2022年09月02日

故柳哲雄さんとの50年

7月4日に日本海洋学会MLで、九州大学名誉教授、元 同大学応用力学研究所所長であった柳哲雄さんが、7月2日18時48分に脳出血のため急逝されたことが伝えられた。故人と管理人は、1971年4月以来の研究室同期生として、対象は異なるものの、共に海洋学研究者の道を歩んだ仲間であり、拙ブログでも何回か故人の活動に言及している。奇しくも、本年5月には2人同時に日本海洋学会総会で名誉会員就任が承認され、日本海洋学会2022年度秋季大会期間中の9月5日には、2人で壇上に並んで就任の挨拶をする予定であっただけに、万感の思いにかられ、言葉を失った。以下では、故人を偲び、故人との約50年の公私にわたる交流を振り返る。


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ラベル:訃報 研究
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2021年03月26日

故平啓介さんの思い出

3月17日午後に海洋学会MLを通して、元東京大学海洋研究所所長の平啓介さん(初めてお会いした時からずっと「さん」付けでお呼びしていましたので、ここでも、そうさせて頂きます)が3月10日にお亡くなりになったことを知った。全く、思いもかけない訃報に接し、個人とのご一緒した数多くの航海、国内外における様々な会議、その他での在りし日のお姿が脳裏に浮かび、深い悲しみに襲われた。以下に、故人との思い出を綴る。



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2017年05月11日

追悼 故横山雅俊さん

サイエンスコミュニケーション活動の仲間であり、様々な科学コミュニケーション活動を草の根的にされてこられた横山雅俊さんが4月9日に不慮の事故でお亡くなりになった。3月31日のイベントでお会いしたばかりだったので、ご逝去の第1報をサイエンスコミュニケーションネットワーク横串会(以下、横串会)の会員交流サイトで受けても、信じることができず、16日のお通夜に参列して、ようやく実感した。以下に、個人との思い出の日々を記して、個人を偲ぶ。

なお、故人の20年来のご友人である榎木英介さんが主宰するサイエンス・コミュニケーション・ニュース No.710 2017年4月17日号 Vol.1の巻頭言で故人の追悼文を掲載している。ご参照ください。


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2015年03月29日

才野さんとの思い出

日本海洋学会2015年度春季大会開催期間中の3月24日に「才野敏郎さんを偲ぶ会」に約80名の方々とともに参加した。才野さんは、衛星データを活用した海洋物質循環研究への貢献により2012年に日本海洋学会宇田賞を受賞。名古屋大学名誉教授、海洋研究開発機構特任上席研究員であったが2014年4月17日に病没。享年65才であった。偲ぶ会からの退出時には、豊富な写真とともに管理人を含む国内外の48名の寄稿をまとめた文集「Toribute to Prof. Toshio Saino」が手渡された。37編の日本語の寄稿は3名の編集者による英訳が付されており、お三方の並々ならぬ熱い想いを感じる冊子であった。寄稿者のお一人である東北大学の花輪公雄さんは、ご自分のウェブサイトの「才野さんの追悼集原稿」と題する記事で追悼集の主旨のご紹介とともにご自分の寄稿原稿を公表されている。管理人も花輪さんに倣って自分の寄稿原稿を以下に再掲する。


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ラベル:日記 研究
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2013年02月16日

それはTom Rossbyさんとの出会いから始まった

相変わらず何かと慌ただしい毎日を過ごし、前回の更新から3ヶ月近くが過ぎてしまった。そうした中、2月9日未明にアメリカ大気海洋庁太平洋海洋環境研究所(National Ocean and Atmophere Administration, Pacific Marine Environmental Laboratory; NOAA/PMEL)のMeghan Croninさんから、管理人も共著者の一人となっている黒潮続流域における海面係留ブイデータを用いた大気海洋相互作用に関する観測研究論文が印刷公刊されたとの連絡を受けた。

この論文は、Meghan Croninさんの指導教員の一人であって、管理人とも浅からぬ縁のあるTom Rossbyさん(アメリカ ロードアイランド大学教授)の2011年6月の引退記念の事業として関係者の間で秘密裏に準備が進められてきた論文集への寄稿として2011年4月に投稿、12月に再投稿、2012年8月にオンライン公開されたものである。早速、ウェブ公開されている特集号(原著論文18編所収,Deep Sea Research Part II, Vol.85, January 2013, p.260)の全体を見てみた。

その冒頭の賛辞(Tribute)では、George VeronisさんがTom Rossbyさんの業績を紹介している。専門用語がいくつかあるものの、大部分は平易な言葉で書かれており、近代の海洋観測研究の発展史に関心のある一般の方々のご一読をお勧めする。

以下に、Tom Rossbyさんとの出会いを契機として始まった管理人とURI/GSOの人々とのお付き合いの歴史を紹介する。

参考
The scientific work and career of Tom Rossby by George Veronis
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0967064512001002
多分、Loginしなくても、View full text -> View Abstractの順でクリックすれば全文閲覧可能。


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2012年05月02日

故川辺正樹さんを偲ぶ

1月29日に、黒潮についての観測研究仲間であり、数多くの観測航海を共にした船友=戦友の一人であった川辺正樹さんが急逝された。2年前の金子郁雄さんに続く、年下の親しい友人の逝去に、やりきれない思いがつのった。3月26日から30日に筑波大学で開催された日本海洋学会2012年度春季大会に参加中も、城山三郎の手記の題名でもある「そうか、もう君はいないのか」というフレーズが頭をよぎった。急逝の報に接してから既に3か月が過ぎてしまったが、以下に、故人との思い出の日々の詳細を記して、故人を偲ぶ。なお、故人の業績、お人柄については、以下のサイトを参照されたい。

<参照>
お通夜での日比谷紀之 東京大学教授の弔辞
http://ocg.aori.u-tokyo.ac.jp/member/kawabe/choji_hibiya.pdf
故人のウェブサイト(研究の紹介)
http://ocg.aori.u-tokyo.ac.jp/member/kawabe/


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2010年07月04日

追悼 故國司秀明先生

学部3回生の4月に初めてお会いしてから約10年間に渡り、管理人に海洋物理学研究の道を導かれるとともに、研究者としてのみならず、人としてのあり方をご指導頂いた國司秀明先生(京都大学名誉教授)が6月28日にお亡くなりになった。85歳であった。29日のお通夜と30日のご葬儀・告別式に参列させていただいた。先生の研究室で課題演習の説明を受けるために同期の仲間たちと初めて先生にお会いした時の温和な笑顔を、その時座った古ぼけたソファーの感触と頂いたブランデー入り紅茶とともに、懐かしく思い出す。以下に、先生を偲んで、先生の想い出を記す。


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2010年03月18日

追悼 金子郁雄さん

古くからの研究仲間の一人であった石垣島気象台長の金子郁雄さんが3月10日午後に急逝された。享年55歳であった。あまりに突然の訃報に接し、強いショックを受けた。年末に横浜の家族の元に帰られて発病した後、わずか2カ月と2週間の入院加療後の突然のご逝去であった。横浜で13日に催されたお通夜と14日の告別式に参列させて頂き、参列者の方々と故人の想い出と我が国における船を用いた海洋観測の発展に果たされた多大な貢献を語りあい、悲しみを新たにした。

管理人が故人に初めてお会いしたのは、彼が東京大学海洋研究所海洋物理部門の大学院学生であった30年以上も前であったと思う。故人は「溶存酸素量を指標とした南西諸島東側の流れの解明」を研究テーマとしており、当時、鹿児島大学で東中国海の黒潮についての観測研究を始めていた管理人と何かと親しく語り合った。故人が気象庁に職を得て、長崎海洋気象台に赴任された1984年以降は急激に交流が深まり、さらに2005年10月から2007年3月までは故人の出向先の同じ部屋で毎日を過ごしていた。以下は、故人との想い出の日々の詳細。

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2010年02月22日

人の世の縁の不思議2010

何かの拍子に感ずるところがあってRSS購読しているブログの記事の中に、予想もしない人の繋がりを知りることが重なり、楽しくなった。

一つは「大栗博司のブログ」の「還暦のお祝い」と題する記事である。もう一つは「西村一朗の地域居住談義」の「金大付属高校・出石 隆先生の思い出」と題する記事である。


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2009年10月21日

京都市上京区の阿弥陀寺

日頃、愛読している「生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ」の10月19日付けの記事で、日本画家上田幸子さんが阿弥陀寺(同市上京区寺町通今出川上ル)で制作を進めてきた天井画が完成し、19、20日に一般公開されたのを知った(10月15日付け京都新聞他で報道されていた。ウェブ魚拓はここ)。寺町通今出川上ルの阿弥陀寺といえば、管理人が大学院学生時代の1978年4月から鹿児島大学へ赴任する1979年7月まで下宿していたお寺である。以下は、阿弥陀寺の名に触発されて思い出した30年以上前の京都での下宿生活など。


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2008年11月30日

追悼 故高橋淳雄先生

私が学位を取得後、1年間の就職浪人を経てようやく助手の職を得て昭和54年8月に赴任した鹿児島大学水産学部海洋環境物理学講座の当時の教授であり、未熟な私に教育者あるいは大学人としての道を導いて頂いた高橋淳雄先生(日本海洋学会名誉会員・鹿児島大学名誉教授)が10月20日に亡くなられていたことを先日知った。

先生は、大正8年3月に京都でお生まれになり、昭和17年9月京都帝国大学理学部地球物理学科をご卒業後、帝国海軍において南方海域で軍務に服し、敗戦後、昭和21年8月に帰国。復員局、気象庁(札幌管区気象台?)を経て、昭和25年3月鹿児島水産専門学校教授、昭和26年2月鹿児島大学講師水産学部となられた後、昭和59年4月のご定年退官まで鹿児島大学水産学部における海洋の教育と研究を推進された。なお、気象庁に勤務されていたときに「寒冷地手当」の算出根拠を求めたとのことである。ご退官後、鹿児島大学教育学部の非常勤講師などをお勤めであったが、平成15年に居を鹿児島から大阪へ移され、最近は「NPO法人 葬送の自由をすすめる会」の関西支部世話人をされていた。以下に、先生を偲んで、先生の想い出を記す。


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2008年09月24日

追悼 故杉森康宏さん

一部修正 2008年10月1日1時

K-TRITONブイの緊急回収後の対応で慌ただしい1日を終えた9月6日夜に日本海洋学会MLを経て、5日夜に元東海大学教授、元千葉大学教授で我が国とアジアにおける衛星海洋学(人工衛星リモートセンシング技術を使った海洋学)の分野で大きな貢献をされた杉森康宏さん(先生と呼ぶべきかもしれないが、私は故人に「先生」と呼びかけた事はないので、ここでも「さん」とさせて頂きます)がご逝去されたとの知らせが入った。

私が杉森さんと親しくお会いしたのは、私が大学院学生(多分D2)の頃だった。それ以来、30年以上の間、以下に述べるような縁で結ばれて来た。


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2008年06月23日

白浜海象観測所

2008年6月25日01時55分 加筆・訂正

6月15日に京都に行ってきた。2年ごとに開かれる出身研究室の同窓会(洛洋会)に出席するためである。そこで、学生時代にお世話になった京都大学防災研究所白浜海象観測所のSSさんが来年で定年退職されることを知った。また、20日から今日まで出席した大気海洋相互作用研究会でHTさんによって白浜高潮観測塔における観測結果について紹介された。大学院学生時代に隣の気象学講座に所属していたHTさんとは、およそ30年振りの再会で、昔話に花を咲かせた。  

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私が海洋物理学を選んだ理由
科学技術


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2008年04月30日

心茶会と久松先生のこと

一部修正・追記しました 2008年5月2日02時20分、10月6日02時

前のエントリーで、管理人が学生時代に所属していた京都大学心茶会の説明として、その創立時の指導者が久松真一先生であることを述べ、先生の紹介として、先生の主要著書を論じている松岡正剛の千夜千冊:久松真一「東洋的無」にリンクを張った。このリンク先の本文および附記について、以下のタイポエラーに気付いたので指摘しておく。
FASは次の頭文字からとっている。
 To awake to Fomress self
   -> 正しくはTo awake to Formless self
 To stand on the sandpoint of All mankind
   -> 正しくはTo stand on the standpoint of All mankind
 To create Superhistoribal history
   -> 正しくはTo create Superhistorical history

附記¶岩波に『久松真一著作集』全8巻がある。
  ->正しくは岩波ではなくて理想社。
上の附記に示された『久松真一著作集』全8巻は今でも私の本棚の一角を占めている。

このリンク先で、松岡正剛は『久松真一著作集』第1巻「東洋的無」を通して、久松先生の人と成りを論じている。しかし、私にはその記述に違和感がある。

それは、松岡正剛の論調が、論じている各著述を自分の血肉としようとしないで客観的に接している彼のスタンスのためではないかと思う。「東洋的無」に関する論調でも、松岡正剛は著書の中の久松先生に客観的に接している。このため、久松先生の人と成りについても、以下に述べるように、直に久松先生にお会いした経験を有し、久松先生が指導されていた心茶会で活動していた私とは異なった受け取り方をしているのだろう。


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2007年12月04日

桃太郎の母

昨日の毎日新聞の「本と出合う-批評と紹介」面の「この人・この3冊」欄で文化人類学者である石田英一郎が取り挙げられ、3冊の中に懐かしい「桃太郎の母」が紹介されており、思わず、その解説に読み入ってしまった。

1968年4月に大学に入った時に、第2外国語の履修科目(ロシア語)別に2年間の教養部のクラスが編成された。このクラスの親交を深めるために文集を出すことになった。指定された内容は自己紹介と本の紹介だったらしく、私が紹介したのが、大学受験が終わった後で読んだ「桃太郎の母」であった。他の級友たちの中には、「無門関」や「堕落論」を紹介した者もいた。今思えば、大学紛争が勃発する直前の古き良き時代であった。


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2007年04月28日

進路の選択

「博士の生き方」HP主催者から,私が3月に回答した博士課程修了時の進路選択に関わるウェブアンケート調査の結果についての報告が23日にメールで送られてきた.学位を取得して研究者の道へ踏み出そうとしている人たちをサポートしているこのHPのアンケートに私が回答したのは,このHP活動に敬意を抱いていて,微力ながらお手伝いをしたいと思ったからである.このアンケートについては,「5号館のつぶやき」でも言及されている.

このHPの掲示板に4月から大学院に進学する学部生の相談が3月13日に投稿されているのに気付いた.その相談の要点は,
私は以前から博士号をとって研究者になりたいと思っていましたが、一年間研究をして、「自分は何のために研究をしているのだろう?誰の為に頑張っているのだろう?学会で発表すること、論文を出すことがscienceなのか?もしそうならscienceって何のためにあるの?」と思うようになり、研究への興味が薄れ、大学院に進学することも私にとって意味があるのだろうかと思うようになりました。
ということである.

この疑問を読み,アンケートの回答を作成する中で,学部・大学院の学生時代の将来に不安を抱えていた自分の姿を思い出した.


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2007年02月24日

私が海洋物理学を選んだ理由

昨日の午後は品川で開催された,黒潮続流域および日本周辺海域を含む北太平洋中高緯度域における大気海洋相互作用に関わる今後の研究計画立案についての打合せ会に参加した.参加者の専門分野は,強いて分ければ,海洋物理学,水産海洋学,海上気象学,気候変動学である.また,その主な研究手法は,船またはブイを用いた現場観測,人工衛星リモートセンシング,データ解析,数値モデルである.皆が各々の興味の対象と,その解明へのアプローチの夢を語り合う,楽しい会であった.

会を終えてから,有志で酒食を共にした.種々の専門分野の方々との話しの中で,私が海洋物理学を自分の専攻分野に選んだ経緯に触れる機会があった.以下は,その再掲と補足.


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2007年02月04日

訃報 杉ノ原伸夫センター長

杉ノ原センター長が29日深夜に亡くなられた.1日の葬儀には先約があり,参列できなかったが,31日のお通夜では,在りし日のお姿を偲びながら,お手伝いをさせて頂いた.

故人との本格的なお付き合いは,1985年4月に日本海洋学会誌編集委員長と編集委員という関係になって以来,20年以上に及ぶ.

私が1991年から1994年まで世界海洋大循環実験計画(WOCE)の海洋観測計画委員会委員であったときには種々のご配慮を戴いた.また,1993年から1995年に実施した足摺岬沖黒潮横断協同観測計画および今月末に黒潮続流域で始める海面フラックス係留ブイ観測計画の実現に多大なご助力を戴いた.

学会誌投稿論文原稿の査読者候補について取り交わした電話での会話,1998年5月にカナダのハリファックスで開催されたWOCE会合に参加した際に共にした食事,東大退官後に居を定めたフロリダから届いたメール,私たちのグループの観測成果や黒潮大蛇行の発生機構についての議論,を懐かしく思い出す.

合掌
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2007年01月15日

初めての観測航海

13日午後に千島沖で地震が発生した.この件についてのNHKのTVニュースで東大地震研のTYさんが解説しているのを見て,35年前の春に,彼とともに参加した東京大学海洋研究所研究船白鳳丸のKH73-3次研究航海を懐かしく想い出した.

この航海は,私が初めて体験した大型船による外洋の調査航海であった.当時,風波の発達機構に関する風洞水槽実験を修士論文のテーマとして日々苦悩していたが,その一方で,海洋物理を研究する者として,陸上での実験ばかりではなくて,海洋での現場観測を一度は経験したいと思い,指導教官であったKH教授に強くお願いして,乗船の機会を設けていただいた.

この航海は,東シナ海黒潮流域の洋上における気団変質過程(台湾坊主の発達機構)の把握・解明を目指す気団変質実験観測の予備観測(Pre-AMTEX)のための航海であった.主席研究員は海洋研気象部門のTAさんであり,気象関係の参加者が多い中で.当時M1であったOM君とM2であった私は,東大理学部海洋物理額のNY先生を班長とする海洋物理観測班に属し,海洋表層の水温変動(東大のNY先生とTYさんが担当),海上における白波の出現率(東北大学のTMさんとSMさん担当)の観測を行った.我々は,船が航走中に海洋表層の水温・塩分を連続的に観測するためにKH教授とNK助手が試作した装置の試験観測を行った.航海の途中には,本土復帰直後の那覇港に寄港し,白鳳丸の機関長のお世話で「波之上」で沖縄料理を堪能したり,海洋研のMAさんやNTさんと名護城址まで足を延ばした.航海終了時には50巻近くの膨大な量の紙テープに打ち出したSTD観測データ(注1)を持ち帰った(今では,1枚のCDに収まるが).

注1)STD:塩分(Salinity)・水温(Temperature)・深度(Depth)計の略.海中の表層から深層までの水温と塩分の鉛直分布を測定する装置.現在は,塩分に代えて,電気伝導度(Conductibity)を計るCTDが一般に普及している.

この航海で多くの「船友」を得ることができた.この航海の6年後の1979年8月に鹿児島大学に職を得た際には,この航海でご一緒したMAさんが既に赴任していることが,心の大きな支えとなった.その後26年間にわたって,主に東シナ海の黒潮の観測研究を続けることになったこと,さらに,現在は黒潮続流域における海面熱フラックスの長期連続海面係留ブイ観測に取り組んでいることを思うと,この航海に参加したことがその後の私の海洋研究への道を開いたとさえを感じる.
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