2023年04月16日

地衡流平衡と地殻平衡(アイソスタシー)

1月21日の前回のブログ更新以降、国際学術雑誌投稿論文の査読、矢倉英隆さんが主宰するサイファイフォーラム(科学者のための科学の哲学フォーラム)での講演、JAAS日本科学振興協会のWG会合・会員交流会や幹事を務める国際津波防災学会津波防災対策検討分科会で内容を検討中の「地区住民による津波防災対策計画立案のための手引き」に関連する各種イベントへの参加などのため、ブログを更新する時間がないまま、ほぼ3か月が過ぎようとしている。

この間、2月25日に全国地学教育関係者Zoom交流会で令和5年度大学入試共通テストでの地学基礎および地学の問題についての意見交換に参加した。この交流会に参加した理由は、共通テスト②理科地学の海洋表層の大規模な循環に関する問題文中に、管理人の認識と大きく異なる「海洋全体ではアイソスタシーが成立しており,最下層の水平面に加わる圧力が一様になっている」という記述があるのに気付き、最近の高校地学の授業では海洋中の密度鉛直断面分布の説明で「アイソスタシー」という言葉を使っているのか否かを現場教員の方々に直接、確かめたいと思ったためであった。

管理人は、「アイソスタシー」は、地殻が上部マントルに浮かんでいる状態を説明する固体地球科学分野の概念であって、確かに上部マントルの十分に深いところ圧力は水平的に一様であるが、海洋底層水平面での圧力が一様であること(圧力の水平勾配がゼロであること)は「水平圧力勾配とコリオリ力が釣り合う地衡流がない」ことに対応しており、地殻の厚さ分布を説明する「アイソスタシー」と結びつけて理解することは大きな誤りであると考えていた。実際、Zoom交流会に参加していた現場教員からも、海洋分野で「アイソスタシー」を聞いたことがないとのことだった。

大学入試共通テストの問題は過去問として、受験生の目に留まる機会多い。このため、その記述に誤解を招く表現があれば、その影響は極めて大きいと考える。宿題が山積して、何かと気ぜわしい中、共通テストの設問内容に含まれる懸念の指摘を先延ばしにできないと考え、以下に詳細を述べることにした。
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2021年05月01日

原発汚染処理水の海洋放出について考えた

2021年5月1日17時48分 一部修正

政府は、東京電力福島第一原発で発生し続けている汚染水を多核種除去設備(ALPS等)で処理したALPS処理水を海に放出する方針を4月13日に正式に決めた。管理人は、人為的放射性物質を海洋に放出することは、その濃度が十分に低くても望ましいことではないと考えている。それは、海中の生物物理化学過程には十分に解明されていないことが数多くあって、生物濃縮、再懸濁(海底に堆積した後に再び海中に巻き上がる現象)などによって魚介類が汚染される懸念を完全に払しょくすることができないからである。また、一旦、海中に広がった物質を回収することは不可能だからである。さらに、海洋は有限であって、有害物質の海洋放出による被害を防ぐためには、濃度規制ではなくて、総量規制をおこなう必要があると考えているためである。

海洋への放出に断固反対し、陸上で保管・処分することを強く主張することも一つの選択肢ではあるが、福島の復興を進めるためには、東京電力福島第一原発敷地内に大量に蓄積された原発汚染処理水を何らかの形で、廃炉と合わせて処分する必要があることには同意する。そこで、自分が、ALPS処理水の海洋放出止むを得ない処分方法であるとして同意するためには、どのように処分するのが良いのかを考えてみた。以下にその詳細を述べる。

なお、東京大学大気海洋研究所と米国のウッズホール海洋研究所がオンラインで3月4日に開催した、東京電力福島第一原発事故で何が起き、海洋と社会にどのような影響を与えたのか、そしてそこから学ぶべきことに関する国際シンポジウム「福島と海:海洋研究10年の軌跡」の内容が以下の寄稿でまとめられている。海洋に放出される放射性物質についての最新の研究の概要を伝える資料として、参照されたい。

米国ウッズホール海洋研究所広報誌「Oceanus」記事(2021年4月1日オンライン発表)
Fukushima Dai-ichi and the Ocean:A decade of disaster response
By Laura Castañon
日本語訳:福島第一と海:災害対応の10年間を語る

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2019年10月15日

「プリンシピア」を翻訳した海洋学者

2019年10月18日 一部修正

毎日新聞2019年10月6日付け東京朝刊の今週の本棚で、「村上陽一郎・評 『プリンシピア 自然哲学の数学的原理 全3編』=アイザック・ニュートン著、中野猿人・訳」が掲載されているのに気付いた。管理人が注目したのは、その訳者の中野猿人というお名前であった。中野猿人と言えば、管理人が大学院学生であった1970年代に海洋学会でそのお姿を拝見していた潮汐学の権威である中野先生(当時、東海大学教授。2005年逝去。管理人の師ではないが、以下では先生と呼ばせて頂く)である。書評では1977年刊行の復刻版であることが明記されておらず、訳者の経歴などに言及されていないこともあって、中野先生ご本人が「プリンシピア」を訳されていたということに思いが至らず、同姓同名の人かと思ってと確認のためネットで調べた。

その結果、講談社の関連サイトの6月21日付け記事「この夏、『プリンシピア』が大復刻。近代科学の始まりをとくと見よ」と題する記事で、42年ぶりにブルーバックスから3ヵ月連続刊行にて復刊されることとなった「プリンシピア」の訳者がまぎれもなく管理人が記憶していた中野先生であったことを確認した。
しかし、その訳者紹介では、
1908年、佐賀県生まれ。1930年、東京帝国大学理学部天文学科卒業。1938年、東京帝国大学より博士号(理学博士)を授与される。中央気象台に奉職、気象大学校長などを歴任し、1968年、気象庁退官。東海大学海洋学部教授を務める。著書『潮汐学』『球面天文学』(古今書院)、『海の談話室』(講談社)ほか。2005年、97歳で逝去。(写真は『プリンシピア』翻訳中、1970年5月撮影。『海の談話室』より)
と記載されているだけであった。このため、以下で、先生の海洋学研究、日本海洋学会へのご貢献などについて紹介することにした。

参考
中野猿人 (1970): 海の談話室.講談社、pp.343.
宇田道隆 (1954): 日本海洋学の進歩の足あと.地学雑誌、63巻3号、p.139-144.
宇野木早苗 (2005): 名誉会員中野猿人先生のご逝去を悼む.海の研究、第14巻第4号、p.549.
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』:中野猿人

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2019年02月20日

ウォーレス・ブロッカーさん死去の報道について

2月19日午後に共同通信から以下の「米科学者のW・ブロッカー氏死去 「地球温暖化」広める」と題する短い記事が配信された。
ウォーレス・ブロッカー氏(米科学者)AP通信によると18日、ニューヨークの病院で死去、87歳。数カ月前から体調を崩していた。
 中西部シカゴ生まれ。長年、教授を務めるなどコロンビア大を拠点に気候変動を研究した。大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が上昇すれば気候が温暖になることを75年に指摘し「地球温暖化」という言葉が広く使われるきっかけとなった。(ニューヨーク共同)
「地球温暖化」という言葉を広めたという文言が注目されたせいか、日本経済新聞、毎日新聞、いくつかの地方紙とニュースウェブサイトに、同じ文面、写真で掲載された。しかしながら、上の記事では、ブロッカーさんが、2004年に製作されたアメリカ映画「デイ・アフター・トゥモロー」の基となった「海のコンベアーベルト」の模式図を初めて提示したことに言及されていない。以下、その補足など。

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ラベル:報道
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2019年02月13日

故Walter Munkさんのこと

世界的に著名な海洋学者であり、1999年に京都賞を受賞されたWalter Munk(ウォルター ムンク)さんが2月8日に亡くなられたことが、10日夜に海洋学会MLで伝えられた。その通知で紹介されている米国スクリプス海洋研究所(SIO)ウェブサイトの記事
ニューヨークタイムズ(NYT)の記事を読んだ。以下は、それらの記事に記載されているMunkさんの足跡の一部の紹介・補足と個人的な思い出など。

拙ブログ関連記事:
2009年10月04日 ベニス2009年9月
2013年02月16日それはTom Rossbyさんとの出会いから始まった
2014年08月19日科学に関する7月15日-8月16日のツイート
2016年10月13日北極海の氷が融けると海面は上昇するのか?

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2018年03月31日

魚の耳石を用いた研究

魚の耳石(じせき)とは、マサバ、イワシ、サンマなどの硬骨魚類の内耳にある炭酸カルシウムの結晶からなる組織です(伊藤ほか、2018)。耳石の大きさや形は、魚の種類によって、大きく異ります。普通に食卓を飾る焼き魚や煮魚からも取り出すことができます。このため、収集したり、夏休みの自由研究の対象になっています。福井水産試験場ホームページの「いろいろな魚の耳石」のページでは、見るだけでも楽しい、福井県の海でとれた201種類の魚の耳石の写真が公開されています。耳石の取り出し方は、福井水産試験場ホームページの「耳石を取り出してみよう」のページの他にも、「WILD MIND Go!Go!」サイトの「魚の耳石を見つけよう!」で紹介されています。

この魚の耳石は、結晶化した後は代謝されないため、個体が経験した環境履歴が経時的に保存されているという特徴を持っています。多くの魚類では、耳石に日周輪を形成することが飼育実験によって確かめられています。したがって、耳石日周輪をすべて読むことができれば、採取日から逆算することで、孵化日を推定することができます(伊藤ほか、2018)。なお、日周輪は、日輪とも呼ばれています。また、飼育実験から、多くの魚類で、日周輪の数+2が孵化後の日数であることが知られています。

管理人は、約20年前に、農林水産技術会議プロジェクト研究成果報告会で耳石の日周輪を利用したアジ仔稚魚の産卵場推定の話を始めて聞いて以来、魚の耳石を用いた研究の成果に強い期待を抱いてきました。遊泳能力の乏しい仔稚魚は水の動きによって移動するので、耳石の日輪数の空間分布の変化から仔稚魚の日々の移動を捉えることが可能になれば、数日の時間間隔で海水の移動を知ることができるのではないかと、考えたからです。

海水の動きを追跡することは、前エントリーで述べたタンカー沈没事故の影響の推定などで重要な課題です。漂流ブイは海水移動を追跡する有力な方法ですが、漂流ブイを大量に放流するのは、多大な経費を要し、困難です。海水の成分(塩分、栄養塩濃度組成、溶存酸素量、同位体元素比など)を分析し、その違いから海水を区別し、海水の移動を推察する方法が考案され、多くの成果が得られています。しかし、この方法によって海水の移動を短い時間間隔で捉えるのは、容易ではありません。仔稚魚の耳石分析は、生物情報を使って物理情報を得るという面白い課題になると思っていました。

このこともあって、3月25日午前に品川で開催された第21回海のサイエンスカフェ「耳石でわかる!魚の暮らした環境」に参加しました。マサバの耳石の酸素同位体分析で得られた最新の研究成果の紹介を話題提供者の樋口富彦さんからお聞きし、この約20年間で耳石の分析方法に格段の進展があったことを知りました。その後、3月29日にネットをチェックしていて、平成20年3月25日付けで独立行政法人水産総合研究センターから「耳石を用いた太平洋産のクロマグロの年齢査定と成長解析の成果」がプレスリリースされていたのに遭遇しました。耳石の年輪の分析から、クロマグロの成長は10歳程度までが速く、それ以降では遅くなること、クロマグロの寿命が20年近いことが示唆されたという、大変、興味深い内容でした。

耳石の話題が重なったのを機に、専門外ですが、以下に、魚の耳石の解説を試みます。

<参考>
新井崇臣 (2007): 耳石が解き明かす魚類の生活史と回遊.
  日本水産学会誌、第73巻第4号、652-655.
  https://doi.org/10.2331/suisan.73.652
塚本勝巳 (2006): ウナギ回遊生態の解明
  日本水産学会誌、第72巻第3号、350-356.
  https://doi.org/10.2331/suisan.72.350
伊藤進一ほか (2018): 気候変動が水産資源の変動に与える影響を理解する上での問題点と今後の展望.
  海の研究、第27巻第1号、59-73.
  https://doi.org/10.5928/kaiyou.27.1_59

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2018年02月08日

東シナ海で流出した油の日本への影響

2018年2月12日01時41分 一部修正

某MLで、表題の件について、
1)こういう影響は3ヶ月位の単位で近海に広がるそうです。
2)4月に日本にとって深刻な事態が起こるのでしょうか?あるいは、影響は少ないのでしょうか?
という質問を1月31日に受けた。これに対し、管理人は、次のような回答をした(一部追記、改変)。

1)について
3か月という数字は、英国海洋センター(NOC)のモデル結果から広まっていることだと思います。NOCの結果は、タンカーが沈没した点から放出した6000個の粒子の移動を追跡したものです。流出した油の拡がりの目安の一つではありますが、現実は、この結果とは大きく異なっていることは容易に察せられます。それは、実際には、流出した油は液体であり、移動しながら、変質しますが、このことが、モデルでは、一切、考慮されていないことです。また、放流モデルの流れは、2006年から2015年の各年の1月の流れであり、現在の黒は大蛇行中ですが、そのことは配慮されていません。また、風の影響も含まれていません。

2)について
おそらく、多数の魚の死骸が海岸に打ち寄せるなどの目に見える形での、深刻な事態は起きないと思います。しかし、大量の有害物質が海に漏れたのですから、海の一部に何らかの影響が生じているのは確かです。

以下は、この回答の補足と関連事項の詳細。

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2017年02月05日

2017年1月のトップ3ツイート(海洋酸性化、他)

1月は、年明け早々の4日に海洋学会幹事会があった後、7日には小出遥子著『教えて、お坊さん!「さとり」ってなんですか』刊行記念トークショーと某同窓会関東支部幹事会、8・9日には「理科カリキュラムを考える会」シンポジウム、とイベントが続いた。その後、11日には、週一の大学での講義とその準備を再開するなど、1月は慌ただしい日々であった。28日は亡父の27回忌法要のため札幌滞在中であったため、同日に東京大学大気海洋研究所で開催された「この10年の海洋物理学を振り返る(杉ノ原伸夫・川辺正樹記念シンポジウム)」には、故人お二人と親交があった者として是非とも出席したかったが、出席できなかった。

このため、1月のツイート発信件数は30件にとどまった。その中で、ツイートを見たユーザーの数(インプレッション、2月5日現在)が上位を占めた3件のは
1月11日 日本学術会議主催学術フォーラム「安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場」の開催情報
1月13日 国立大運営費交付金の再配分に関する朝日新聞記事へのコメント
1月20日 「海洋酸性化」に関する毎日新聞記事の紹介
であった。以下はこれらのツイートへの補足など。

参照:
twilog:http://twilog.org/hiroichik
拙ブログ記事:
2007年02月04日 訃報 杉ノ原伸夫センター長
2012年05月02日 故川辺正樹さんを偲ぶ

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2016年10月13日

北極海の氷が融けると海面は上昇するのか?

以前、「水に浮かべた氷が融けると、水面は上がる」、「地球温暖化が進むと、北極海の氷が融けて、海面が上昇する」と思っている人が多いことについて、「理科教育」の課題の一つとして友人と嘆いたことがあった。ネットを逍遥していて、ブログ「だって面白いんだもの」にブログ主の「たかを」さんが10月8日付けで「【中学理科】北極の氷が全て溶けても海面が上昇しない理由を説明する」と題する記事をエントリーしているのを見つけた。管理人には真似のできないのびのびとした筆致で書かれており、楽しく拝見した。
「たかを」さんは、「海に浮かんでいる氷が融けても、海面の高さは変わらない」ことを非常に丁寧で分かりやすく説明(証明)されている。ただし、100 gの海水から100 gの氷ができる、という「たかを」さんの説明は、実際の海では、厳密には正しくない。以下は、その補足説明など。

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2016年08月17日

海面に明暗模様が現れるカラクリ

2016年8月17日01時15分 一部修正
2月23日の更新以来、6ヵ月が過ぎてしまった。今年こそはブログ更新をより頻繁にしたいと年頭に宣言したものの、現実は、昨年以下のペースになってしまっている。その主な理由は、日本海洋学会和文誌「海の研究」編集委員長としての業務の他、海洋関連30学会が共同して「小学校理科単元『海のやくわり』新設の提案」を文部科学省に提出する作業に4月初めまで忙殺されたこと、「理科の探検(RikaTan)」誌8月号に組まれた「海の特集」の一部執筆陣の仲介および自分の寄稿原稿の作成、サイエンスアゴラ2016応募企画の立案・申請とその採択後の対応、その他に追われいたためである。この間、拙個人ウェブサイトの「イベント参加予定・記録」に記載してある種々のイベントには参加したものの、時間をかけてブログを更新する余裕がなかった。

12日午後の東京都理数系教員指導力向上研修での講義を終え、20日-27日に三重県で開催される国際地学オリンピックに選手団(オブザーバー)の一員として参加するまで暫しの時間的余裕ができたので、久々にブログを更新することにした。以下は、「理科の探検(RikaTan)」誌2016年8月号(通巻21号)に掲載された特集「海をめぐる19の知的検」の紹介、この特集に寄稿した拙記事の再掲およびその補足説明。

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2016年02月23日

乱流が海洋を支配している

2月16日に東京大学大学院理学系研究科・理学部から「乱流発生の法則を発見:130年以上の未解決問題にブレークスルー」と題するプレスリリースがあり、全国紙での報道はなかったものの流体力学マニア(?)の注目を集めた。

層流(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典:流れの中で,流体の各部分が互いに混り合うことなく流れるもの)から乱流(流れの中で,層流ではないもの)への遷移がなぜ、どのように起こるのかという問題は、私が大学3年で巽友正先生の連続体力学の講義を通して流体力学を学んだ約45年前にも未解決の問題と言われていただけに、「ついに解決したのか!」という驚きをもって読んだ。

読んでみたものの、どこが新たに発見された「乱流発生の法則」なのかすっきりしない。また、プレスリリースの「普遍法則を実験で見いだした」という表現に違和感を感じた。

プレスリリースの元論文はNature Physicsで2月15日付けで公表された'A universal transition to turbulence in channel flow'である。無料で閲覧できる要旨を見た限りでは、ブレークスルーと言える真新しいことを発見したという印象を受けない。

そうした中、ブログ「あらきけいすけの雑記帳」の「130年の放置プレイ?タイトル盛り過ぎでしょう、佐野先生」と題する記事で、本プレスリリースに関連して最近の乱流研究の概略が述べられているのを見つけた。この記事とプレスリリースで、久々に(純粋な?)乱流論に触れた。以下は、これらの記事を読んで考えたことなど。

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2015年09月17日

「海のゴミ」の集積海域

前回の7月11日から2ヵ月ぶりの更新になってしまった。この間、某英文誌投稿論文原稿の査読、共著論文再投稿原稿の校閲、「海の研究」編集長業務、サイエンスアゴラ2015出展準備のほか、科学コミュニケーション関連の種々のイベントへの参加などで慌ただしい毎日を過ごした。
参照:拙ウェブサイト「イベント参加予定・記録」

こうした中、9月12日に「海のゴミは最終的にどこに行き着くのか」をNASAが調べたところ、衝撃の事実が判明!!!と題する記事がNetgeekに投稿されているのを見つけた。この記事は、参考として、'Garbage Patch Visualization Experiment'と題するNASAのサイト掲載記事へのリンクを張ってある点は評価するが、その元記事とかけ離れた、とんでもない記述があるのを知り、思わず、
酷い誤訳。「白く映っているのがゴミの塊」ではない。35年間に放流した漂流ブイを同時に放流したと再計算した時から578日後のブイの位置。海面を漂うゴミは風と海流のため、一部の海域に集積する。

ツイート した。

このNetgeekの記事でリンクが張られている動画(8月21日YouTube公開,登録者:Sploid)はその出典が解説記事に明示されておらず、タイトルも「This is how garbage islands have formed in the last 35 years」という不適切なものであった。このため、この動画に代えて、9月1日にYouTubeにWorld Economic Forumによって登録された「NASA's Garbage Patch Visualization Experiment」と題する動画を下に示す。これは、上述のNASAサイト掲載記事に提示されたダウンロード可能なSIGGRAPH versionである。
https://www.youtube.com/watch?v=oUKUP2s5_VY

以下は、この動画を含めたNASAの元記事の解説と補足。

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2014年07月21日

コリオリ力を説明するビデオ(2)

仕方がない状況ではあるが、4月に本ブログを移設してから、過去記事へのアクセスが非常に少なくなっている。その中で、最近、2009年06月08日付け記事「コリオリ力を説明するビデオ」へのアクセスがいくつかあることに気付いた。そこで、念のために、この記事を見直したところ、6月21日に日本海洋学会教育問題研究会サイトのサーバーが移転しており、この記事で提供している情報(ビデオ映像のリンク先)が切れていることに気付いた。
 
ビデオ映像のリンク先に合わせて、2009年06月08日付け記事中およびこの記事へのトラックバックした拙ブログ記事のリンク先を以下に示します。ご不便をおかけしましたことをお詫びします。
        ウィンドウズ版MAC版
 
拙ブログ関連記事
 
拙ブログ記事からのトラックバック
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2014年07月13日

最新海洋研究情報(6月27日-7月13日のツイート)

6月23日以来、ブログの更新が止まっている。この間、ネットで見つけた情報について21件のツイートした。各ツイートに関連情報を追記してブログにアップしようとしている内に、時間が過ぎてしまった。遅延していた個人的に参加している団体のための取りまとめ作業や科学コミュニケーションに関わる諸活動、他のためである。23日以前のツイートでブログで言及していないものを含めて、総計24件のツイートを大別すると以下のようになる。
 
最新海洋研究情報関係:
6月27日(1件)、6月28日(1件)、6月30日(1件)、7月3日(1件)、7月11日(1件)、7月12日(1件)、7月13日(1件)
書籍関係:
6月23日(1件)、6月24日(2件)、6月27日(1件)、7月3日(1件)
科学コミュニケーション関係:
7月3日(1件)、7月4日(1件)、7月12日(1件)
科学技術政策関係:
6月20日(2件)、7月3日(1件)、7月12日(1件)
教育関係:
6月27日(1件)、6月28日(1件)
採用人事関係:
6月27日(1件)、6月30日(1件)
男女共同参画関係:
6月20日(1件)
本エントリーでは最新海洋研究情報関係7件のツイートを以下に示す。他のツイートについては別エントリーでまとめて示す。
 
7件のツイートを読む
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2014年06月23日

海洋学会会員の情報発信3件のツイート

以下は6月20日にネットで見つけてツイートした3件の海洋学会会員の活動の補足
 
1件目は大学同期の柳哲雄さんが海洋政策研究財団 ニューズレター333号に「国際エメックスセンターの活動」紹介した寄稿記事の情報。柳さんが代表となって2014~2018年に環境省環境研究総合推進費による「持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発」を進める予定とのこと。「里海」運動を未来設計学のひとつの見本として国際発信したいと考えているとのこと。文系、理系を合わせた領域融合的研究にはかなりの困難が予想されるが、合意形成手法の検討、開発を含めて成果に期待する。
 
拙ブログ関連記事:
 
2件目は、海洋学会和文論文誌「海の研究」23巻3号掲載 松川他「有明海奥部の貧酸素と諌早湾干拓事業の因果関係の検証」の著者の一人である佐々木さんによる漁業統計の解説のTogetterの紹介。筆頭著者の松川さんは大学の先輩。松川さんの依頼により研究室同窓会メンバーにご当人の説明を付して論文刊行の情報を流したところだった。
「海の研究」はKMさんのご尽力で電子化の際に以下の学会サイトで即時、一般公開されている。
このことが、今回、社会への発信として大きなインパクトを与えていることに結びついたと思う。
有明海に関連する情報は以下の海洋学会環境問題研究会ウェブページ参照
 
3件目は東大理学部 高校生のための夏休み講座 2014の一環で8月20日(水)に東大理学部の東塚さんが「異常気象の謎を読み解く鍵」と題する講義を担当されるという情報。定員150名(事前申込制・先着順)。詳細は以下のサイト。
 
3件のツイートを読む
ラベル:環境 教育 生活
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2014年06月05日

2014年6月2日のツイート(追記あり)

2014年6月5日01時35分 追記
ツイエバ

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  • 市川洋,Hiroshi Ichikawa @hiroichik
    日本海洋学会の事業ではない点で完全に誤報。その他に、記者の激しい思い込みもありそう。 / “放射性物質の拡散予測SPEEDI、海洋版を開発へ  :日本経済新聞” http://t.co/zuvvg2Cdwx
    17:38

delivered by Twieve
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2014年05月07日

離岸流とはどのような流れか?

2014年5月8日01時15分 修正・追記、書式変更
 
4日午後に新潟県上越市の海岸で5人が死亡した水難事故が種々のメディアで大きく報じられた。その中で、毎日新聞2014年05月05日付け朝刊東京版に掲載された「水難事故:大波にのまれ5人死亡 子供3人、救助の父ら−−新潟の海岸」と題する記事では、事故発生状況の記述に続いて、川名壮志記者と山田奈緒記者の名で『「離岸流」の可能性』を指摘している。事故発生状況の記述からは離岸流に思い至らなかった管理人には、この指摘は意外であった。さらに、その中で、
岸に打ち寄せた波が沖合に戻る際に突然生まれる強い流れを「離岸流」と呼ぶ。
という、管理人のこれまでの理解と大きく異なる定義を読み、強い違和感を感じた。そこで、ネットで関連情報を調べた。以下はその結果。
 
拙ブログ関連記事:
2009年03月14日 遠浅の砂浜海岸へ向かう恒常的な流れはあるのか?
 
本エントリーをアップ後、以下のTogetterを見つけましたのでお知らせします。離岸流に限らず、水難事故防止のための情報として一読をお勧めします。この中では、以下の離岸流の英語ビデオサイトを紹介しています。本記事と併せてご覧ください。
 
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2013年08月25日

8月22日午前の天草市での海水の岸壁越えの原因

8月23日に
不思議な見出し。本渡瀬戸他での潮位偏差は半日周期変動。 / “「大潮と満潮が重なり海水が岸壁越える 熊本・天草市」 News i - TBSの動画ニュースサイト”
Twitterでツィートした。「不思議な見出し」とつぶやいた理由を、拙ブログの記事「8月23日のつぶやき」の追記で述べた。以下は、この追記の再掲と図を用いた補足説明。


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2013年04月07日

温暖化による南極周辺の海面水温低下と海氷面積増加の理由

2013年4月09日01時03分 追記
2013年4月10日00時40分 追記2


2月16日に記事をアップした後、あっという間に約2ヵ月が過ぎてしまった。記事更新を少しでも補充するつもりで、翌2月17日からTweetsの自動アップ機能の利用を開始したが、Recent Entriesに「3月XX日のつぶやき」のみが並ぶという格好の悪い状態になっている。この間、私事での度重なる1泊旅行(広島、山梨、福岡)、3月21日から25日まで品川で開催された日本海洋学会2013年度春季大会への参加、この学会期間中の日本海洋学会教育問題研究会関連活動(3月21日:海洋科学コミュニケーション実践講座体験ワークショップ、3月22日:2012年度活動報告、3月23日:第11回海のサイエンスカフェ)の準備に追われていた。

このような中、毎日新聞4月1日付け東京版夕刊の「南極の海氷:温暖化で増加? 塩分濃度下がる--オランダの気象研究所」と題する興味深い記事が目に止まった。しかし、この中に理解に苦しむ記述があるのを見つけ、2日にそのことをTwitterで発信した。以下は、このTweetの補足と原論文の解説。

追記2:拙ブログ関連記事
2012年05月11日 「南極低層水が激減した」という記事で気になったことを調べた

http://blogs.dion.ne.jp/hiroichiblg/archives/10749661.html


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2012年11月28日

南太平洋上の島が消えた?


11月22日にオーストラリアのThe Sydoney Morning Herald)が「Where did it go? Scientists 'undiscover' Pacific island」と題する記事で、Google Earth他の地図上では南太平洋上にあるとされていたサンディ島が実在してないことが「発見」されたことを報じた(WAtodayのサイトでも全く同じ記事が掲載されている。また、現在のGoogle Earthではサンディ島は黒く塗りつぶされている)。その内容はAFPで世界に配信されたようで、The Austrianは翌23日にAFP電として「Paradise lost: Google Earth island a mystery」と題する記事を報じている。日本でも、23日にはAFPBBニュースサイトに「「グーグルアース」記載の島、行ってみたら存在しなかった」と題する記事が掲載された。さらに、24日にはCNN日本語ウェブサイトで「地図上の南太平洋の島は実在せず 科学者チームが発見」と題する記事が掲載され、ネットサイト「カラパイア、不思議と謎の大冒険」でも「グーグルアースの衛星地図に載っている小島「サンディ島」は実際には存在しないことが判明(オーストラリア地質学チーム)」として紹介され、Twitterや「はてなブックマーク」でそれなりの注目を集めた。

海洋観測のための船舶航行計画立案に深くかかわる経験を有する管理人としては、航海用海図に大きな誤りはないと思っていたので、この結果は世界の海図管理体制の大きな欠陥の発現かもしれない重大事と一旦は思った。しかし、これは管理人の読み間違いで、じっくりと記事を読むと、世界の海図管理体制の問題ではなくて、一般用地図の問題であることが分かった。以下は、この騒ぎについて思ったことなど。


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2012年06月16日

解説「海洋科学とは何か」

昨年3月7日に編集委員会に送付した「海洋科学とは何か」と題する原稿がようやく公刊された。この原稿の話は一昨年10月に友人のMTさんからの
今年退職した別の専攻の先生から、「日本の科学者」という雑誌、日本科学者会議(ご存知ですか?)が出してる機関誌のようなものですが、それに、海洋の研究あるいは海洋のことを一般の人にわかるように書いてくれないかと頼まれました。

機会を捉えてそういう記事を書くことは悪いことではないので、自分が適任かどうかはわからないけれど、書けそうな人を探してみると答えました。

あんまり気乗りがしなくなったのですが、そんな雑誌でも、海洋を知ることの大切さのような文(2pから6pくらい)を書くことはどう思われますか。
というメールから始まった。当初は、2011年5月号<レビュー>欄に掲載予定であったが、東日本大震災で予定が遅れ、その後の編集委員の交代により、結局、特集「日本の海洋教育」の一編として、他の5編と共に2012年7月号(第47巻7号,p.4-10)に掲載された。以下は、その原稿(公刊された「論文」と一部異なる)。

拙ブログ関連記事
2008年02月17日 海洋学と海洋科学

2012年6月16日 10時30分 一部書式修正



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2011年04月10日

原発事故による海洋汚染の予測

YOMIURI ONLINE(読売新聞)は、2011年4月5日14時39分の「汚染水拡散「最初は南北沿岸」…仏が予測」と題する記事で、フランス国立科学研究センターなどによる福島第一原子力発電所から海に流出した高濃度放射性物質の拡がり方についての数値予測計算結果を報道した。この報道に対し、Twitterなどで「何故、フランスに出来て、日本では出来ないのか?」という非難の声や、漁業への影響を心配するコメントが多かった。他方、紹介された予測結果に対して発表元がウェブサイトで述べている留意事項に言及したコメントはあまり多くなかった。以下は、読売新聞の記事の補足を中心に、文部科学省発表の福島第一原子力発電所周辺の海域モニタリング結果、岸から海に流出した汚染水の広がり方、福島沖での海水流動の解説など。

2011年4月13日23時30分 追記
2011年4月14日01時15分 一部字句を訂正
4月12日に文部科学省から発表された「海域における放射能濃度のシミュレーションについて」で、放射能濃度分布のシミュレーション結果が報告されている。



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2011年03月07日

「第7回海のサイエンスカフェ」他のご案内

3月下旬に、標記の「第7回海のサイエンスカフェ」の他に、海洋についての一般向けの集会、催しが、いくつか開かれる。以下は、それらの紹介。

2011年3月19日
東北関東大震災にともない、3月22日から26日に東京大学柏キャンパスで開催予定であった日本海洋学会2011年度春季大会と関連行事は全て中止となりました。「第7回海のサイエンスカフェ」は、開催日時と場所はそのままで、内容を変えて実施します。詳細は
http://coast14.ees.hokudai.ac.jp/osj/science_cafe/20110327.htm
をご覧ください。
なお、3月27日から31日に東京海洋大学品川キャンパスで開催予定であった日本水産学会も中止となりました。




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2010年10月09日

海の表面にできる模様はどうしてできるのか

ネットを逍遥していて、「livedoorナレッジ 知識、知恵のカタマリ」の「お蔵入り」として、2007年1月23日付けのohba_come_onさんの以下の質問に出会った。
静かで波もまったくない海の表面にできる模様はどうしてできるのか

私は小さい頃から海辺で生まれ育った
そして小さい頃から疑問だった
静かでまっ平らな海の表面にはいつも何かしらの模様がある
私が思うにそれらは海水温の違いや海流が織り成すものだとは思うが、そこをはっきりと教えてもらいたい
「はっきり」とお教えするのは難しいが、以下に回答を試みる。

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2010年09月27日

加古里子絵・著「海」出版から40年

かって寄贈されたはずの本を我が家の本棚で探していて、加古里子ぶん/え「海(福音書店、1969年発行)」があるのを見つけた。1993年3月印刷の第40刷版であった。息子が小学生低学年の頃に我が家で購入したらしいが、管理人が推奨した覚えはない。読んでみると、干潟から始まって、生物の話を主としながら、漁業、海洋開発、海底地形、太平洋、海洋調査とその歴史、南極、大西洋、北極で終わる豊富な内容で、潮汐、黒潮、潮目も言及あるいは図示されている。子供向けに「ひらがな」での記述とはいえ、専門的過ぎるとも思えるプランクトンや主な海洋調査船、潜水艇の名前まで記載されており、その最後は「あなたも うみをしらべて たんけんして、そして うみをすきになってくださいね。」という言葉で終わっている、素晴らしい内容の絵本であった。

この本は、今でも高い評価を得ているようで、最近でも2010年1月13日付けで、鉄盾さんが優れた書評をamazonのカスタマーレビューに寄稿している。とはいえ、本書の内容は発行された約40年前の海についての知識の状況を反映したものである。以下は、本書を子供に読み聞かせるお父さん、お母さんのための、その後の発展についての簡単な補足など。

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2010年07月11日

NEWTON SPECIAL「よくわかる海と気象」

管理人は、ここ5年ほど、主として黒潮続流域での海面係留ブイを用いた海面熱交換量の現場観測や黒潮が大気循環に及ぼす研究を通して、大気海洋相互作用についての研究を進めている。この研究分野と関連した記事が、科学雑誌ニュートン2010年8月号で特集されている。NEWTON SPECIAL「よくわかる 海と気象」である。管理人の研究テーマについての一般読者への語り口の参考とするために、久々に購入して読んでみた。表紙には
「海水温」と「海流」をみれば 
よくわかる気象 
台風,モンスーン,エルニーニョなど 
すべては「海」が引きおこす
と大々的に書かれている。また、そのウェブサイトでは
海があるおかげで地球の環境はおだやかに保たれている。
一方で,海は台風を生み,砂漠をつくり,ときに異常気象を引きおこす。
海はなぜそんなに大きな影響力をもっているのか?
と述べているように、本特集記事は、主として気象に果たす海の役割を全34ページの詳細な記事とイラストで解説している。ニュートン編集部の福田伊佐央さんが担当して、それなりに良く考えて書かれた記事だとは思う(もちろん、イラストは素晴らしい)。しかし、専門外の人に説明する専門家の立場から本特集記事を読むと、その構成や一部の記述に、違和感を感じる。以下は、その勝手な感想と記事の補足。


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2009年11月21日

北極海の酸性化進む

毎日新聞11月20日付け東京朝刊は「地球温暖化:小型貝危機 北極海の酸性化進む」と題する記事で、「地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の増加で北極海の酸性化が進み、小型貝類などの生息が危ぶまれる水準に初めて達したことが、海洋研究開発機構とカナダ海洋科学研究所の研究で分かった」ことを報じている。元ネタは海洋研究開発機構のプレスリリースで紹介されている米国科学振興協会発行Science誌11月20日号掲載論文(Science 20 November 2009:Vol.326. no.5956, pp. 1098 - 1100)で、その筆頭著者は昨年春の第1回海のサイエンスカフェで話題提供をしていただいた川合美千代さんであった。以下は、この報道ほかについてアレコレ。

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2009年11月08日

気象観測船3隻が来春引退

2009年11月13日21時30分 関連記事とウェブ魚拓を追加
2009年12月25日00時40分 追記


現在、気象庁では5隻の観測船が海洋気象観測に従事している。400トンクラスの「長風丸(長崎海洋気象台)」、「清風丸(舞鶴海洋気象台)」、「高風丸(函館海洋気象台)」と、1400トンクラスの「凌風丸(気象庁)」と「啓風丸(神戸海洋気象台)」である。11月6日付け47NEWS(共同通信)の「気象観測船3隻が来春引退 衛星技術向上で役目終え」と題する記事
気象庁は6日までに、海上での気象観測に当たる「海洋気象観測船」5隻のうち、日本近海を担当していた海洋気象台所属の3隻を来年3月末に引退させる方針を固めた。気象衛星の観測技術向上などで削減可能と判断、昭和30年代以降続いた5、6隻体制を大幅に縮小する
と報じている(ウェブ魚拓はここ)。気象の長期予報で重要な情報を提供する観測船を減船することは、予算削減の中での苦しい選択であったとは思うが、気象衛星観測技術がいくら向上しても、観測船の替わりは務まらない。財務省主導と思われる気象庁担当者の説明をそのまま報道している共同通信の配信記事には疑問を感ずる。とはいえ、減船方針は全国紙では報道されていないだけ、共同通信はまだ良い方といえる。気象庁の観測船の重要性が砕氷船「しらせ」ほどに認識されていないためであろう。以下は、この観測船の減船方針について考えたことなど。


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2009年08月02日

各大洋の西端に強い海流が流れる仕組み

各大洋の亜熱帯循環の西側には西岸境界流と呼ばれる強い海流が流れています。例えば、北大西洋の西側には湾流、北太平洋の西側には黒潮、という強い北向きの海流が流れています。また、南大西洋の西側にはブラジル海流、南太平洋の西側には東オーストラリア海流、インド洋の西側にはマダガスカル海流、という南向きの強い海流が流れています。西岸境界流は各大洋の亜熱帯循環の東側の海流に比べて強いため、西岸強化流と呼ばれることもあります。何故、各大洋の亜熱帯循環の流れは東西で異なり、西岸付近でのみ強い流れががあるのでしょうか? 以下では、そのカラクリを説明します。


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2009年07月23日

表層の海水が風下側に流されない仕組み

前回の記事「表層海洋循環の成因」で、詳しい説明なしに「実は、海上に吹いている風によって風下側に運ばれる海水にもコリオリ力が働く。その結果、上層の海水は風下に向かって、北半球では右直角方向に、南半球では左直角方向に運ばれる(これをエクマン輸送と呼ぶ)」と述べてしまいました。読者の中には、このことは日常生活での経験に反し、奇異に感じた方も多いと思います。以下は、この説明です。


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2009年07月15日

表層海洋循環の成因

MONEYzine(マネージン)で7月5日に「国際情勢分析の第一人者浜田和幸ヘッジファンドの全貌を明かす!第22回温暖化が進めば氷河期突入の恐れも 今、地球に何が起こっているのか」と題する記事が掲載されているのを見つけた。突っ込み所が満載であるが、2ページの
現在の地球は赤道付近の低緯度の地域で温められた海水が地球の自転によって発生する巨大な潮流に乗って高緯度地帯に熱を運んでいる。
という記述を読んで、笑い話では済まないと思い、以下に表層海洋循環の成因を述べることとする。



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2009年06月16日

「海のコンベアベルト」と水中漂流ブイ

「海のコンベアベルト(Great Coveyor Belt, GCB)」とは、「海面の海水の塩分が濃い北部北大西洋と南極周辺の海面の海水が冷やされて海底まで沈み込んでできた深層水が、世界をめぐり、熱帯や亜熱帯の海で海面へと湧き上がり、暖められながら海面を通って、沈み込みの発生する元の場所に戻どってまた深層へと沈む、およそ2000年かけて「世界一周」する流れ(ジャムステック・キッズ>海をたずねて>第8回 2000年かけて「世界一周」の記述を改変)」の連なりを模式的に表している。以下は、このGCBについてのいくつかのお話です。

関連記事:
2009年2月24日 4月5日に「海のサエンスカフェ」を開催(拙ブログ)
2009年3月25日 コンベアベルトと地球温暖化(ブログMutteraway) 
2009年6月15日 第3回海のサイエンスカフェ報告(日本海洋学会教育問題研究部会のウェブサイト)
2009年5月18日 フロートを使った実験で海水の循環モデル実証されず。気候変動のグローバルモデルにも影響が?(スラッシュドット・ジャパン)


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2009年06月08日

コリオリ力を説明するビデオ

2010年3月19日01時20分 ビデオのリンク先を更新

2010年3月19日02時05分 関連記事(カガクのじかん)の紹介を追加



コリオリ力(転向力)とは、地球自転の効果のために、地上で運動している物体に働いている「みかけの力」であり、大気や海水の運動のように流速の鉛直成分が水平成分に比べて十分に小さい時には、コリオリ力の大きさは、移動速度に比例し(比例係数をコリオリ係数と呼びます)、北半球では、物体の運動する方向に向かって直角右手側(南半球では直角左手側)の向きに働きます。このコリオリ力について、「回転する盤上をころがる球の「盤とともに回転している人から見た見かけの運動」と「回転する円盤の外から見た実際の運動」の違いを示す以下のビデオがありましたので、お知らせします。





以下はその補足


本ブログ関連記事:



関連記事:


ちょっと厳密性に欠けてはいますが、一読されることをお勧めします。




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ラベル:地学教育
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2009年06月06日

瀬戸内海水理模型の公開

海洋学会MLを通して、6月26日(金)に瀬戸内海水理模型記念シンポジウムが開催されるとの連絡とともに、6月27日(土)に「瀬戸内海大型水理模型の一般公開」が行われるという以下の案内がありましたので、お知らせします。
市民を対象とした瀬戸内海大型水理模型の一般公開があります。潮の満ち引きを再現しますので、是非ご覧になって下さい。。こちらの方は、「事前申し込み」の必要はありません。
詳細は、以下のpdfを参照してください。
瀬戸内海水理模型記念シンポジウム-瀬戸内海を見据えて35 年、水理模型の今を考える-

以下は、その補足


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2009年05月02日

三角波と高波は違う

4月14日朝に長崎県平戸市沖で巻き網漁船「第11大栄丸」の沈没事故が発生した。毎日新聞4月15日付け朝刊は「長崎・平戸沖の漁船転覆:後方から三角波か 不明12人、捜索続く」という見出しの記事(ウェブ魚拓はここ)の中で、以下のように、この事故の原因が三角波の可能性があることを報じている。
 7管によると、現場付近には15~20メートルの強風が吹き、波の高さは2・5~3メートルあった。ただ、船舶などの専門家は「この大きさの船が転覆する波高ではない」と指摘。多方向から吹く強風で複数の波がぶつかり合ってできる「三角波」が発生した可能性がある。側面から三角波に乗り上げると、船体は大きく傾く。
この記事中の「三角波」の説明を読んで違和感を感じた。三角波は、多方向から吹く強風で複数の波がぶつかり合った場合にのみ生じるのではなく、流れも関係している。また、波の高さが2・5~3メートル程度の海況で船を転覆させるほどの三角波が発生するとは考えにくい。改めて今回の事故原因についての新聞報道、あるいは「三角波」について調べてみた。


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2009年03月29日

シンポ「里海の理念と水産環境保全」に参加して

4月10日01時35分 追記1
4月10日02時05分 追記2


27日に有給休暇をとって、品川の東京海洋大学で開催された標記のシンポジウムに参加した。
会場は満席ではなかったが、それなりの参加者数(80名程度?)であった。水産学会期間中の一般にも公開したシンポジウムであったが、顔見知りは5名程度であった。
8名の方の講演を聴いたが、もっとも興味深かったのは中島さんの自己紹介から始まって、漁業権の成り立ち、漁業権にかかわる訴訟、「里海」実践活動の紹介であった。また、松田さんのゴーイングマイウエィー的な活動報告も、面白かった。以下は、各講演についての感想など。

関連記事:
拙ブログ 里海
拙ブログ シンポジウム「里海の理念と水産環境保全」


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2009年03月14日

遠浅の砂浜海岸へ向かう恒常的な流れはあるのか?

4月10日01時20分 追記

拙ブログの3月1日の記事について、7日に海岸環境の保全に関わるブログ「ひむかのハマグリ」を主宰されているbeachmolluscさんからコメントを頂いた。beachmolluscさんは「なぜ砂浜海岸に(深いところから)貝殻が打ち上げられるのか」という問題について取り組んでおられるとのことです。beachmolluscさんは記事「海水の逆流:副振動(あびき:網曳き、セイシュ)とインターナル・ボア」で、沖から岸に向けて浮遊幼生が運搬される仕組みとして、「インターナル・ボア」の可能性を指摘されています。「インターナル・ボア」という言葉は聞いたことがないので、beachmolluscさんが紹介されている文献を調べたら、インターナル・タイダル・ボア(Internal Tidal Bore, 内部潮汐の打ち寄せ)のことでした。内部潮汐の話は内部波、塩水クサビとともに密度成層に関連しています。これらの説明を始めると長くなるので、別に述べることとして、以下に、密度成層のない、遠浅の海岸における「沿岸流、離岸流」について説明します。

沿岸の物理過程については専門外の私の説明に誤りがある可能性があることを念頭に置いてご覧ください。

関連記事:
拙ブログ「「どうして海の波はたつのか」の補足


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2009年03月13日

シンポジウム「里海の理念と水産環境保全」

水産海洋学会のMLで表題のシンポジウムが以下のように開催されることが企画責任者の山本民次さんから告知されましたので、お知らせします。

日時:平成21年3月27日(金)10:00~17:20
場所:東京海洋大学(東京都品川区)第3会場(大講義室)
主催:水産学会水産環境保全委員会
企画責任者:山本民次(広大院生物圏科)

多分、参加費は無料と思います。
拙ブログの本年1月3日の記事「里海」でご紹介した柳さんや中島さん(コメントも頂きました)も話題提供者として名を連ねられています。
管理人も時間が許せば出席したいと思っています。

以下にMLに流れたプログラムと企画の主旨を転載します。


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2009年03月01日

副振動は環境破壊とは関係ない

3月1日15時 新聞記事にウェブ魚拓をリンク。一部記述の追加、修正。
3月8日02時 一部修正


港や湾内などで海面の高さ(潮位)が急激に変化する現象「副振動」が、24日夜から25日にかけて九州沿岸や奄美大島で観測された(朝日新聞ウェブ魚拓)。26日も副振動が観測され、長崎海洋気象台は、27日も発生する恐れがあるとして、注意を呼びかけた(読売新聞ウェブ魚拓)。28日11時には注意報は解除されたが、発生は28日も続いた。

26日の報道ステーションでは、旧知のHTさんがインタビューを受けて、「副振動現象の原因が十分に解明されていない」という正確に説明をされていた。HTさんの説明の後に示された副振動の発生を説明する模式図(アニメ?)は、専門家の端くれである管理人が見ても理解不能であった(多分、アニメ制作者はHTさんの説明を十分に理解あるいは確認できなかったのだろう)。このことが理由なのか、あるいは原因不明という説明に不気味さを感じたのか、古舘メインキャスターは、「これも環境破壊のせいでしょうか」というコメントで締めくくった。これを聞いて、思わず「そうではない」と叫んでしまった。気になって、ネットで世間の対応を調べた。


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2009年02月17日

水温逆転

2月8日付け毎日新聞朝刊に「深海魚:ベール脱ぐ、未知の世界」と題する記事(ウェブ魚拓はここ)が掲載されていた。リードでは
暗黒、低温、高圧にさらされた深海は「地球最後のフロンティア」と呼ばれる。厳しい環境に阻まれ、調査が困難を極め、未知の世界となっているためだ。6000メートルより深い超深海で、東京大海洋研究所と英アバディーン大が世界で初めて生きた魚の姿を撮影した。謎だった深海魚の生態が少しずつ分かり始めた。
と、読者に海洋への興味を引き起こす出だしで、その背景と共に、大々的に成果を紹介している。ただし、細かいことだが、海底の水温について以下の表現がちょっと気にかかった。
水圧は10メートルごとに1気圧上昇し、水深7700メートルでは771気圧にもなる。温度も深さとともに低下し、1.3度しかない。
このどこが気に障るというのだろうか?と読者は不思議に思うかもしれない。以下は、その答えと補足。

関連記事:
拙ブログ「2010年1月から塩分の定義が変わる!


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2009年01月23日

2010年1月から塩分の定義が変わる!

2009年1月24日22時40分 一部修正
2010年4月1日1時5分 追記


関連記事:塩分と塩分濃度

「塩分なんてとっくの昔にちゃんと決まっていたのでは?」と思っている人が多いと思います。私も1978年に実用塩分が決められてからは、変わることはないと思っていました。しかし、そうではないようです。

「新しい国際海水状態方程式、海水の熱力学方程式2010(TEOS-10)の提案書が完成したのでコメントを広く求める」というメールがYTさんを通して16日に届いた。

国際海水状態方程式とは、国際的に定められている種々の水温、塩分、圧力の組み合わせにおける海水の密度の値の実験式(多項式、最新版はUNESCO1981版)である。一体、何がどう変わるのかと興味をもって、早速、指定された以下のURLから提案書をダウンロードして一読してみた。
http://www.marine.csiro.au/~jackett/TEOS-10/

学生時代に何気なく読んだ昭和30年代?の論文で気になっていた「海水の質量欠損」に関わる最新情報だった。具体的には、「今まで海水の比電気伝導度から実験式で求めていた実用塩分に換えて、海水中1kg中に溶けている物質の総重量(g)を表す絶対塩分を用いて、他の種々の物理量と整合性のある状態方程式を新たに定める」という提案である。順調に手続きが進むと、2010年1月からは学術論文で使用することが勧告されている。

話はそれほど簡単ではないが、以下に、この提案の簡単な説明を試みる。

2010年3月発行の日本海洋学会和文学会誌「海の研究」第19巻2号P127-137に以下の寄稿が掲載されていますのでお知らせします。
河野健:新しい海水の状態方程式と新しい塩分(Reference Composition Salinity)の定義について
http://uminokenkyu.no.coocan.jp/19-2/19-2-3.pdf

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2009年01月12日

海流調査用ロボット「ニモ」の漂流事故?

2009年1月12日13時50分 一部修正

拙ブログが参加している「にほんブログ村」の科学ブログトラコミュ「科学コミュニケーション」にトラックバックされたエントリー「2008年大晦日の科学ニュース一覧」を通して、2008年大晦日のYahoo!Japan科学ニュースの一覧の中に、
*海流調査用のロボット版「ニモ」、漂流の末回収
(人気アニメ映画「ファインディング・ニモ」にちなんで名付けられたロボットの「ニモ」が、海流の温度調査を目的にオーストラリアの海に放たれたものの、強い海流に耐えられず回収された。)
という項目が記載されているのを知った。

何か、的を得ない内容なので気になり、ネット検索で元ネタを調べてみると、ロイターが配信した以下の記事(ウェブ魚拓はここ)であった。


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2009年01月03日

里海

2009年1月3日15時25分 一部修正
2009年1月10日03時30分 追記

毎日新聞の昨年12月24日付け東京版に「「里海」創生 海を身近にするチャンスに」(Web魚拓はここ)と題する社説が掲載されていた。

「環境省が平成20年度から3カ年計画で里海創生支援に乗りだし、平成20年度は2500万円、平成21年度も2100万円の予算が認められた」ことに対応した論説である。「「里海(さとうみ)」という言葉が近年注目されている。人里近くにあり、人々がマキ拾いをしたり、キノコ採りを楽しんだりできる「里山」を海に置き換えた考えだ」という文で始まる。海洋学の普及を目指している私にとしては、毎日新聞が社説で「里海」のことを取り上げたことは嬉しい出来事である。しかし、その内容には、違和感がある。

以下では、「月刊むすぶ」の第454号(2008年11月号)に掲載されている、7月13日に山口県上関町祝島で開催されたシンポジウム「「周防の生命圏」から日本の里海を考える」における「「里海」という言葉への警告」と題する「海の生き物を守る会」の向井宏さんの講演内容他を参考に里海創成について述べる。

関連サイト:
柳哲雄著「里海論」、恒星社厚生閣
瀬戸内海研究会議 (編)、松田他著「瀬戸内海を里海に-新たな視点による再生方策-」、恒星社厚生閣
「月刊むすぶ」、ロシナンテ社
「里海」って何だろう?資料集、中島 満(フリーライター・MANAしんぶん主宰)さんのHP
平成20 年度予算概算要求新規事項:里海創生支援事業について、環境省
里海通信、全国漁業協同組合連合会

<注>
これまでカテゴリー「全エントリー」に配置した記事の総数が上限の100件に近づいたので、2009年1月以降に投稿する全記事の配置先を新設カテゴリー「全エントリー2」にすることにしました。



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2008年11月16日

海洋SF「深海のYrr」の補足

bobbyさんに紹介されて、9月の終わりに購入した海洋SF「深海のYrr(フランク・シェッツィング/北川和代訳)」を先週末にようやく読み終えた。主題としては、「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」と通じるところがあると感じた。

海洋科学技術・産業に関わる幅広い情報を取り入れた、良くできた小説だとは思う。また、第1巻の帯に
福井晴敏氏(作家)感嘆「忘れていた・・・・・・。海がこんなにも深く、暗く、宇宙よりも隔絶された未知の世界であることを」
と記載されている通り、この本によって、海への関心が高まることを期待している。

しかしながら、この小説で述べられている科学的説明の中に不十分あるいは不適切な所があったので、以下に補足説明する。

関連記事:
「海面上昇と干満差」の2008年07月31日 01:30投稿のbobbyさんのコメント
「Carl Wunschさんのこと」の2008年08月02日 11:40の管理人んのコメント


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2008年10月19日

アカチョウチンクラゲと海洋の酸性化

毎日新聞の10月18日付け朝刊東京版で「深海クラゲ:赤ちょうちんに誘われ幼生のすみかに」と題する記事ウェブ魚拓はここ)が掲載された。この元ネタは海洋研究開発機構の10月17日付けプレスリリース「高解像度映像が解き明かした深海クラゲの生態と役割~相互依存がもたらす連鎖現象~」である。このプレスリリースの内容と報道された記事とを比較すると、例によって、一言付け加えたくなる。


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2008年09月25日

ニホンウナギの産卵場

2008年10月6日01時30分 追記

毎日新聞9月23日付け東京版朝刊で「ニホンウナギ:ふるさと特定 親魚、初めて捕獲--マリアナ諸島」ウェブ魚拓はここ)という見出しの下に、水産庁漁業調査船開洋丸の成果が報じられている。同様な記事が、朝日新聞、産経新聞、他でも紹介されており、久々にマスコミの関心を集めた海の研究成果であるといえる。しかし、記事の内容には気になる点がある。


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2008年08月11日

「コリオリ力」は「現実の力」ではないのか?

前回の7月26日のエントリーに関連して、この2週間の間、管理人がブログ「Mutteraway」のブログ主であるBobbyさん、ブログ「佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン」のブログ主である佐藤さんから頂いた質問に答える形で、「海のコンベアーベルト」他について解説した。その過程で、8月7日に佐藤さんから「コリオリ力」について以下のようなコメントを頂いた。
私の問題意識は「見かけの力」というネーミングにしっくり来なかったということに尽きるかと思います。
日常的意識では慣性系だけども現実には回転座標系の世界だということの意識のギャップを修正というか翻訳するためにコリオリ力という概念が導入されたということでしょうか。
でもまだしっくり来ません。相対的に見れば「見かけ」じゃない、現実世界で作用しているのだからfictitiousじゃないという意識はまだあります。
また、この佐藤さんのコメントに続いて、ブログ「お茶の間ひねくれ読書日記・Dajiubao’s blog」のブログ主である、おおくぼさんからも以下のようなコメントを頂いた。
でもhiroichiさんの説明は、高校の理科の教科書に出てくる「コリオリの力」とは、かなり違う気がします。
私も素朴に「コリオリの力」って見えるじゃんと思うんですが・・。
ここに至って、多分、「現実に見えているコリオリ力が現実の力ではないとはどういうことなのか?」という素朴な疑問を解消しないと、「コリオリ力」の本質は理解されないということに気付いた。この素朴な疑問を解消しようとする試みを以下に述べる。


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2008年07月26日

Carl Wunschさんのこと

海洋ブログネットワークを通して、柏野雄太さんのブログ「wrong, rogue and log」の7月23日付けの記事「The Great Global Warming Swindle -part1-」
まあ,Wunschの番組への非難については,僕自身の印象では,Wunschが過剰に非難するほどには番組はデッチあげていないように見える.むしろ,Wunschの変に学者らしくない抗議の仕方に,アンチ地球温暖化学者と見られることに対する過剰な反応というか,自身の政治的な位置取りにコンシャスな何かを感じてしまう.
と記述されているのを知った。私の知っているWunschさんはこんなことを言われるような人ではない。といっても、海洋物理学の研究者以外の人はWunschさんのことを知らないと思うので、以下に紹介する。


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2008年07月06日

ある海域が漁場と呼ばれる3つの条件

マグロが獲れる海域は世界に広がっている。その詳細は「日本かつお・まぐろ漁業協同組合(日かつ漁協)」のホームページに掲載されている。

7月5日付け毎日新聞朝刊で以下のような記事(抜粋)が掲載されていた。
遠洋マグロ:休漁、値上がり必至? 2~3カ月ずつ、2年間継続--供給1割減
 遠洋マグロ漁業団体で国内最大の「日本かつお・まぐろ漁業協同組合(日かつ漁協)」は4日、8月1日から2年間の部分休漁に踏み切ることを決めた。燃料代の高騰やマグロ資源の減少が理由で、期間中は同漁協からの供給量は「1割程度減る」との見通し。マグロの値上がりは必至で、食卓にも影響が出そうだ。
「遠洋マグロ漁場とは遠洋でマグロが沢山獲れるところ」であると、多くの人は考えていると思う。しかし、厳密には、そうではない。海洋科学の一分野であって「有用海洋資源生物の分布とその変動の系統的な記述を求めて,資源変動機構と漁場形成機構を解明し,最終的には漁況の予測を目指す」水産海洋学では、以下の条件を満たしている海域を漁場があると定義している。

1)漁業操業が可能
2)有用魚類が多い
3)高収益

本ブログの関連記事:
海洋学と海洋科学


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2008年02月17日

海洋学と海洋科学

このブログの説明として、「海中の物質(塩分,熱,化学成分,生物)の分布とその変動のカラクリを解明することを目標とする海洋学の研究に従事しながら思うことを折に触れてお伝えします.」と述べ、また、「このブログの目的」で「海洋学とはいかなる科学なのかを多くの方々に理解していただくこと」を目的の第1に掲げていた。しかしながら,これまでのエントリーでは、海洋学をきちんと説明していなかった。Wikipediaでは、
海洋学(かいようがく、oceanography)は自然科学の一分野であり、海洋を研究する学問である。
と定義されている。しかし、このWikipediaの定義は私の認識から大きくかけ離れているように思った。、これは、以下の教科書で、
Oceanography is the general name given to the scietific study of the oceans, with an emphasis on their character as an environment.
と定義されているのに対し、Wikipediaの定義では、「with an emphasis on...」という重要な語句が抜けていることに起因する。このことを含め、以下に「海洋学」について私の思いを述べる。
参考:Descriptive Physical Oceanography, An Introduction. by G. L. Pickard and W. J. Emery, Pergamon Press



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2008年02月03日

表層海流調査の歴史

1月30日の新聞各紙で、29年前に下関沖から放流した海流調査瓶が青森県東通村の海岸で発見されたことが報じられた。
毎日新聞 読売新聞

勤務先の広報担当者から、「この漂流瓶の経路などについて、某テレビ局から問い合わせの電話があったので、対応して欲しい」との依頼があった。上で紹介した読売新聞の記事で旧知の加藤修さんが既に答えていたのを知らず、日本海区水産研究所、函館海洋気象台、あるいは九州大学応用力学研究所に問い合わせるように伝えた。社会貢献が重要視されている折から、私が答えて勤務先の宣伝に一役買うべきだったかもしれない。しかし、私よりも、日本海に詳しい人が対応するのが相応しいと考えた。記者が専門家のコメントを必要とした時に適切にアドバイスできるように、早急に海洋学会に報道機関からの相談窓口をつくる必要があると思う。

ともあれ、この海流調査瓶の発見に関連した話題として、以下に表層海流調査の歴史の概略を紹介する。


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2007年10月22日

塩分と塩分濃度

毎日新聞21日朝刊のコラム「千波万波」で潮田道夫さんによって、東北大学の花輪公雄さんの随筆「これは『分』が悪いのかな」を引用しながら、花輪さんが塩分濃度という用語を駆逐するために多大の精力を傾けていることが紹介されている。

現在の塩分の定義は、海水1kg中に溶けている固形物質の全量をグラムで表した値に対応した数値(単位はない)であり、塩分という用語に既に濃度の概念が含まれているため、塩分濃度という用語は厳密には成り立たない。花輪さんは、その随筆で述べているように、
世の中では,「塩分の取りすぎ」などと表現することが多い.「塩の取りすぎ」とはあまり使わないようである.すなわち,世の中では,「塩分」は,「塩」のこととして使われているのである.
と認識しつつも、塩分濃度という用語の誤用を正そうと努力されている。

恥ずかしながら、私がこの誤用について強く認識したのは、2003年に角皆静男先生の高校地学教科書の誤りと問題表現という一文に接した時であったと思う。それまでは無意識に塩分濃度を使用していた。2001年12月に一般向けに公刊した<かごしま文庫第71巻「黒潮」>では、塩分濃度を使用してしまっている。改訂版を発行する機会があれば、訂正しなければならないと思っている。

とはいえ、世の中では,「塩分」は,「塩」のこととして使われているのも事実であり、この「常識」を無理に覆すことが、海洋学の普及に本当に必要なのか、確信を持てない自分が居る。

<追記>
一部の文章と語句を修正しました。
なお、花輪さんのWebのURLは
http://www.pol.geophys.tohoku.ac.jp/Exportable/hanawa/hanawa.html
です。随筆「これは『分』が悪いのかな」は左欄の「折に触れて」内に所収されています。

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2007年10月17日

船内生活

海洋観測のための航海での日常生活はどのようなものなのかを多くの人はご存じないと思うので、今回の9月17日から10月9日までの航海を過ごした「かいよう」を例にその一端を紹介します。


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2007年08月26日

「どうして海の波はたつのか」の補足

研究分野は異なるが、同じ勤務先での先輩ブロガーであるMANTAさんがペンネーム「ゴンゴン」さんからの「どうして海の波はたつのですか」に答えて、「こどものための科学のページ かがっきーず(So-net)」内の該当箇所を紹介している。

「ゴンゴン」さんのバックグランドが分からないので、MANTAさんおよび「かがっきーず」の回答が適切なのか不明だが、30年前の学位論文で「風波の発達機構」を論じた者として、以下に補足します(以下の説明は、厳密ではありません。一見、あたりまえと思うことでも、突き詰めると複雑であることと、そのカラクリの面白さを感じていただければ幸いです)。


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2007年07月18日

エチゼンクラゲの大発生と地球温暖化

水産総合研究センターが7月12日のプレスリリースで大型クラゲが「7月下旬頃には九州北部から山陰西部の沿岸に出現すると見込まれます。」との予測結果を発表している。この予測は「これまでに得られた出現情報に基づき、独立行政法人水産総合研究センターが独立行政法人海洋研究開発機構と共同開発した海況予測モデル(FRA-JCOPE)」を用いて予測した結果とのことである。このような予測ができることは、船での目視観測により出現情報を収集した多くの現場担当者の方々の貢献と、顔馴染みのKさんとMさんが開発した海況予測モデルの成果であり、同業者の一人として誇りに思う。

大型クラゲの大発生といえば、先月京都で開催された理学部同窓会で私が関係している地球環境問題との関わりから、このことが話題になったことを思い出した。いわゆる理系人の中でさえ、多くの人がエチゼンクラゲの大発生の原因が地球温暖化と思っていることに驚いた。


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2007年06月30日

日本海の黒潮(2)

「日本海の黒潮」について「海軍水路部では大正末期に初めて現れる「対馬海流」が、水路誌以外の明治中期以降の文献に登場しているので、日本海の黒潮とする海軍水路部が少数派であった可能性もあります。」という追加情報を頂いた。

この詳細を述べる前に、ブログ世界を通じて先日20年振りで京都で再開した大学時代の友人から「対馬のあたりの地図が周りにありませんので、地図も載せるか、すぐいけるようにして下さい。」というコメントを頂いたので、それへの対応として、私も作成に関与した日本周辺の海流図の代表例へのリンクをここに貼っておきます。ご参照してください。


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2007年06月22日

黄海の流れ(3)改め 日本海の黒潮

昨日のエントリーで「谷川健一著 甦る海上の道・日本と琉球(文春新書)」の13ページに「黒潮にのれば、遠く山陰、北陸までたやすく進出することのできる」という誤った記述のあることを指摘した。このことについて、同業の読者から「谷川健一氏の黒潮の記述にお怒りのようですが、氏の海流の知識が明治か大正までの知識であれば、正しいことをお書きになっているのではないかと思います。」として、以下の情報が伝えられた。


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2007年06月21日

黄海の流れ(2)

前々回のエントリーの続きです。

先週末に時間があったので本屋に立ち寄り、懸案の「谷川健一著 甦る海上の道・日本と琉球(文春新書)」を購入した。

毎日新聞14日東京版夕刊のコラム「早い話が」で引用されていた黄海の流れについての誤った記述は、この本の中で引用されている鳥居龍蔵著「有史以前の日本(大正14年刊)」の記述であった。こんな大昔の記述をそのまま引用する文春新書も酷いが、その大昔の記述の引用に何の注釈も加えずに引用した毎日新聞のコラムはもっと酷い。


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2007年06月15日

黄海の流れ

このところ、毎日新聞の海洋学関連記事の監視報告ばかりしている。他紙にも同じような誤りはあるのだろうが、購読しているのが毎日新聞だけであるのみならず、毎日新聞は非常に多くの記事をWeb上に無料で公開していて引用しやすいということもある。

日常生活で海のことをあまり意識しない人々が、新聞記事で海が話題になったことを契機に海に目を向けた時にこそ、海のことをより正確に知ってもらいたいと思い、補足解説のエントリーを続けている。

そう思っていると、今日も東シナ海・黄海の流れについての研究をしていた者にとって衝撃的な記事が目に入った。

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