このため、1月のツイート発信件数は30件にとどまった。その中で、ツイートを見たユーザーの数(インプレッション、2月5日現在)が上位を占めた3件のは
1月11日 日本学術会議主催学術フォーラム「安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場」の開催情報
1月13日 国立大運営費交付金の再配分に関する朝日新聞記事へのコメント
1月20日 「海洋酸性化」に関する毎日新聞記事の紹介
であった。以下はこれらのツイートへの補足など。
参照:
twilog:http://twilog.org/hiroichik
拙ブログ記事:
2007年02月04日 訃報 杉ノ原伸夫センター長
2012年05月02日 故川辺正樹さんを偲ぶ
1.海洋酸性化
第1位は毎日新聞を見て1月20日に発信した以下のツイートだった。
hiroichik / 市川洋,Hiroshi Ichikawa
まだまだ一般に知られていない「海洋酸性化」に関するニュース。旧知の宮澤さんと小埜さんの談話が掲載されている。 / “海洋酸性化:日本沿岸で進む CO2上昇、陸の汚染物質影響か - 毎日新聞” https://t.co/GrWg2yraeB at 01/21 02:24
そのインプレッションは3157であった。
海洋学会幹事会他で懇意にしている小埜さんと「海の研究」編集委員会でご一緒している宮澤さんのお名前が出ていたので思わずツイートしたが、思いもよらず、大きな反響を呼んだ。
記事では「東京都内で19日に始まった海洋酸性化のシンポジウム」としか示されていないシンポジウムは1月19・20日に公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所が主催した「温暖化・海洋酸性化の研究と対策に関する国際会議 ~西太平洋におけるネットワーク構築に向けて~」シンポジウムである。
ツイートで「まだまだ一般に知られていない」と付したのは、このシンポジウムに関わっておられる角田智彦さんが海洋政策研究所ブログ「海のジグソーピース」 No. 14(2017年01月18日付け)での、
まだまだ一般の方々には知られていません。英国の研究機関が一般市民向けに行った調査では、海洋ゴミの課題を知っている人が90%に対して、海洋酸性化の課題を知っている人は1%に過ぎませんでした。
という記述が心に残ったためである。
拙ブログの以下の記事他でも海洋酸性化について言及しているので、海洋酸性化という言葉はそれなりに知られていると思っていた。
拙ブログ記事:
2009年11月21日 北極海の酸性化進む
2008年10月19日 アカチョウチンクラゲと海洋の酸性化
2.国立大運営費交付金の再配分
第2位は朝日新聞記事とその元となる文部科学省の関連資料を見て1月13日に発信した以下のツイートだった。
hiroichik / 市川洋,Hiroshi Ichikawa
金額ベースでは、+約5千万円から-約3千万円。このために費やされた各大学の教員、事務担当者の時間・労力を思うと、大学の活性化を目指す制度とは、とても思えない。 / “京大↑、一橋大↓ 国立大の交付金再配分、評価結果公表:朝日新聞…” https://t.co/u7nuiqB0rp at 01/14 00:37
そのインプレッションは1820であった。
朝日新聞の記事を読んで、友人が関係する大学の結果が気になり、記事の元ネタを探した。
文部科学省の関連資料は、1月12日付け報道発表
平成29年度における国立大学法人運営費交付金の重点支援の評価結果について
であった。そこでリンクが張ってあった
各大学の評価結果(詳細)(PDF:2721KB)
に各大学の詳細が公表されていた。
この資料には、各大学別に設定した複数の「戦略」の各々に設けられた「評価指標」
について、その
「基準時点」、「基準値等」、「目標時点」、「目標値等」
が示され、それぞれについて、
①基準値等が明確か、②目標値等が明確か、③戦略の達成状況を測る指標として適切か、④水準の妥当性、⑦進捗状況等、の評価結果、
と、各戦略別の
⑤構想全体と中期目標・計画との関係性、⑥構想全体と3つの枠組みとの関連性、戦略の評価結果
が示されている。
各大学の「戦略」、「評価指標」、「基準値等」、「目標値等」の各欄の記述を読むと、その作成に費やされた関係教職員の膨大な時間と気力が思いやられる内容である。
この内容を見た後に、記事の後半に記載されていた
金額ベースでは、最も増えたのが京都大の約5千万円、最も減ったのが広島大の約3千万円だった。
という文を読んで、思わず「大学の活性化を目指す制度とは、とても思えない」とツイートした。
自己改革を怠ってきた各大学に問題があるのは確かだが、それにしても、各大学の教職員を疲弊させるだけの制度にしか見えない。運営交付金の増額を声高に求めるのではなく、限りある財源を有効に活用するため、長期的な視点に立った大学運営の指針を国大協で作り上げるのはもう無理なのだろうか?
3.軍事研究
第3位は某学会から配信されてきた学術会議ニュースを見て1月11日に発信した以下のツイートである。
hiroichik / 市川洋,Hiroshi Ichikawa
FYI 日本学術会議主催学術フォーラム 安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場 2月4日(土)13:00~17:00、日本学術会議講堂、事前登録制 / “日本学術会議主催学術フォーラム「安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場」” https://t.co/0QMvgVmWHn at 01/12 01:32
そのインプレッションは714であった。
4日午後に開催されたフォーラムは、早速、毎日新聞ウェブサイトの「<学術会議>「軍事研究拒否」声明堅持を 都内でフォーラム」と題する記事ほかで報じられている。
戦前の科学研究のあり方への反省から、あるいは戦争に反対という素朴な平和主義から、学術会議が大学などにおける軍事研究を容認しようとする動きに危機感を感じる人は多い。このために、本ツイートが多くの人の目を引いたのだと思う。
管理人は、理想論すぎると重々、承知しているが、科学技術研究の使命は人々の幸せのためにあると考えており、自衛のためとはいえども人を攻撃・殺傷することを目的とする武器の開発に直接的に係る技術開発研究に従事することは感情的にできない。また、一般の大学の理工学分野において軍事研究がおこなわれることについては、人々の尊厳の源としての学問の自由を守ろうとしてきた大学の存在理由を危うくするものであると思う。なお、軍民共用の科学技術の開発研究であっても容認できない。それは、軍民共用とは、民生用のみではなく、必ず軍用でもある成果が求められるからである。しかし、国立研究機関が国家戦略の一環として、防衛予算の中で軍事研究をおこなうのは、当然のこととも思っている。国が政策として、軍事研究を推進するのであれば、大学には民生品の開発研究に専念させ、別途に、政府独自の研究開発組織や民間への委託を充実させ、大学などで民生用に開発された機器の軍用への転換技術開発をおこなうので良いように思う。大学における一般研究経費を削減する傍らで、防衛予算で大学人を巻き込んで軍事研究を進める、という科学技術の振興を妨げる政策を学術会議が容認することには、反対である。
海洋学研究者にとって、軍事研究費との関係は非常に微妙な問題である。それは、研究対象である海そのものが軍事行動の場であり、海に関する情報の多くは、軍事情報でも有り得るからである。例えば、古くは、沿岸の深浅図や潮流情報は重要な国家機密であった。海中の水温分布は海洋学研究において重要な情報であるが、水温分布は海中での音波伝播経路をきていするため潜水艦の運航のための重要情報にもなっている。海洋観測機器の中で利用されている水中音響技術他の先端技術は軍事技術でもあることが多い。また、第2次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦成功の裏には、風波の予報に関する研究成果が重要な役割を果たしていた。かって米国における海洋研究の経費の6割が米国海軍予算で賄われていた。このことが米国内の海洋研究者の間でも問題視する動きがあった。海洋観測機器の最大の購入機関は米国海軍であり、このことが米国における海洋観測機器開発販売企業の経営を成り立たせているとともに、学術研究のための機材の価格が低い理由ともなっている。我が国での軍学の壁のために、海上自衛隊が取得している膨大な海洋観測データが学術研究に提供されないという問題もあった。
4.おわりに
世界の海はつながっている。一国のみで海洋研究をおこなうことはできない。海底地下資源調査はもとより、洋上の海洋観測を国際紛争海域ではおこなうことは不可能である。このため、最近では東中国海の観測が十分に行えない状況である。この意味で、海洋学の発展は、平和な世界でしか成り立たない研究分野である。自然現象についての理解を深め、自然災害から人々の命と暮らしを守るためには、一国ではどうにもならない。国際協力しかないと考える。