2022年01月06日

新年のご挨拶2022

新年 明けましておめでとうございます。本年の年賀状に記載しました文章を以下に再掲し、新年のご挨拶と致します。

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謹賀新年

本年の皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

Nengajou2022tora.jpg

 これまでおこなってきた海洋科学コミュニケーションや地学教育関連の活動の他に、日本版AAAS設立準備委員会(日本科学振興協会、NPO法人認定申請中)と海洋教育学会設立準備会の活動が加わり、いろいろなオンライン会議・イベントに以前にも増して参加しています。

 近年、さまざま問題に積極的に取り組んでいる人々の間で、主義・主張・立場・経験の違いを超えた対話が成立していない場合が多くなっています。さまざまな議論を実りあるものにするためには、その場に参加する多くの人が、「豊かな想像力」と「広い心」を持っている必要があります。このような人が一人でも増えることを願って、自分に出来ることを、多くの仲間とともに、楽しく続けていこうと思っています。

令和4年 元旦

年賀状全体イメージ画像
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イラスト:
年賀状わんパグ2022無料イラストとテンプレート
年賀状イラスト 寅の土鈴3
http://www.wanpagu.com/nenga17.html

以下に、上の文面の補足として、旧年中の主な活動を振り返りながら思ったことなどを簡単に述べます。


1.旧年中におこなった主な活動
1.1 海洋科学コミュニケーション活動
 最も強く印象に残っているのは、よこすか環境教室(環境教育指導者等派遣事業)の派遣指導者として10月4日に横須賀市立久里浜小学校3年生(2クラス、各約30名)を対象におこなった各45分の授業「海と私たちの生活の関係」である。生徒に日常生活にかかわる物の中で海と関係ないと思う物を挙げてもらい、それがどのように海と関係しているのかを解説することを通して、久里浜の宝物としての「海」を考える糸口となることを目指した内容であった。
 当初は、各5名程度の小グループに分かれて、マインドマップを作成し、グループ別発表の後、管理人が解説する予定であった。コロナ感染症対策として、グループ学習ができなくなり、急遽、全体学習のみとなったが、子供たちの反応が非常に良く、実に楽しい授業となった。
 終了後、クラス担任から「知識の豊富さに圧倒されました」との感想をお聞きし、海洋学研究者が海洋科学コミュニケーション活動を続けることの意義と同時に、教員への海洋リテラシー普及活動の重要性を再認識した。
参照ウェブサイト:

 6月27日には、管理人が会員である、「子どもたちに良質な科学の本を」という思いで、1968年の創立以来、活発に活動している科学読物研究会の6月オンライン例会で「海洋学研究を始めて50年-海にまつわるいろいろなお話-」と題する講演をおこなったのも良い思い出となった。学部4回生であった1971年4月に卒業研究(課題研究)として、風波の発達機構に関する風洞水槽実験を始めてから50年の節目となる2021年に講演の機会をいただいたことに不思議な巡り合わせを感じながら、科学に強い関心を持つ約20名の会員に管理人の研究活動の概要と海洋リテラシーの紹介と、海洋に係わる質疑応答をおこなった。これまでの人生の節目に自分の研究の軌跡をまとめてお話する機会のなかった管理人にとって、このような機会をいただいたことに深く感謝している。
参照ウェブサイト:
https://kagakuyomimono.net/archives/2321 
 
 11月7日には、オンライン開催されたサイエンスアゴラ2021への日本海洋学会教育問題研究会の応募企画 No.07-B13「世界の海をめぐる流れと私たちの生活」に協力し、真水と塩水が入ったコップに浮かべた氷のとけ方の比較実験の説明と、海洋大循環、地球温暖化などの解説を担当した。昨年とほぼ同じ内容であったが、昨年の経験を活かして、実験資材を準備できていなくても視聴可能であることを強調、事前希望者には無料で実験資材を配布、実験資材を準備している参加者はプレークアウトルームで個別対応、などの参加への敷居を低くする対策が効を奏し、大幅に参加者が増えた。この対策は、多くの日本海洋学会教育問題研究会会員のアイデアを反映したものであり、企画担当者の轡田邦夫さん他の参加研究会会員の皆さんの熱意の賜物である。
参照ウェブサイト:

 その他、地球惑星科学連合主催の2021年度教員免許状更新講習の一部として8月10日と11日にオンラインでおこなわれた「海と私たちの生活」を丹羽淑博さんと、「海はめぐる-海洋科学の基礎と発展-」を轡田邦夫さん、丹羽淑博さんと担当した。これらの更新講習は、学校現場の教員の方々に海洋についての基礎知識を学んでいただくとともに、海洋学普及についての現場教員のお考えをお聞きすることを目的としておこなった。また、4月から8月には、地学オリンピック日本委員会の依頼を受けて、2021年国際地学オリンピックオンライン大会派遣生徒を対象として、過去の国際大会の海洋分野の問題について答案の通信添削指導をおこなった。2020年には国際地学オリンピック大会が中止となって通信添削指導がなかったので、2年振りであった。高校地学では海洋に関する項目についての詳細な教育がほとんどおこなわれていない。このため、約2000名が参加した国内選抜試験で優秀な成績を修めた派遣生徒4名でさえ、国際基準の海洋に係わる知識を十分に理解する機会が与えられていない状況である。このような状況を少しでも改善するために、この通信指導を引き受けた。

1.2 地学教育活動
 管理人の地学教育活動の場は地球惑星科学連合教育検討委員会である。
 6月5日にオンライン開催された地球惑星科学連合2021年大会ユニオンセッション14「変動する地球に生きるための素養を育む地球教育の現状と課題」では、代表コンビーナを務め、総合討論の司会を担当した。このセッションは、管理人も原案作成に係わり、2020年6月23日に日本学術会議HPで公開された提言「初等中等教育および生涯教育における地球教育の重要性:変動する地球に生きるための素養として」のフォローアップの一環として、地球教育を担う地学・地理学分野の初等中等学校教員の養成・採用制度や知識・技能の自己研鑽などに関し、その現状と課題についての議論を深めることを目的として、教育検討委員会教員養成等検討WGが企画したものであった。
参照ウェブサイト:
https://confit.atlas.jp/guide/event/jpgu2021/session/U14_5PM1/class

 地球惑星科学連合教員免許状更新講習事業では、8月に5件、9月に1件、12月に2件の合計8件(対面3件、オンライン5件)の更新講習を開設し、延63名の受講申込があった。2020年度の4件の開設、延32名の受講申込から倍増した。管理人は、前述の2件の更新講習の講師を務めた他に、教育検討委員会更新講習担当グループの一員として、各更新講習の開設認可申請、受講受付、講習立会、履修証明書原案作成などの業務を担当した。
 教員免許状更新講習制度については、講習内容や教員の負担が大きいことなどへの批判があり、2022年度に廃止される見込みであるが、地球惑星科学連合が開設する更新講習は地球惑星科学分野の研究者が担当講師となって最新の研究成果などを紹介する内容で、受講者からも高い評価を受けている。事業担当の負担は小さくはないが、更新講習は研究者と学校現場教員を結ぶ貴重な機会となっており、各講習に立ち会った際には、地球科学の他の分野のさまざまな情報を得ることができた。教育検討委員会では、免許状更新講習制度の廃止後も、現場教員の地球惑星科学分野の教育支援と知識更新のための研修事業として続けることを検討している。これは、上述のユニオンセッションでの議論の結果に応えた事業にもなると考える。
参照ウェブサイト:
http://www.jpgu.org/koushin2021/

1.3 日本版AAAS設立準備委員会
 日本版AAAS設立準備委員会の立ち上げが検討されていることを知人から紹介され、一昨年11月に委員会の賛同者になった。AAAS(米国科学振興協会、American Association for Advanced Science)は、一般には、学術誌「Science」を刊行している団体として知られていると思われるが、科学政策の提言などの活動を活発に行っている一般市民も参加している団体である。2月に準備委員会が正式発足し、同時に委員(ワーキンググループ)の募集が始まったので、早速、広報・アウトリーチWG委員を申請し、3月から広報・アウトリーチWG組織内広報ユニット所属委員になった。準備委員会では、日本版AAASの正式発足後の名称、設立趣意書、規約、組織・会費などについてのオンライン会議が頻繁に開催され、12月にはNPO法人日本科学振興協会(JAAS)の認可申請まで進んだ。現在、認可された後に開催するイベントなどが検討されている。準備委員会は約100名の委員で構成されているが、その中には、管理人のこれまでの科学コミュニケーション活動の中で知り合った多くの人が含まれている。その他に、様々な分野の研究者のみならず科学技術に関心を持つ多様な人々が参加しており、準備委員会活動を通して、数多くの方々と知り合いになることができ、予想以上に楽しく実りある活動となった。

 これまで、準備委員会内の各WGによって、委員のみを対象とした委員間交流イベントの他に、委員以外の人をも対象にした公開研究会、意見交換会が多数、オンラインで開催され、参加した。特に、全6回中の4回の意見交換会では、全体会合・話題提供の後に用意された小グループ別意見交換で司会・進行を務めた。また、11月24日に行われた第31回委員間交流イベントでは、「大学改革方向性検討①大学法人化を振り返る」と題する話題提供をおこなった。その他に、「10兆円規模の大学ファンドに対する提言(案)」の作成などに係わった。これらのイベントでは、様々な人と科学について語り合いことができ、充実した一時を過ごすことができた。
参照ウェブサイト:
https://jaas.group/
https://jaas.group/220104/

1.4 海洋教育学会設立準備会
 2月11日に開催された第8回海洋教育サミットの特別セッション「海洋教育研究のネットワーク構築に向けて」で「日本海洋学会および日本地球惑星科学連合(JpGU)における海洋教育活動」と題する講演をおこなった。このセッションの延長で、6月19日に第1回海洋教育学会設立準備会がオンライン開催され、設立趣意書案や今後の予定などが検討された。管理人は、これまでの海洋教育普及活動の延長として、海洋教育学会設立準備会に積極的に協力することを決意して第1回会合に出席したものの、その後の、第2回(7月31日開催)、第3回(11月23日開催)、第4回(12月25日開催)準備会会合には、他の予定と重なったため欠席した。その中で、海洋教育学会誌準備号編集委員会委員の募集があり、学会誌の充実、質の保証を通して海洋教育学会の確立に貢献したいとの思いから応募した。結局、第3回準備会会合で管理人の編集委員就任が他の4名とともに承認され、その後、編集委員の互選で海洋教育学会誌準備号編集委員会委員長に選出された。今後、準備号の編集・刊行作業の他、投稿規定案の作成、J-STAGEへの登録などを通して、海洋教育学会の確立と発展に微力を尽くしたいと思っている。
 
1.5 国際津波防災学会津波防災対策検討分科会
 国際津波防災学会津波防災対策検討分科会の共同幹事を分科会が2019年10月に発足した時から務めている。2月27日、4月6日、6月10日、9月17日、12月14日に分科会会合を開催し、「地区住民による津波防災対策計画立案のための手引き(原案のガイドラインを変更)」の目次の詳細などについて意見交換をおこない、7月9日には、"津波対策は地区住民のために! 「地区住民による津波防災対策計画立案のためのガイドライン」第2回公開検討会" を開催した。また、11月2日には、国際津波防災学会第5回総会で本分科会の過去1年間の活動を報告した。これらの活動は共同幹事の濵田英外さん他、分科会会員の皆さんの協力なしには実現しなかった。
 現在、次回公開検討会の2月開催に向けて準備を進めている。「手引き」の全体構想とその詳細は固まりつつあるが、分科会会員が増えず、その刊行への具体的な道筋を明確に定めることが出来ていないのが課題である。
参照ウェブサイト:
https://sites.google.com/view/tsunami-guideline/

1.6 その他
 上に述べた活動以外にも、科学コミュニケーション、科学教育などに係わる様々なオンラインイベントに参加した。これらの各々については、以下の管理人個人ウェブサイトの各ページを参照されたい。
2021年のイベント参加記録
2021年の講演記録

2.議論を実りあるものにするための対話
 近年、コロナ対策、景気対策、地球温暖化対策、福島原発処理水の海洋放出問題、科学技術政策、その他のさまざま問題に積極的に取り組んでいる人々の間での議論が盛んに行われている。様々な人が自分の考えを積極的に公表する状況は、公表が抑圧されている状況よりは格段に望ましいことである。しかし、SNSなどでの発言・議論を見聞きしていると、相手の主張を聞き流しているだけで、互いに相手の主張を理解し、双方の各々の不十分な点を補った、より良い解決方法を見出すための議論・対話にはなっていない事が多いように思う。
 実りある議論・対話が成り立つためには、その場に参加する多くの人が、「豊かな想像力」と「広い心」を持っている必要があると思う。ここで、「豊かな想像力」とは、相手の主張の背景・根拠に思いを馳せ、理解しようとする心の働きであり、「広い心」とは、自分の主義・主張・価値観に拘らずに、相手の主張が正当であることが判明した場合には相手の主張を受け入れても良いという態度である。管理人は、この「豊かな想像力」と「広い心」を持つ人が一人でも増えることを願って、「科学の営み」についての理解を深めるための科学コミュニケーション活動をおこなってきた。それは、「科学の営み」が、経験知についての共通理解を深めるために時空を超えておこなう合意形成のための活動であり、「豊かな想像力」が仮説検証の源であり、「広い心」が新説受容の根幹であるためである。

3.おわりに
 昨年は、新型コロナウイルス感染症流行という事態をそのまま素直に受け入れながら、日常のほとんどをネット空間で過ごした。コロナ禍により、多くの方が経済的打撃を被ったにもかかわらず、十分な補償が適切に支給されず、弱者救済が不十分であることには、強い怒りを感じている。一方、コロナ禍でさまざまなオンライン・イベントに参加する機会が格段に増えたことは喜ばしい変化であった。コロナ禍以前には不可能であったが、1日に開催場所が遠く離れた複数のイベントに参加するのも可能になった。ただし、オンラインで開催された各種イベントに参加して、その限界も感じている。例えば、イベント終了後に参加者が登壇者と個人的に会話する機会がない、参加者同士の個人的会話の機会がない、ということから、イベント後に人的つながりの輪が広がる機会があまりないことを、残念に思っている。

 11月下旬には、約1年半振りに旧知の方々10名と飲食を共にした。また、12月上旬には、それまでオンライン会議でしかお話しした経験のない8名の方々と飲食しながら交歓し、リアルに集まって言葉を交わすことの楽しさを再確認した。10月以降に流行が下火になったものの、その原因が不明であり、最近ではオミクロン株の市中感染者が急激に増加していることから、今暫くは、ある程度の感染回避行動が必要だと思っている。どんなに注意しても、感染する時は、感染するということを覚悟はしているが、必要以外に外出しない、外出時にマスクを着用する、帰宅後に手を洗うことを守ろうと思っている。 

 今年は、昨年にも増して、多忙な毎日となると予感している。幸い、今のところ、健康には恵まれているが、老化は確実に進行している。無理せずに、出来ること、やりたいことだけをして、日々を気楽に楽しく過ごしていきたいと思っている。

posted by hiroichi at 15:30| Comment(1) | 日記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
2022年03月18日 04:06にakiさんから
中国による尖閣侵攻危機と、憲法改正の必要性を知って下さい
と題するコメントが投稿されましたが、本ブログと無関係な内容でした二で、削除しました。
Posted by 管理人 at 2022年03月19日 01:07
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