2024年01月28日

新年のご挨拶2024

令和6年能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧をお祈りしております。
年が明けて、あっという間に、もう1月も終わろうとしています。大変、遅くなってしまいましたが、例年に倣って、本年の年賀状に記載しました文章を以下に再掲し、新年のご挨拶と致します。

謹 賀 新 年

本年の皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

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相変わらず、科学コミュニケーション、海洋・地学・理科教育、科学振興、「地区住民による地区津波防災計画立案の手引き」制作、その他に関するさまざまな活動に係わりながら、毎日を大過なく元気に過ごしています。コロナ禍を無事に乗り越えて、いろいろな方々と各種の対面イベントで気楽にお話しできるようになったことを有難く思い、幸運に感謝しています。
現在の国内外の政治社会状況の混乱・混迷の大元には、過度の成果主義、効率化のために、多くの人が心の余裕を失い、自分の「無意識の偏見」を自覚できる「豊かな想像力」に裏打ちされた「広い心」を持てなくなったことがあるように思います。このような今の社会が変わることを願って、今後も、自分に出来る範囲で科学コミュニケーションなどの活動を、多くの仲間とともに楽しみながら続けていこうと思っています。

令和6年 元旦

年賀状全体イメージ画像
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イラスト:
薬師窯錦彩招福寿々辰(土鈴・中)
https://omodakaya.com/
以下に、上の文面の補足として、旧年を振り返りながら、新年を迎えるにあたって思うことを述べます。

1.旧年を振り返って
1)科学コミュニケーション活動
旧年中も、さまざまな科学コミュニケーション活動に係わることができた。その中で、最も印象に残っているのは、7月29・30日に東京北の丸公園の科学技術館で開催された「青少年のための科学の祭典2023全国大会」で日本海洋学会教育問題研究会会員の方々と内部波についての実験実演を出展したことである。予想外に低学年・未就学児童の参加が多く、その対応に声が涸れるほどであったが、充実した2日間だった。また、管理人の提案に若手会員が応えて出展が実現したことも嬉しかった。

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実験ブースに展示したポスター

旧年中に最も多くの時間を費やしたのは、日本科学技術振興協会(JAAS)の活動だったように思う。管理人はJAASの一般会員として、10月の年次総会での会場係とポスター出展と会員交流会での2回の話題提供の他、科学教育についての対話促進企画、様々な分野の研究状況の紹介イベントなどの催しに参加した。「日本の科学を元気に!」と考えてJAASに参加している、さまざまな背景、考え方を持った方々との交流を楽しむことができたように思う。
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2)「地区住民による地区津波防災計画立案の手引き」制作
管理人は2019年11月に発足した国際津波防災学会津波防災対策検討分科会の共同幹事の1人として、分科会会員と皆さんと「地区住民による地区津波防災計画立案の手引き」目次案の作成に取り組んできた。白熱した議論を経て、ようやく目次案が完成し、6月の国際津波防災学会合同分科会で報告することができた。
さらに、9月17日・18日に横浜国立大学で開催された「ぼうさいこくたい2023」で、国際津波防災学会が主催者となって、9月17日にセッション「一緒に作ろう『地区住民のための津波防災対策計画立案のための手引き』」と題する90分間のセッションを開催した。「手引き」目次案を広く公開するとともに、その内容について4人のコメンテータに助言を求めるという内容の企画を企画責任者として申請し、この企画が採択された後、コメンテータの確定、公式ウェブサイト掲載記事の作成、備品手配、その他の準備を進めた。参加者数は会場およびオンラインを合わせて約40名に達し、これまでの公開検討会を超える参加者を集めることができた。この成果は分科会会員他の関係者の皆さんのご支援の賜物であり、感謝している。特に、突然の依頼にもかかわらず登壇を快諾し、当日は素晴らしいご助言をいただいた4人のコメンテータの方々と、経費を負担していていただいた篤志家に深く感謝している。
11月に開催された国際津波防災学会総会で津波防災対策検討分科会は、「地区住民による地区津波防災計画立案の手引き」制作分科会(略称:「手引き」制作分科会)に改称して、「手引き」本文の制作作業に進むことになった。これを機に、管理人は幹事の役を終え、今後は世話役として新幹事を補佐することになった。

3)海洋・地学・理科教育
海洋・地学・理科教育に係わるさまざまな活動の中では、8月に、日本地球惑星科学連合(JpGU)教育検討委員会の事業として管理人が担当した「小中高教員のための地球惑星科学教育研修」を実施することができたことが、大きな出来事だった。この事業は、2021年度までJpGU教育検討委員会がおこなっていた教員免許状更新講習の延長として企画したが、それまでと違って、文科省による制度的な広報支援がなく、十分な宣伝ができない中で、その実施に強い不安を感じながらの、担当講師募集、ウェブサイト開設、受講者募集であった。結局、多くの方の厚意に支えられて、開設した5件の研修の全てに実施最低受講者を上回る申し込みがあり、合計25名の申し込みがあった。
8月26日には、管理人が委員を務める日本海洋教育学会運営委員会の主催で、海洋教育実践研究発表交流会が開催された。運営委員会では、この交流会の開催の他、学会規則や選挙規則の制定などの種々の作業のため、度々、委員会が開催され、その結果、ようやく本年2月11日に日本海洋教育学会第1回大会を開催することになった。何かと考え方が異なる教育学・海洋学研究者、学校教員、社会教育施設関係者の間に立って、これまでご尽力されてきた事務局の皆さんに感謝している。
12月1日には久々に横須賀市環境教育指導者等派遣事業による派遣指導員として、小学校5年生を対象に、海洋リテラシー普及活動をおこなった。子供たちの素直で活発な反応に喜びを感じた一時であった。後日、子供たちからお礼の手紙を受け取り、今後の活動への意欲が高まった。

4)その他
旧年は、何かと、これまでの自分の研究を振り返ったり、「科学の営み」について考える機会が多かった。3月4日には第8回サイファイフォーラムで、管理人が、海洋学研究者として、 「科学と哲学」について日ごろ考えていることをまとめてお話しする機会をいただいた。また、11月26日には日本科学振興協会(JAAS)の活動の1つであるイノベーションユースで、「研究って何だろう? -自分の海洋学研究を振り返って思うことー」と題するお話をする機会をいただいた。さらに、11月30日には、情報通信技術関連分野の企業の方々の交流会で「海洋学研究と情報通信技術 ー自己紹介を兼ねてー」と題するお話をした。このような自分の想いを伝える機会を持つことのできたことに感謝している。
拙ブログ関連記事:
023年12月14日付け記事 好奇心、探究心、研究心

5)再会と別れ
旧年を振り返ると、コロナ感染症の流行が完全には終わっていないとはいえ、対面交流が復活し、実に多くの方々と再会するできた。
9月24日に京都で開催された「第29回海のサイエンスカフェ」では久々に対面での「海のサイエンスカフェ」の楽しさを満喫した。また、その後の日本海洋学会2023年度秋季大会では、多くの知人・友人と再会することができた。10月18日には関東在住の大学教養部仲間の対面同窓会も4年振りで再開し、旧交を温めることができた。特に、10月23日に大学教養部時代からの友人の一人と大阪梅田で約10年ぶりに再会する機会があり、楽しい一時を共にすることができたのも、旧年の嬉しい思い出である。
他方、悲しいこともあった。5月14日に管理人が鹿児島大学水産学部勤務時代に大変お世話になった元練習船南星丸船長の柿本亮さんがお亡くなりになった。89歳であった。柿本船長とは、毎年、50日以上の鹿児島湾およびその近海での実習調査航海でお世話になった他、忘年会など機会あるごとに天文館で酒席を共にした。柿本船長は豪放磊落な方で、様々なことで助言をいただき、15歳年下の管理人にとって頼りになる兄貴のような存在であった。若いころは北海道沖や南米で漁船員として活躍されていた当時のお話をお聞きするが楽しかった。最期にお会いしたのは2017年12月に管理人が柿本船長の別宅にお伺いした時だった。管理人が2022年12月に鹿児島に行った折には、時間がなくご連絡をしなかったのが悔やまれる。ご冥福をお祈りします。
12月1日には、元東京大学海洋研究所海洋物理学部門教授の寺本俊彦先生がお亡くなりになった。享年98歳であった。寺本先生は、鹿児島大学に赴任して間のない管理人が深海流速計係留観測への道を進む契機を与えていただいた恩人である。先生とは数多くの研究船白鳳丸航海、研究船淡青丸航海でご一緒した。手許には、1987年にフィリッピンのセブ島から乗船した白鳳丸航海で、XBTを投入するお写真がある。先生は、海洋観測機器の開発に精力的に取り組まれていた。そのご経歴からか、産業界、官界と学界の連携を重視され、旧友の久田安夫元運輸省港湾技術研究所所長他と2003年にNPO法人海ロマン21を設立された。現在、管理人は、このNPO法人の副理事長を務めている。不思議な巡りあわせと思う。寺本先生とは、年賀状の交換が続いていた。昨年の文面は「たわしを使った全身マッサージが日課。妻との買い物が楽しみです。まずは100歳越え、目指すは120歳。」であった。このような飄々とした賀状を頂くことももうなくなってしまった。ご冥福をお祈りします。

2.国内外の政治経済社会情勢
8月24日に、福島原発事故処理水の海洋放出が開始された。これに関連して、11月21日に都内で開催された「みんなで考える トリチウム水問題」(エネルギーフォーラム刊)の著者と語るイベントに参加した。また、12月1日には、日本科学振興協会(JAAS)の会員現手のオンライン講演会で経済産業省資源エネルギー庁の担当者による「LPS処理水の処分に係る対策の進捗と今後の取組について」のお話を視聴した。いずれも、福島原発事故処理水の海洋放出を支持・推進する方々の話であった。自分と異なる考えの方々の知りたいと思って参加したが、彼我の思いの隔たりの大きさを再確認するに止まった。
世界に目を向ければ、ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月から続く中、昨年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃し、イスラエル軍がその報復攻撃を始めた。また、昨年は地球温暖化が進み、平均気温は観測史上最高を記録した。
グローバル化が進んだ現代社会では、さまざまな要因がこれまでになく互いに複雑に関係している。このことが、世界の国々、民族、政党、行政機関、企業、国民の個々が直面する問題を解決する方策を見出すのを非常に難しくしている。その結果、人々は、将来に対する不安を募らせ、自衛策として、「金だけ、今だけ、自分だけ」の対応を選択しているように思う。しかし、このことが人々を中央集権志向へと向かわせ、個人・個性を重視する人々との間の分断を生み、更なる混乱を招いているように思う。
このような現状を変えるためには、さまざまな社会経済問題を一挙に解決する方法がないことを認識しながら、失敗を恐れず種々の改革に挑戦し、失敗が明らかになったら躊躇せず新たな改革に取り組むという試行錯誤を繰り返すしかないように思う。このような対応を人々ができるようになるためには、多くの人が、自分の「無意識の偏見」を自覚できる「豊かな想像力」に裏打ちされた「広い心」を持って他の人と協働できるようになる必要がある。このような社会が一朝一夕で実現するとは思っていないが、同じ思いの人が少なからず居ることを実感している。このことを励みとして、今後も、科学コミュニケーションなどの活動を多くの仲間とともに、肩肘を張らずに、続けていこうと思っている。

3.おわりに
今年は、新年早々、発熱して3日間ほど、寝込んでしまった。幸い、大事には至らなかったものの完全復調まで10日以上を要し、齢とともに体力が衰えているのを実感した。
今年で75歳になる。あまり出歩かず、自宅にこもって日々の想いを本ブログでじっくりと述べても良いのかもしれない。しかし、まだ、他の方々と語り合い、刺激を受ける楽しみに強く魅力を感じている。恐らく、今年も、昨年に増して、いろいろなイベントに出向くと思う。現役を退いた管理人の役割は、現役の方々のお手伝いをすることだと思っている。無理せずに、自分のできる範囲で、楽しみながらしていこうと思っている。
posted by hiroichi at 14:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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