事「からだの健康 社会の健康」を読んだことに端を発して調べたり考えたことを述べる。種々のことを書いているうちに長文になってしまいました。
 
拙ブログ関連記事:
2007年06月16日 月刊むすぶ 
 
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2014年07月13日

書籍・書評の紹介(6月23日-7月3日のツイート)

以下の書籍・書評を紹介する6月23日―7月3日の5件のツイートのまとめ。
 
1)人生は、楽しんだ者が勝ちだ - 米沢富美子|日本経済新聞出版社”
  同窓会関東支部幹事仲間からの紹介
2)毎日新聞 今週の本棚:内田麻理香・評
  『好奇心の赴くままに ドーキンス自伝1』=リチャード・ドーキンス著 - 毎日新聞”
3)毎日新聞 今週の本棚 新刊:
  『原発事故と放射線のリスク学』=中西準子
4)NATROM本『「ニセ医学」に騙されないために』解説文
5)中学理科授業が必ず成功するアイデア ―すぐできるちょっとの工夫65―
  大学教員時代の教え子で現中学校教員の原口さんの著書
 
5件のツイートを読む
ラベル:教育 書評 研究 環境
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2011年08月29日

理学部と工学部の壁

2011年8月31日0時40分 追記

YOMIURI ONLINE(読売新聞)に科学部デスクである保坂直紀さんによる「知の結集阻む理学部と工学部の壁」と題する記事が8月26日付けで掲載されている。7月14日に開催された日本学術会議公開シンポジウム「シミュレーション・予測と情報公開に求められること-これまで・今・これから-」を紹介した拙ブログ記事に対して「理学部と工学部は違う」ことについて詳しく言及されたコメントがあったこともあり、保坂さんの記事を興味深く読んだ。主題は『「原子力ムラ」の閉鎖性』に端を発して、「さまざまな側面からの専門知識を結集する仕組み」の必要性を説くことにあるらしいと理解した。しかし、この記事を読むのは、管理人にとっては、どうにも頭が痛くなるような作業であった。以下は、この作業で管理人が考えたことなどの詳細。

拙ブログ関連記事:
2011年05月26日 価値観の多様性を認める社会へ
2011年07月18日 シンポ「シミュレーション・予測と情報公開」


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2011年08月22日

coherent voice of scientists

2011年8月28日22時35分 追記

ブログ「大隅典子の仙台通信」の「児玉先生発言に端を発して思う科学リテラシーのこと」と題する8月5日付記事で、科学技術振興機構研究開発戦略センター長の吉川弘之さんの「緊急に必要な科学者の助言」の一部を引用した後、「今こそ、異なる分野の科学者がcoherent voiceを上げ、邪魔なノイズ(放射能不安を煽って儲けようとする、根拠無しに安全と言い張る)が聞こえないようにすることが求められているのだと思う。」と述べている。この「邪魔なノイズが聞こえないようにする」coherent voiceという大隅さんの考えに強い違和感を感じた。以下に、coherent voiceについての、管理人の考えを述べる。



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2011年08月01日

日本発の「ポスト・モダン」思想

J.R.ブラウン著「なぜ科学を語ってすれ違うのか ソーカル事件を超えて」を読んでいて、気にかかるところがあった。それは、「ポストモダン」に言及した箇所である。管理人にとって聞き覚えのある、久松真一先生(管理人が学生時代に所属していた京都大学心茶会の会長)がお話しされていた「ポスト・モダン」とは、どう考えても一致しないのである。ウィキペディアで「ポストモダン」を調べると、ブラウンが議論の対象としているのと同じ内容である。京都大学心茶会の卒業生の組織である心茶会の機関誌「心茶」への寄稿を依頼され、原稿を書きはじめたのを機会に、改めてネットで「しつこく」調べたところ、管理人の疑問に答える資料が見つかった。以下は、その紹介。

拙ブログ関連記事:
2008年04月30日 心茶会と久松先生のこと
2010年12月17日 「なぜ科学を語ってすれ違うのか ソーカル事件を超えて」


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2011年07月10日

不完全な世界における経済学の役割

もうかなり前になってしまったが、ブログ「himaginaryの日記」さんが6月21日付けの記事「地産地消は環境に良くない」でEd Glaeserがボストングローブに書いている言説を紹介している記事を読んで、随分と乱暴な論旨であり、不勉強にもEd Glaeserが何者なのかも知らなかったので、その背景を知るべく、元記事に当たってみたり、Googleで調べてみた。その結果、Ed Glaeserが執筆陣の一員として約2年半の間に毎週寄稿していたニューヨークタイムズのコラム「Economix Explaining the Science of Every Life」を終えるにあたって寄稿した5月10日付けの「The Role of Economics in an Imperfect World」と題する文章を目にした。なかなか含蓄のある言葉が続いていた。以下は、その詳細。


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2011年06月27日

内閣府答申「科学技術に関する基本政策について」見直し案へのパブコメ

6月1 4 日から26日まで内閣府によって行われた答申「科学技術に関する基本政策について」見直し案に関する意見募集に応じて、意見を25日未明にウェブ送信した。以下は、その内容。

拙ブログ関連記事:
2010年4月29日 文部科学省へ「科学技術政策に関する意見」を送った
2010年10月03日 内閣府と文科省のパブコメ募集



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2011年05月26日

価値観の多様性を認める社会へ

毎日新聞5月16日付け朝刊の「社説:視点・震災後 少数派にこそ耳傾けよ」と題する青野由利さんの署名記事(印刷紙面では明示されているが、ネット掲載記事では示されていない)を読んだ。この論説の主旨は、
今後は、原発政策の根本的な見直しや、既存の原発の危険度の判定に、多様な意見をくみ上げる仕組みが必要だ。そのためには、主流派に流されやすく、少数意見を排除しがちな日本的意思決定の在り方を見直した方がいい。
ということにあると思う。管理人は、その記述の一部に首をかしげるところがあるものの、この主旨には同意する。というか、「多様な意見」の存在の重要性をもっと積極的に評価し、「多様な意見」の存在を重視することこそが、より住みやすい社会の構築や企業・科学の発展に必要不可欠だと考えている。以下は、その詳細。


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2011年02月13日

多中有一、一中有多

玉置沙由里さんのブログ「女。MGの日記。」の2月10日付けのエッセイ「生きざま露出メディアの台頭」が一部で共感を呼んでいる。夏目漱石著「私の個人主義」の紹介から始まって、「ツイッターというメディアをみて育った子どもたちが大人になる時、きっと今以上にいろんな生き方をする人々が増えていくだろう、そしてそれが排斥されることもないだろう。」という思いが示されていた。この中の「(Twitterによって)自分と違う生き方をしている人も、自分と似たところがあるんだな。そう気づくことによって、人は「違い」対して、寛容さを増していくのだ。」という記述や、「今までの自分では到底知り得なかった「ヘン」な生きざまをしている人に出会えるのだ。なおかつ、ある共通項をその人も自分ももっているという親近感とともに。」という記述を拝見して、「多中有一、一中有多」という言葉を思い出した。以下は、その詳細。


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2010年12月17日

「なぜ科学を語ってすれ違うのか ソーカル事件を超えて」

2010年12月17日12時10分 一部修正
2010年12月21日01時50分 拙ブログ関連記事へのリンクを追加
2011年01月10日15時40分 他ブログの記事の紹介を追記

11月20日夜に「はてなブックマーク 最近の人気エントリー」を眺めていて、J.R.ブラウン著、青木薫訳の標記の本が「みすず書房」から出版されたのを知った。「科学の合理性と客観性にあらためて信を置きつつ、論争必至の問題提起に及ぶ、刺激的な科学論入門」という説明を読んで、思わずAmazonで注文してしまった。22日に約400頁のぶ厚い本が自宅に配送されたが、急ぎの仕事を抱えていたため、なかなか読み始めることができなかった。12月に入り、寝る前に少しずつ読み始めた。いわゆる「科学論」の入門書である。重箱の隅をつっつくような議論が続く所を読み続けるのが辛かったが、科学哲学研究者と科学者の間に横たわる溝についての解説を初めとして、面白く感じる箇所も多かった。何とか、読み終えたが、十分に理解できたわけではない。以下は、そんな中で、印象に残ったことなど。

拙ブログ関連記事
2010年11月07日 科学者の科学リテラシー
2009年11月28日 社会の中の科学
2008年05月06日 科学について知っていてほしい5つの事



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2010年08月31日

理系と文系の収入の比較の意味

8月24日に京都大学から「理系学部出身者と文系学部出身者の平均年収の比較調査の結果について」と題するプレスリリースが発表された。毎日新聞の見出し「年収:あれ?理系が100万円多い」で表わされているように、従来の「文系の方が高収入」という「認識」と逆の結果だったことから、全国各紙(京大のプレスリリース掲載情報では、朝日新聞(8月25日 30面)、京都新聞(8月25日 26面)、産経新聞(8月25日 22面)、日刊工業新聞(8月25日 3面)、日本経済新聞(8月25日 33面)、毎日新聞(8月25日 24面)および読売新聞(8月25日 29面))で報道された。ネット界でも話題を呼び、多くのTweetが流れた。理系・文系に分けて収入を比較することの是非を含めて、新聞各紙の報道内容に腑に落ちない点があったので元ネタを調べたが、その目的、調査方法や結果について、疑問が募った。それで、ネット検索でいろいろ調べてみた。以下はその結果。

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2010年08月09日

アウトリーチの義務化

2010年8月14日03時09分 一部改訂

7月30日付けでサイエンスポータルに掲載されているインタビュー記事「後継者育成は科学者の使命-アウトリーチ義務化(投稿者:科学新聞 中村 直樹)」を読んだ。そのリードでは、「総合科学技術会議は6月19日、3,000万円以上の公的研究資金を獲得した研究者に国民との科学・技術対話(アウトリーチ活動)を義務づけることを決定した。研究者にとっては大きな負担になる可能性がある、と関係者からは不安の声も聞こえてくる。アウトリーチ活動義務化を積極的に進めた内閣府の津村啓介・政務官に聞いた。」と記載されている。「より良き市民」を増やすために、一人でも多くの研究者が科学コミュニケーション活動を通して、科学リテラシー、特に「科学の営みについての知識」が普及することを願って、かって、「一般向けに評論活動をしている科学者の数を増やす」方策として、
イスラエルでは大学教員は年に1回以上アウトリーチ(この一方向的な表現はあまり好きではないが)を行うのが義務付けられていると聞いたことがある。また、サイエンス誌2009年3月13日号のEditorial 'Scientist Citizens'(全文閲覧は有料)では、ストックホルム大学やスタンフォード大学の環境気候科学分野、米国ウッズホール海洋研究所では大学院生にメディアとの対話訓練を行っていることが紹介されている。このような活動を 国の政策の一環として科学技術基本計画の中に組み込むことも可能かもしれない。
と述べた管理人としては、あまりの急展開に驚いている。以下は、サイエンスポータルのインタビュー記事を読んだ感想など。

拙ブログ関連記事:
2009年03月22日 「科学評論家」が不要な社会に


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2010年06月18日

横井小楠

2010年6月19日02時50分 一部修正。ウェブ魚拓を追加

12日午後に歯医者へ行った。その待合室で時間つぶしに何気なく開いた雑誌「致知」2009年12月号(目次はここ)で、小島英記の「横井小楠 もう一つの近代を構想した男」が目にとまった。読み始めると結構、面白く、最後まで読み切った。帰宅後、ネットで「横井小楠(よこいしょうなん)」について調べてみた。不勉強で知らなかったが、いろいろな人が論じている。以下は、その結果。


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2010年06月07日

風力発電の闇

2010年6月8日00時20分 一部訂正、追記
2010年6月9日01時45分 一部訂正、追記
2011年2月27日21時45分 一部訂正


昨年11月末頃からいくつかの新聞で「 風力発電施設の風車の回転などで出る「低周波音」と呼ばれる音波が、人間の健康に及ぼす影響を検証するため、環境省は来年度から初の大規模調査に乗り出す(読売新聞2009年11月29日ウェブ魚拓はここ)」という報道があり、ようやく被害住民の声に応える動きが始まったと内心、喜んでいた。このことを拙ブログでも取り上げようと思っていたが、詳細に論ずるのに十分な時間を確保できず、断念していた(このことは、拙ブログ2010年4月5日付け記事の冒頭でも書いていた)。そうこうしている内に、定期購読している月刊「むすぶ」の5月号で「風力発電の現場から、4月30日風力発電を考える全国集会報告」が特集された。一読して、環境省の調査が大きな問題を含んでいることを知った。専門外ではあるが、以下、風力発電に関わる深刻な問題の詳細と、それに関わる科学技術研究のあり方などを述べる


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2010年04月15日

ブレークスルー研究

現在、「国立研究開発法人(仮称)制度の在り方」や「第4期科学技術基本計画」の検討が進行している。また、4月5日付けで日本学術会議は「日本の展望-学術からの提言2010」を公表している。これらと密接に関連しているが、拙ブログ4月5日記事「環境教育コンサルタント」で海洋学会2010年度春季大会中の4月29日に開催されたワークショップ「ブレーク・スルー研究をめざして」での議論を紹介した。その最後に、参考として、市川惇信 著「ブレークスルーのために(オーム社出版局,1996年)」で述べられている「ブレークスルー研究」の定義を紹介した。ただし、その定義は原文ではなくて、書評で引用されていた定義であった。前から気になっていたが未読だったので、定義を確認する意味もあって、元本を購入して読んだ。同時に、竹内薫 著「ブレイクスルーの科学者たち(PHP選書659)」も購入して読んだ。以下は、その結果。


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2009年11月28日

社会の中の科学

13日の事業仕分けで科学技術関連事業予算の多くが廃止あるいは縮減の対象となった。このことについて、11月15日付けの拙ブログ記事「国家事業予算査定を「事業仕分け」で行う愚(リンク先を更新:2023年12月15日)」で、管理人は
結局、多くの自律的研究者が、国の支援を受けて自分が進めようとしている研究に対する国民の支持を得るために、各々が最善と思う方法で活動を進めるしかないのではないかと思う。ただし、このような活動を謙虚に実行できる第一線級の研究者が日本に果たしてどの位いるのかを考えると心許ない気もする。
と述べた。種々の学界組織やグループが表明した反対意見を見ると、残念ながら、どうも、この危惧は当たっていたようである。


表明された意見の多くは、我が国の科学技術研究開発従事者(あえて科学者とは言わない)が置かれている深刻な立場を理解しておらず、従来の牧歌的な自律的科学研究者の立場からの物言いのように見える。以下は、管理人が月刊海洋号外第40号(2005年5月発行)「海洋学の最前線と次世代へのメッセージ」で発表した「社会の中の海洋物理学研究(リンク先を更新:2023年12月15日)」で述べた内容の一部改訂・追加版。


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2009年11月15日

国家事業予算査定を「事業仕分け」で行う愚

11月11日から政府の行政刷新会議ワーキンググループによる「事業仕分け」が一般公開の下で始まり、科学技術研究開発事業を含めた各種国家事業の廃止や予算削減などの具体的な結果が報道されている。

管理人は、今回の事業仕分けによって、今までの自民党時代には密室で行われていた予算編成作業の一部が広く公開されたことを高く評価する。しかし、元々、事業仕分けとはシンクネット「構想日本」が提唱している行政サービスの評価方法であり、その方法を国家事業予算編成の調整に採用されたことに違和感を感じる。また、このような事態を招いたのは、これまでの予算編成を自民党実力者たちと仕切ってきた財務省である。その財務省が「事業仕分け」を補佐・主導していることにより、単なるコストカットのためだけに終わることを危惧している。以下は、その詳細。


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2009年10月19日

事故調査のあり方

2005年JR福知山線脱線事故の調査情報漏洩問題で次々と事故調査委員会への信頼を揺るがす不祥事が露見している。先日の拙ブログ記事「第11大栄丸の引き上げと事故原因調査」の中で、「多くの人の理解・納得を得るためには、調査報告書はどのようになっていたら良いのだろうか」について私見を述べた。

この件について、学術会議発行の月刊「学術の動向」2009年9月号の特集「工学システムに関する安全・安心・リスク」の中で専門家である松岡猛さんの「事故調査のあり方」と題する記事で詳しく述べられているのを見つけた。

この特集記事を読んで考えたことを以下に述べる。


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2008年12月07日

UTCとGMT

ちょっと古い話であるが、毎日新聞は11月19日朝刊で「ネットに犯行示唆?」の見出しと記事を掲載し、その翌日に、書き込みがあった時刻は事件前ではなく、事件の報道後であったと、訂正した。その対応の不適切さを多くの人が強く非難している(例えば、ブログ「Birth of Blues」の記事「元厚生事務次官連続殺傷事件の大誤報で毎日新聞がおわび」を参照)。この誤報のきっかけは、記者がフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』日本語版の当該記事の編集時刻がJST(日本標準時)ではなくて、UTC(協定世界時、JST-9時間)であることに気付かず、事件発生前に記載されたと思い込んだことにあった。

毎日新聞社会部のその後の対応の醜悪さへの批判をここでは繰り返さない。毎日新聞の自浄機能(「開かれた新聞」委員会の誠意ある対応)に期待する。

本題は、この大誤報に関連して行われたネットアンケートの結果である。「UTC、JSTという用語、およびその違い」を知らないと答えた回答者の割合が約4分の1であったことにちょっと驚いた。


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2008年07月13日

徳不孤、必有鄰

拙ブログの6月30日の記事「シミュレーションだから現実はわからないか?」におけるbobbyさんとの質疑応答の中で、管理人は、
>標準的な日本人は専門家の意見を「鵜呑み」にして「思考停止」する人が圧倒的に多いのも事実です。

ちょっと意味は異なりますが、「徳、孤ならず、必ず、郭あり」という言葉があります。

批判的思考方法を身に付けた、専門家を無条件に信用しない非専門家を一人でも増やすためには、自分の思いに囚われず、柔軟に、焦らず、騒がず、諦めず、発言し続けることが大事だとを思っています。
と述べた。ここで「郭」という字を使ったことに自信がなく、改めてネットで調べて見た。その結果、やはり「郭」という字を使ったことは誤りで、正しくは、「徳不孤、必有鄰(読み下し文:徳は孤ならず、必ず隣あり)」であって、論語の里仁(りじん)篇の一節に記載されている言葉であることが分かった。また、多くの人がこの言葉について述べていることを知った。以下に、それらを読んで考えたことを述べる。



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2008年06月09日

大正14年の日本海洋学会(続報)

2019年10月14日 一部リンク更新
1.日本海洋学会の創立に至る経緯
今日のエントリーは以下の関連記事の続報です。3)の最後に、「日本海洋学会の創立に至る経緯の詳細は「日本海洋学会20年の歩み」で述べられているようだが、手元にない。」と述べた。これに対し、先日、読者のお一人から、「日本海洋学会20年の歩み」の中の関連個所「日本海洋学会創立当時の思い出(宇田道隆)」を送って頂いた。ありがとうございました。

この内容は、昭和7年4月の第1回海洋談話会から昭和16年1月の日本海洋学会発足までの長い道のりが記述されている。その詳細は、以下のリンク先をご覧ください。
http://www.k4.dion.ne.jp/~hiroichi/refs/JOS-uda1961.pdf
この資料の著者である宇田先生は、管理人が36年前の学会でデビューした時の学会長であった。会場の最前列に陣取って熱心に質問されていたことや大判の紙を使った口頭研究発表を懐かしく思い出す。この資料を読むと、今と変わらず、昔も、人々が色々な思惑で動き、物事がすんなり運ばなかったことが分かる。海洋基本法の成立を契機に、社会と海洋研究とのつながりが深まり、海洋に関わる種々の学会の在り方が問われる中、日本海洋学会創立に至る経緯が人々の記憶のから失われてしまうのは惜しいと考え、ブログで紹介させていただきました。

関連記事:
1)2007年6月15日の記事「黄海の流れ」
2)2007年6月21日の記事「黄海の流れ(2)」
3)2007年7月1日の記事「大正14年の日本海洋学会」


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2008年02月24日

科学技術

私は先のエントリーで
海にかかわるすべての学問研究分野を含めた研究分野は「海洋学」ではなくて「海洋科学」と呼ばれるのが相応しいと私は考える。ただし、ここで述べた定義には、自然科学、人文・社会科学、工学(技術)、それらの複合領域が含まれており、未だに科学が自然科学に限定される場合が多い現在では、まだ一般には受け入れられない定義のようにも思う。
と述べた。この「科学に技術、他を含むこと」について、ブログ「ハーバード大学医学部留学・独立日記」で島岡さんが
Science&Technologyはしばしば科学技術と一語に和訳されることがありますが、決して1つの言葉でありません。あくまでも、Science(科学)とTechnology(技術)の2つの言葉を意味します。便宜的にScientistとEngineerが、ScienceとTechnologyに対応して使われることが多いと思います。
と述べている(エントリー「科学と技術/サイエンティストとエンジニア」参照)。島岡さんの認識が、現在の大勢と思うが、私が科学を考える上で大いに参考にしている市川惇信さん(本来ならば「先生」とお呼びすべきでしょうが、ブログの世界ということでお許しください)のHome Page「科学技術とヒトの社会」に掲載されている論考「なぜ科学の成立は技術より5 万年遅れたのか」その他を元に、以下に「科学に技術、他を含むこと」について述べる。

なお、文中に引用した市川惇信さんの文言は2月23日にダウンロードしたファイルに基づいています。現在、推敲中ですので、今後、変わる可能性があります。




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2008年01月03日

爆笑問題のニッポンの教養SP

NHKの爆笑問題のニッポンの教養SP「新年会スペシャル ~2008年 これがニッポンの大問題~」の一部を見た。「これまで出演して頂いた個性派の教授たちを招いての新年会」とのことで、爆笑問題の2人と浅島誠(発生生物学・東京大学)、野矢茂樹(哲学・東京大学)、遠藤秀紀(遺体解剖学・京都大学)、佐藤勝彦(宇宙物理学・東京大学)、福岡伸一(分子生物学・青山学院大学)、斎藤環(精神医学・佐々木病院)の6氏が居酒屋めいたところに集まって行われた種々の議論風景の放映であったが、例によって、どこかに違和感を感じた。

NHKの番組HP内の過去放送記録サイトに掲載されている「ディレクター観戦後記」と「プロデューサーの編集後記」を読んで、その源に気付いた。



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2007年11月09日

日本物理学会のキャリア支援に関する調査

海洋学会MLを通して、物理学会が11月11日まで実施中の「研究者のキャリア支援に関する調査」への協力依頼を受け取った。
このアンケート調査は主に、博士課程学生、ポストドクターなどの若手研究者の実態や現状に関する問題、またキャリア形成に対する考えなどを把握することによって、今後のキャリア形成支援に必要な情報を収集する非常に重要な調査です。
とのことである。早速、 http://www.ph-career.org/enq/にアクセスした。
キャリア形成への支援が必要ではないと思われる世代の方も、比較のためのデータとなりますので、可能な範囲でご回答いただきますようお願いいたします。
とのことなので、調査に協力した。





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2007年10月25日

今年のノーベル平和賞の違和感

ノルウェーのノーベル賞委員会は12日、記録映画「不都合な真実」などを通じて地球温暖化防止を訴えているアル・ゴア前米副大統領と、温暖化防止研究を政策決定に生かすための国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC、事務局・ジュネーブ)に07年ノーベル平和賞を授与すると発表した。(毎日新聞他 2007年10月12日)

この選択について、多くの人が歓迎あるいは賛同の意を表している。地球温暖化に関わる研究に従事している私にとっても喜ばしいニュースには違いないが、どこか違和感を感じたのも事実である。

「陰謀説」は脇において、この違和感がどこから生じているのかを考えてみた。


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2007年08月04日

研究意欲

9月の航海に関する準備作業の合間を縫って、8月1日午後に国連大学で開催された開催独立行政法人海洋研究開発機構「地球環境シリーズ」講演会「海から知る地球温暖化~IPCC温暖化予測と海洋研究~」に16時頃から参加した。この講演会の最後の質疑応答で、司会のNHK解説主幹室山哲也さんから地球温暖化についての研究を行っている講演者に「地球温暖化研究を行う動機は何か」というような意味の質問があった。時間がなく十分に議論を深めることはできなかったが、研究者と一般参加者との間の「溝」を埋める試みとしては良い話題設定だったと思う。地球温暖化に限らず、各研究者が何を目指して研究しているのかを生の言葉で語ることが、社会と科学の結びつきをより確かなものにすると思う。

これに関連して、7月22日のブログ「柳田充弘の休憩時間」に、Nature誌が掲載した天皇陛下の英国におけるリンネ協会での講演要旨に関連しついて、以下の記述がある。

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2007年07月01日

大正14年の日本海洋学会

6月21日のエントリーで「大正13年10月の西表島北方での海底火山の爆発で生じた大量の軽石が日本各地の海岸に漂着したことについて「その当時、草創期であった日本海洋学会では」という「谷川健一著 甦る海上の道・日本と琉球(文春新書)」で紹介されている「与那国町史第1巻」での記述は、日本海洋学会が創立されたのが1941年(昭和16年)であり、該当しない。現日本海洋学会の前身のことかもしれないが・・・」と述べた。このことについて、「海洋気象学会」の前身の「海洋学会」が、文春新書に登場する「日本海洋学会」という可能性もあるのではないでしょうか。というコメントを同業の読者からいただいた。



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2007年06月16日

月刊むすぶ

日本各地の市民運動、住民運動の紹介している「月刊むすぶ」という雑誌がある。もうすぐ発刊37周年になるという。どういうきっかけだか忘れたが、私がまだ学生であって、この雑誌を前身である「月刊地域闘争」の時代から購読している。当時の表紙は同じ研究室のYTさんの繊細なペン画であった。この雑誌を発行しているロシナンテ社は私の下宿先があった下鴨の小さな民家であった。「学者先生・評論家」ではなくて、実際に全国各地で行政機関などに異論を唱えて奮闘している人たちの記事を読み、元気付けられた。結婚した頃には合成洗剤問題が誌面をにぎわしていた。

各地での、公害問題、教育問題、医療問題、差別問題などへの取り組みが紹介されており、時折り「進歩的文化人」に取り上げられたりしたが、販売不振その他の理由により、強面のする「地域闘争」から「むすぶ」へと誌名が変わった。私が京都に居た当時は4名程度の人が発行業務に携わってと記憶しているが、今は四方さんが孤軍奮闘しているようである。

本ブログにロシナンテ社のWeb Siteへのリンクを貼ったので、HPを読んで興味のある方は購読してください。

ついでに、私が注目している一部のブログやHPへのリンクも貼りました。また、エントリーのカテゴリーに「海のこと」と「全エントリー」を追加しました。
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2007年04月30日

挑戦

4月16日付け毎日新聞の「余禄」が,東京大学平成19年度入学式で先端科学技術研究センターの目が全く見えない、耳が全く聞こえない福島智准教授が祝辞の中で「他者の立場を想像する力と、他者と協力しながら新しいものを生み出していく営み」こそが挑戦であると訴えたことを紹介している.

早速,東京大学のHPにアクセスして,そのスピーチの全文を読んだ.その最後に「困難に挑戦するということ」について述べられている部分を,ちょっと長いが以下に引用する.
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2007年01月20日

研究で目指すこと

<a 女性科学者のスペースII>さんが「研究者 アラカルト」で「自分がどんなPI(研究室長)になりたいか」のロールモデルをピックアップされている.その中で,
あふれだすアイディアに基づいて、大勢の質の高い学生・ポスドク・職員と共にコンスタントに論文を出し。
その蓄積の結果、数年に一回、ものすごい発見をし。何十億円規模のプロジェクトを申請し、通った暁には他の先生方に配布する。
実力と、そして集まってくる優秀な人材によって成り立つ、まさに最高峰の研究室。

見た目と声からもあふれ出す、ものすごいパワー。
私にはない・・・こんな風にはなれない。。。(TT)

あるいは,
「あの結果?偶然できたの」

でも偶然じゃないと私は思う。昔から私の憧れだった人。
独自のすばらしいアイディアに基づいてこつこつと実験を行い、世界に誇る結果を数年間に一度生み出すところまでは、前の方と同じ。

違うのは、この方の周りには人が集まってくる。物静かなのに。
秋の実った穂が一面に広がり金色に輝いているような、やわらかくて暖かい雰囲気。

・・・
たぶん私、こうなりたいんだけど。

と述べている.

<a 女性科学者のスペースII>さんと研究対象・分野が違うためと思うが,自分では今まで思いもしなかった「世界に誇る結果を数年間に一度生み出す」という研究者(室長)の理想像に軽い驚きを感じた.でも,じゃあ,自分は何を目指してきたのかを考えてみた.

どうも大学教員時代に行っていた自分の研究は「世界に誇る結果」を目指していなかったことだけは確かなようだ.むしろ,興味のある海洋現象(黒潮前線(注1)の維持機構,黒潮の流量変動,東シナ海の海水循環,等)についての理解を少しでも深めたいという内的欲求(注2)が強かったように思う(もちろん,その研究が社会にささやかな貢献をすると考えてはいたが...).

その中で,あわよくば,後世の天才と呼ばれる人の論文で「このような誤った解釈もあったが・・・」という形で引用されるような論文を書きたいとは思っていた.このように考えたのは,卒論で取り組んだ研究テーマが,19世紀以来の水面波についての理論的研究の後,詳細な観察に基く風波の発生発達理論の提案,その理論の不十分性を指摘する実験結果の提出,その実験結果を含めた新たな理論の提案という段階を経て発展してきたが,当時は未解明な点が残されていた(現在も完全に解明されてはいない)「風波の発達機構」であったことに起因しているように思う.歴史的経緯を考えると,自分の成果・提案にどんなに確信をもっていても,不完全な部分が残っており,とても「誇り」までは持てないのが正直な気持ちである.

現在の職場では,気候変動システムに重要な役割を果たしていると考えられている黒潮続流域での海面フラックスについての観測を実施し,誰もが得ることの出来なかった観測資料を得ること,あるいはその資料解析等による新たなカラクリの提案を目指している.このことは,たぶん「世界に誇る結果」を目指していることにはなるのだろう.しかし,「誇る」というよりは,気候変動システムの理解の深化に「貢献する」という意識の方が私には強い.

以上,「世界に誇る結果」という言葉に触発された私の思いを述べた.多分,<a 女性科学者のスペースII>さんのいう「世界に誇る結果」とは,世界的な学術誌(例えばNature)への掲載論文のことなのでしょうね.

(注1)黒潮の沖側と岸側で海面の水温・塩分が急激に変化している現象.水温の違いは人工衛星画による海面水温画像に明瞭に見られる.この付近には魚が多く集まり,漁場が形成される.

(注2)内的欲求と外的欲求についてはここを参照.
posted by hiroichi at 04:13| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑感 | 更新情報をチェックする