不思議な見出し。本渡瀬戸他での潮位偏差は半日周期変動。 / “「大潮と満潮が重なり海水が岸壁越える 熊本・天草市」 News i - TBSの動画ニュースサイト”とTwitterでツィートした。「不思議な見出し」とつぶやいた理由を、拙ブログの記事「8月23日のつぶやき」の追記で述べた。以下は、この追記の再掲と図を用いた補足説明。
1.追記の再掲
以下に、拙ブログの記事「8月23日のつぶやき」の追記部分を再掲する(赤字部分は修正箇所)。
既にNews i - TBSの動画ニュースサイトの該当記事へはリンク切れ。my j:com http://news.myjcom.jp/video/story/2006851.htmlに残っていた全文は以下の通り
大潮と満潮が重なり海水が岸壁越える 熊本・天草市大潮は約15日周期で干満差が大きくなる時期であり、満潮は約半日周期で潮位が高くなる時間帯であって、「大潮と満潮が重なる」のは、異常ではない。したがって、「大潮と満潮が重なり海水が岸壁越える」という表現は不正確。正確には「連日猛暑日が続き(、大潮期の満潮時に)海水が岸壁越える」であろう。ただし、海水温の上昇の影響ならば潮位偏差(天体から予想された潮位と実測潮位の差)は終日大きいはずだが、本渡瀬戸他での潮位観測情報に示される潮位偏差は日平均が正であることに加えて、半日周期変動をしており、さらに副振動も大きい。このことは、海水が岸壁を越えたことには、連日猛暑日が続いたことだけではなく、副振動も関係していることを示している。
TBS JNN News i - 8月23日(金) 0時7分
高温注意報が出されている熊本県天草市で、22日午前8時過ぎ、海水が岸壁を乗り越え道路が冠水する被害が出ました。
大潮と満潮が重なった午前8時20分の最満潮時には、岸壁から10メートルほどが海水に浸かりました。これは、連日猛暑日が続き、海水の温度が高くなり、暖められた海水が膨張して潮位が高くなったもので、大潮が終わる24日までは警戒が必要です。(22日23:55)
この報道の元ネタは次ツィートで述べている熊本地方気象台発表の「大潮による高い潮位に関する熊本県潮位情報 第1号」を参考にしているようであるが、この潮位情報を十分に理解していないことが、この奇異な記事となったと思われる。
拙ブログ関連記事:
2008年07月21日 海面上昇と干満差
2009年03月01日 副振動は環境破壊とは関係ない
2.補足
追記の
海水温の上昇の影響ならば潮位偏差(天体から予想された潮位と実測潮位の差)は終日大きいはずだが、本渡瀬戸他での潮位観測情報に示される潮位偏差は日平均が正であることに加えて、半日周期変動をしており、さらに副振動も大きい。という表現は分かりにくいかもしれない。このため、以下に、気象庁のウェブサイトにアクセスして作成した海水の岸壁越え当日の8月22日と、その前後の8月21日と23日の本渡瀬戸において観測された潮位(上)と潮位偏差(下)の変動を示す。
潮位偏差の変動図は、潮位偏差の21日、22日、23日の各々の日平均値が約13cm、10cm、8cmと正の値であること、すなわち潮汐に関係なく持続する高い海面水温に伴う膨張により天文潮位(月と太陽の運動と過去の潮位観測結果から予報される潮位)に比べて実測潮位が約10cm高かったことを示している。
他方、潮位偏差変動成分では、変動幅が10-15cmの半日周期変動成分と変動幅が5-15cmの約1時間周期の変動が卓越している。これらの変動幅が日平均値と同程度であることは、「岸壁越え」の原因が海面水温のみでないことを示している。
潮位偏差変動の半日周期変動成分は干潮時に最大、満潮時に最小となっており、この変動成分が「岸壁越え」の原因ではないことを示している。潮位偏差変動の半日周期変動成分の成因としては、潮流によって運ばれてきた海水の温度が関係している可能性があるが、管理人には良く分からない。これに対し、潮位偏差変動の約1時間周期変動成分の変動幅は22日9時前後には約7cmとなっている。
これらのことから、熊本地方気象台発表の「大潮による高い潮位に関する熊本県潮位情報 第1号」での「この期間中に台風や低気圧が接近・通過した場合や、海面が短時間に昇降を繰り返す副振動の発生等があった場合には、さらに潮位が上昇する可能性があります。」という記述の通り、22日の「岸壁越え」には、連日猛暑日が続いたことだけではなく、副振動が関係していたということになる。