この震災発生にともない、3月22日から26日に東京大学柏キャンパスで開催予定であった日本海洋学会2011年度春季大会と関連行事は全て中止となった。しかし、27日に品川で開催する予定であった「第7回海のサイエンスカフェ」は、開催日時と場所はそのままで、内容を「東北関東大震災にかかわる海洋の科学を考える」に変えて実施することにした。その概要は以下の通りである。
東北関東大震災と福島原子力発電所事故の発生を受けて、これらと海とのかかわりについて解説するとともに、海洋学研究に携わる者と一般の方々との間で、海洋学研究を含む科学研究や、海洋リテラシーを含む科学リテラシーの普及・教育活動の今後のあり方について意見交換を行う。海洋学会員と一般参加者が、今回の事態を契機に抱いた色々な思いを語り合い、ぶつけ合う場としたい。まだ数多くの行方不明の方がおられ、復旧作業が進行中であって、福島原子力発電所事故対策で多くの方々が苦闘している時点で開催を決定することに迷いがありましたが、このような時だからこそ、研究者と非研究者が語り合うことが必要と考え、開催することにした。以下は、その詳細。
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2011年03月07日 「第7回海のサイエンスカフェ」他のご案内
1.第7回海のサイエンスカフェ
実施要領の詳細は以下のウェブサイトを参照
http://coast14.ees.hokudai.ac.jp/osj/science_cafe/20110327.htm
交通事情などの状況によっては、開催を中止する可能性があります。事前申込は不要ですが、中止の連絡を必要とする方は、ウェブサイトの申込フォームによる事前申込をお願いします。
「語り合う場」としては「サイエンスカフェ」よりも「談話会」が相応しいとも思ったが、今回は、「サイエンスカフェ」の「科学の普及の場」という面よりも、「研究者と非研究者の間の双方向の形式ばらない会話の場」という特徴を重視して、「海のサイエンスカフェ」を開催することにした。
2.何故、3月27日に開催するのか?
今回の大震災と福島原子力発電所事故発生を受けて、多くのイベントが中止された。大規模なイベントを中止するのは計画停電や交通機関の運行状況および節電のためにやむを得ないと思う。当面は復旧活動に集中すべきであり、中・長期的な対応策の議論は復旧活動が落ち着いてからにすべきとの考えもある。
このような状況で、海洋学研究者の一人として何が出来るのかを考えた。その結果、僭越とは思うが、復旧・復興活動に取り組む活力源としての心意気を高める活動の一つとして、ささやかなイベントではあるが、「海のサイエンスカフェ」を予定通り開催しようと考えるに至った。
このように考えた主な理由は、「海のサイエンスカフェ」のような小規模なイベントまで中止することは、意気消沈と活力減退を招き、今後の復興の長い道のりを考えると、望ましいことではないと考えたことである。
3.何を語り合うのか?
管理人が、今回の事態を契機に抱いた思いは、以下の通りである。
・今回の大震災の被害が甚大であったことと原子力発電所事故の発生が、人々が科学への不信を募らせているのではないかとの危惧から、人々に科学研究の限界や事情を親しく説明したい。
・原子力発電所事故についての報道や人々の行動・発言から、陰謀論やデマに惑わされない懐疑主義的な態度や科学的な考え方の普及について、皆と話し合いたい。
・自然の驚異の前にして、これからの海洋科学研究について、人々は何を望んでいるのか、研究者は何が出来るのか、を語り合いたい。
この他のことを含めて、参加者全員が今の状況で感じていること、」考えていることを親しく語り合いたいと思っている。進行担当者としては、話が拡散して、収拾不能とならないようにしたいと思うが、そうなったら、なったで、今後につながる議論が出来れば良いと思っている。
4.おわりに
本サイエンスカフェの最終調整中の18日に日本学術会議緊急集会「今、われわれにできることは何か?」が開催された(その案内状のリンク先)。
この集会内容が以下のサイトでまとめられている。
Togetter - 「日本学術会議緊急集会「今、われわれにできることは何か?」」
ご一読を推奨する。
今回の事態に対しては、学術会議という全学術分野を含む大きな組織の活動とともに、本サイエンスカフェのような種々の小規模な活動の積み重ねも必要だと思っている。今回の大震災と原発事故について、研究者に尋ねたい、研究者と語りたい、と思う方々は是非ご参加下さい。遠方で、ご参加できない方は、「第7回海のサイエンスカフェ」のウェブサイトの質問欄あるいは本ブログ記事へのコメントをお願いします。
気になるのは、コリオリの力で汚染海域の広がりがどのようになるのかということです。テレビなどでは南に流れる親潮は黒潮にぶつかってやがて東の太平洋沖に流されるだろうという解説をよく聞きますが、福島原発は東海岸なので南に流れる海流は想定以上に海岸にへばりついて意外と沖合に去らず、房総半島を海岸沿いに南下するのではないと思うのですが、先生はどう思われますか。
ご質問をありがとうございました。
新エントリーでちょっと言及していますが、黒潮が犬吠崎から離れているときには、福島東岸の沿岸流は伊豆大島まで南下することがあります。これは、コリオリの効果というよりは、黒潮のような海流が岸近くを流れているときに、その岸側に必ず現れる沿岸反流と同じく、海底地形と粘性の影響だと私は考えています。