6年ぶりに8日から13日までボストンを訪れていた。アメリカ気象学会第18回大気海洋相互作用研究会の各セッションの研究発表を聴くとともに、10日にポスター発表を行った。また、同時に同じ場所で開催された第20回境界層と乱流シンポジウムとの合同セッションにも参加した。アメリカ気象学会の集会に参加したのは今回が初めてであり、新鮮な経験であった。以下は、この会合の参加報告と感想など。
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2012年07月18日
2012年04月18日
労働契約法改正と学術研究
昨年11月27日以降、TwitterとFacebookでの情報発信のみで、ブログを更新できない状況が続いた。12月上旬には、「日本の海洋科学コミュニケーション」について口頭発表するために、サンフランシスコで開催されたアメリカ地球物理学連合(AGU)の秋季大会に参加した。それから1月末までは、サイエンスアゴラ2011参加シンポジウム「東日本大震災後の海洋汚染の広がりとその影響」開催報告(日本海洋学会東日本大震災特設サイト、サイエンスアゴラ2011開催報告書、日本海洋学会ニュースレター)、日本海洋学会70周年記念誌原稿(教育問題研究会の節)、「第8回海のサイエンスカフェ」の開催報告、の原案作成、改訂(公開)作業に追われた。この間、1月早々にPCが動作不良となり、その対策にも時間を要した。1月29日には、多くのプロジェクトで観測航海を共に過ごした東京大学大気海洋研究所の川辺正樹教授が急逝され、2月5日には、お通夜に参列した。2月以降は、遅れていた原著論文の作成に集中的に取り組む傍ら、「第9回海のサイエンスカフェ」の準備、「日本の科学者」2012年7月号の特集「海洋教育」のための共著原稿を作成した。3月26日から30日に筑波大学で開催された日本海洋学会2012年度春季大会では、26日にシンポジウム「東日本大震災と海洋研究ならびに学会活動」で「研究者・学会からの情報発信およびアウトリーチ活動」について講演した他,27日に教育問題研究会会合と評議員会、28日に総会(28日)で教育問題研究会の活動を報告した。また、大会直後の31日には品川で「第9回海のサイエンスカフェ」を開催した。4月11日には平成21年度から行なってきた「黒潮変動予測のためのリアルタイム中深層流速観測システムの基盤技術開発」の成果報告をおこなった。これらの作業を終え、先週末から、ようやくブログ記事を書くためにPCに向かう余裕ができたところである。
こうした中、13日に「研究者ネットワーク(仮)」MLを通して、労働契約法改正が研究業界に与える影響についての情報提供・意見募集の呼び掛けがあった。昨年11月以降の出来事について、ブログで論じたいことは多々あるが、以下に、取り急ぎ、労働契約法改正に関連した資料、Togetter、ブログ記事を読んで、考えたことなどを述べる。
参考ウェブサイト:科学政策ニュースクリップ
2012年3月25日 労働契約法の改正は日本の研究に何をもたらすか
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こうした中、13日に「研究者ネットワーク(仮)」MLを通して、労働契約法改正が研究業界に与える影響についての情報提供・意見募集の呼び掛けがあった。昨年11月以降の出来事について、ブログで論じたいことは多々あるが、以下に、取り急ぎ、労働契約法改正に関連した資料、Togetter、ブログ記事を読んで、考えたことなどを述べる。
参考ウェブサイト:科学政策ニュースクリップ
2012年3月25日 労働契約法の改正は日本の研究に何をもたらすか
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2010年11月20日
シンポジウム「 ニッポンの科学技術が目指すもの」
2010年11月20日12時50分 追記、訂正
サイエンスアゴラ2010の一環として19日午後に開催されたシンポジウム「 ニッポンの科学技術が目指すもの」に参加した。本番の明日・明後日には、興味深い催し、これまでに縁のあった方々が関与する催し、管理人も参加している横串会の会合などが予定されているが、所用のため参加できないので、今年は、このシンポジウムのみの参加となってしまった。昨日、18日午後に思い立ってウェブで参加申込をしたが、定員450名に対し、受付番号102番であった。参加者が少ないことを予想した。しかし、明日からの展示に向けての準備作業を横目に、会場に10分遅れで入室してみると、ガラガラと言うほどではなく、6割程度の入りであった。以下は、その感想。
拙ブログ関連記事:
2007年11月26日 サイエンスアゴラ2007
2008年11月23日 サイエンスアゴラ2008
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サイエンスアゴラ2010の一環として19日午後に開催されたシンポジウム「 ニッポンの科学技術が目指すもの」に参加した。本番の明日・明後日には、興味深い催し、これまでに縁のあった方々が関与する催し、管理人も参加している横串会の会合などが予定されているが、所用のため参加できないので、今年は、このシンポジウムのみの参加となってしまった。昨日、18日午後に思い立ってウェブで参加申込をしたが、定員450名に対し、受付番号102番であった。参加者が少ないことを予想した。しかし、明日からの展示に向けての準備作業を横目に、会場に10分遅れで入室してみると、ガラガラと言うほどではなく、6割程度の入りであった。以下は、その感想。
拙ブログ関連記事:
2007年11月26日 サイエンスアゴラ2007
2008年11月23日 サイエンスアゴラ2008
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2009年09月09日
腎臓結石、台風11号、台風12号
8月24日から9月11日までの19日間の予定だった「かいよう」観測航海を、台風12号接近のため、予定を4日繰り上げて7日に終了した。この航海中の8月27日には病人下船のために仙台塩竃港に緊急入港した。また、台風11号が接近したため、8月31日朝から9月2日朝まで青森港外に避難していた。この間の船の航跡を図に示す。

図中の○印は各日の正午の位置である。以下にこの航海の概要を述べる。
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図中の○印は各日の正午の位置である。以下にこの航海の概要を述べる。
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2009年08月23日
9月11日まで乗船中のため更新停止
2009年05月24日
剽窃論文の検索システム
5月22日付SCIENCEのNEWSFOCUSでPlagiarism Sleuthsというかなり長文(刷り上がり4ページ)の記事が掲載されている。「Déjà vu」という剽窃論文オンラインデータベースが開発され、これまでに少なくとも48編の疑わしい論文が撤回されたとのことである。いくつかの雑誌では、受理された論文が剽窃されたものなのか否かをeTBLASTという「Déjà vu」を構築するために開発されたフリーソフトを使って調べたり、いくつかの大学では採用人事の参考にしようとしているが、「Déjà vu」の信頼性、問題点などについて議論が起きていることを報じている。
ブログ「hypoxia research::blog」さんによると、この議論はNatureで既にかなり議論されていたようですが、気付きませんでした。以下はScienceの記事の抜粋。意訳しており、誤りがあるかもしれないことを予めご了承ください。
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ブログ「hypoxia research::blog」さんによると、この議論はNatureで既にかなり議論されていたようですが、気付きませんでした。以下はScienceの記事の抜粋。意訳しており、誤りがあるかもしれないことを予めご了承ください。
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2008年09月21日
「かいよう」2008年9月航海終了
9月2日から19日までの18日間の予定だった観測航海を、台風13号接近のため、1日繰り上げて18日に終了した。房総半島南端の館山湾に戻った16日までの船の航跡を図に示す。

図中の○印は各日の正午の位置である。図に示されているように、仙台沖、その東方約400kmのK-TRITONブイ、沖房総半島南東約500kmのKEOブイ、房総半島南端を結ぶ線上での観測を、日々大きく変わる海況への対応に苦しながら行った。以下にこの航海の概要を述べる。
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図中の○印は各日の正午の位置である。図に示されているように、仙台沖、その東方約400kmのK-TRITONブイ、沖房総半島南東約500kmのKEOブイ、房総半島南端を結ぶ線上での観測を、日々大きく変わる海況への対応に苦しながら行った。以下にこの航海の概要を述べる。
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2008年09月02日
2007年11月22日
異論・反論
実施中の黒潮続流域における海面係留ブイ観測の今後の進め方についての検討を行う会合に出席のため、15日から19日までホノルルに行っていた。
日本からはブイ観測を行っている私のグループから3名と数値モデル研究を行っている地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)から1名、米国からはブイ観測を行っている米国大気海洋庁(NOAA)太平洋海洋研究所(PMEL)のグループから3名、主として数値モデル研究を行っているハワイ大学国際太平洋研究センター(IPRC)他から10名程度が参加した。参観者のほとんどが研究意欲溢れる旧知の30から40代の人たちで、非常に気持ち良く、黒潮続流域における大気海洋相互作用についての研究の現状と将来計画について活発に意見交換することができた。さらに、今回の会合参加者を主な構成員とする組織を立ち上げて、国際的活動を推進することとなった。
この会合初日の夕食会場へ移動する車中で、米国における科学報道が話題になった。
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日本からはブイ観測を行っている私のグループから3名と数値モデル研究を行っている地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)から1名、米国からはブイ観測を行っている米国大気海洋庁(NOAA)太平洋海洋研究所(PMEL)のグループから3名、主として数値モデル研究を行っているハワイ大学国際太平洋研究センター(IPRC)他から10名程度が参加した。参観者のほとんどが研究意欲溢れる旧知の30から40代の人たちで、非常に気持ち良く、黒潮続流域における大気海洋相互作用についての研究の現状と将来計画について活発に意見交換することができた。さらに、今回の会合参加者を主な構成員とする組織を立ち上げて、国際的活動を推進することとなった。
この会合初日の夕食会場へ移動する車中で、米国における科学報道が話題になった。
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2007年01月06日
共著論文原稿の校閲,海洋観測
ブログを開始して,あっという間に5日が過ぎてしまった.この間の3日間は休暇であったが,元旦に初詣に行った以外は,自宅で懸案事項の処理に追われていた.結局,29日からの正月休みで共著者となっている論文原稿3件の校閲と何とか終えた.
1件は米国ロードアイランド大学(URI)のM教授他と共同で2002年12月にJAMSTEC所属船「よこすか」で東シナ海中央部に設置し,2004年11月に鹿児島大学練習船「かごしま丸」で回収したCPIES(注1)他の観測資料を解析したURI博士課程のAさんが責任著者の論文原稿である.従来は,東シナ海中央部での黒潮の流速断面分布は,長崎海洋気象台「長風丸」他による年4回程度しか得られていなかった.今回の観測でそれらの日変化を,初めて得ることに成功しており,画期的な内容と思うが,原稿は十分に練れたものにはなっておらず,多くのコメントを付した.ちなみに,Aさんは地質関連の学科を卒業,民間企業に数年勤務後,大学院に入学した女性で,2004年の「かごしま丸」航海での回収航海では,彼女のポジティブな考え方・行動に軽い驚きを感じた記憶がある.
(注1)CPIESの説明は「かごしま丸」航海報告を参照(その内,解説記事をアップします)
他の2件は長崎海洋気象台との共同研究で行った黒潮と琉球海流系の合流域である九州南東海域での観測結果,あるいは九州南方海域での海底までのCTD,LADCP観測結果をポスドク研究員のNさんが責任著者として解析した結果である.前者はトカラ海峡を通過して東シナ海から流出してきた黒潮と奄美大島南東を北上してきた琉球海流系の各々の都井岬沖断面での合流を議論しているが,主として,論理展開の欠落箇所についてコメントした.後者は貴重な観測結果の紹介であるが,構成を含め更なる推敲が必要である旨をコメントした.
AさんとNさんの論文原稿は,私およびその他の共著者のコメントを参考にした改訂作業を経て,共著者全員の合意を得た後,学術雑誌に投稿され,更に査読者の厳しいコメントの壁を越えて,やっと受理・公刊される.この過程には,おおよそ半年から1年はかかると予想される.これからのシェイプアップが楽しみである.
海洋観測資料の解析は,種々の不必要な情報を含む資料から新たな現象を抽出という点で,原石を磨き上げて美しい宝石に仕立て上げる作業に似ている.原石に隠された価値を見出すのには,宝石デザイナーと同じく多くの知識に裏付けられた独創性と資料解析技術が必要である.また,その価値を人に伝えるのには,誰もが納得するような論理展開とその証拠の提示が必要である.まだだれもしたことの無い観測法あるいは観測海域での観測を立案・実施し,得られた資料を解析して,新たな海洋像を提案するというのが,海洋の観測研究の醍醐味の最たるものである.また,だれもが入手可能な資料の中に隠されている重要な事柄を抽出し,今までの解釈・理解を深化させることもは資料解析の楽しいことみの一つである.私は,鹿児島という近くを黒潮が流れる東シナ海を控えた地で,練習船を活用して,このような観測研究を26年間続けることができた幸運に感謝している.
<修正記録>
1件は米国ロードアイランド大学(URI)のM教授他と共同で2002年12月にJAMSTEC所属船「よこすか」で東シナ海中央部に設置し,2004年11月に鹿児島大学練習船「かごしま丸」で回収したCPIES(注1)他の観測資料を解析したURI博士課程のAさんが責任著者の論文原稿である.従来は,東シナ海中央部での黒潮の流速断面分布は,長崎海洋気象台「長風丸」他による年4回程度しか得られていなかった.今回の観測でそれらの日変化を,初めて得ることに成功しており,画期的な内容と思うが,原稿は十分に練れたものにはなっておらず,多くのコメントを付した.ちなみに,Aさんは地質関連の学科を卒業,民間企業に数年勤務後,大学院に入学した女性で,2004年の「かごしま丸」航海での回収航海では,彼女のポジティブな考え方・行動に軽い驚きを感じた記憶がある.
(注1)CPIESの説明は「かごしま丸」航海報告を参照(その内,解説記事をアップします)
他の2件は長崎海洋気象台との共同研究で行った黒潮と琉球海流系の合流域である九州南東海域での観測結果,あるいは九州南方海域での海底までのCTD,LADCP観測結果をポスドク研究員のNさんが責任著者として解析した結果である.前者はトカラ海峡を通過して東シナ海から流出してきた黒潮と奄美大島南東を北上してきた琉球海流系の各々の都井岬沖断面での合流を議論しているが,主として,論理展開の欠落箇所についてコメントした.後者は貴重な観測結果の紹介であるが,構成を含め更なる推敲が必要である旨をコメントした.
AさんとNさんの論文原稿は,私およびその他の共著者のコメントを参考にした改訂作業を経て,共著者全員の合意を得た後,学術雑誌に投稿され,更に査読者の厳しいコメントの壁を越えて,やっと受理・公刊される.この過程には,おおよそ半年から1年はかかると予想される.これからのシェイプアップが楽しみである.
海洋観測資料の解析は,種々の不必要な情報を含む資料から新たな現象を抽出という点で,原石を磨き上げて美しい宝石に仕立て上げる作業に似ている.原石に隠された価値を見出すのには,宝石デザイナーと同じく多くの知識に裏付けられた独創性と資料解析技術が必要である.また,その価値を人に伝えるのには,誰もが納得するような論理展開とその証拠の提示が必要である.まだだれもしたことの無い観測法あるいは観測海域での観測を立案・実施し,得られた資料を解析して,新たな海洋像を提案するというのが,海洋の観測研究の醍醐味の最たるものである.また,だれもが入手可能な資料の中に隠されている重要な事柄を抽出し,今までの解釈・理解を深化させること
<修正記録>