静かで波もまったくない海の表面にできる模様はどうしてできるのか「はっきり」とお教えするのは難しいが、以下に回答を試みる。
私は小さい頃から海辺で生まれ育った
そして小さい頃から疑問だった
静かでまっ平らな海の表面にはいつも何かしらの模様がある
私が思うにそれらは海水温の違いや海流が織り成すものだとは思うが、そこをはっきりと教えてもらいたい
1.「お蔵入り」の経緯
質問は日常での海の観察に根差した良い質問のように思うが、適切な回答がなく、「お蔵入り」になってしまった。その経緯を該当ページから以下に再掲する。
回答1(匿名):
あなたの心が創りだすのですね。
回答2(丸い卵も切りよで刺客):
0.000数%の油分では。魚類、人間がの出したものだと思います。尾瀬にも植物の油が模様を作ってます。
コメント1(p\df):
魚が躍ってるんだよ。
コメント2(kenta2hrn):
遠く太平洋(日本海)上の風の影響等で出来た波の残りです。
*非体感地震や遠くの工場や自動車移動等の振動も影響しているかもしれません。
コメント3(ohba_come_on):
私の心が創りだすのでも、魚が躍っているのでもありません。魚の大群が群れて波のようになっているのとはまったく違うものです、それは時に見ることもありますが。その海の模様はいつでも波がなく静かなときは必ず誰にでも見ることができるものです。
コメント4(p\df):
>海水温の違いや海流が織り成すものだとは
これは波だよな。海水が流れるから できるのは 当然
コメント5(ohba_come_on):
油分である可能性もありません。遠く太平洋上の風や工場の振動によるものでもないと思います。
静かなほとんど波のない海を皆さんはご覧になったことがないのかな、そういう海には必ず海の表面に,それは広い意味での波?の、模様ができているのです、しかしそれを波の一種と呼んでよいものか、普通の波とはまったく違うものですが、百歩譲ってその波のようなものがどうしてできるのか、そのところのメカニズムを知りたいのです
コメント6(ohba_come_on):
この分だとこの質問もお蔵入りになってしまうのかな。
静かな海を見てみれば誰だってそこには通常の波とは違う模様が見て取れて、あれはどうしてだろうと思うはずだと思うのだがな。
こうして回答およびコメントを見ると、多分、質問の意味が十分に伝わっていなかったのではないかと思う。管理人も、この質問でいう「静かでまっ平らな海の表面に見える模様」とは「どのような現象を示しているのか、ちょっとイメージがわかなかった。場所、広さ(幅と奥行き)、持続時間などが具体的に記述されていないため、回答1は論外であるにしても、回答2、コメント1、コメント2で想定している現象の空間的な大きさは全く異なってしまっている。
管理人は「静かで波もまったくない海の表面」という表現から、質問者は、鏡のようにのっぺりとした、波が全くない海での海面現象のことかと思ったが、コメント5と6を読んで、「普通の波ではない」ということであり「波が全くない状況」ではないことが初めて分かった。多分、以下の写真のような海面に白っぽいところと黒っぽいところがあることを言っているのだ思われる。そうすると、答は以下のようになる。
2.海の色
海岸(船上)から見える海の色は、太陽からの光(種々の色が混ざった白色光)と空からの光(青い空からの青色光と雲からの白色光)の一部が海面で反射した光と、太陽と空からの光が海面下の海水で吸収された後、海面から放射される光が合わさったものである。海面で反射した空からの光は青色系のために海は青く見える。また、長波長の光(赤色系)は短波長(青色系)の光に比べて海水に吸収され易いために、海中からの反射光が青色系となることも、「海が青い」原因である。
海面下の海水中に、色を持つ物質(プランクトン、泥、など、ある特定の色の光を反射する物質・粒子)があると、海水(海面の色)も、その物質の色に応じた色に見える。赤潮は赤いプランクトンの死骸を異常に多く含む海水である。大雨の後の河口付近では、泥水を多く含む河川水と海水が混じり、海は茶色、黄色、緑色に見える。
日本近海を流れる海流の一つである黒潮が運ぶ表層の海水にはプランクトン類が少なく、泥を含む沿岸からの水も少ない。この結果として、太陽と空から黒潮表層に入射した光の多くは海面上に反射されることなく、海中に吸収されてしまう。この結果、光を反射しない黒潮表層は黒く見える。これが「黒潮」と呼ばれる理由である。
海面が滑らかな場合には、太陽と空からの光がそのまま反射するので、太陽の方向の海は光輝いてまぶしいくらいに白っぽく見える。他方、太陽と反対側の海、あるいは雲によって太陽の光がさえぎられている海からは太陽の光が反射してこないので黒っぽくみえる。ただし、海面に「さざ波」があるときには、太陽からの光が波面から反射して白っぽくみえる。ウネリが岸近くで砕けたところで砕けた波頭が白く見えるのは、太陽と空からの光が乱反射するためである。
3.海面の模様
質問にあった「静かで波もほとんどない海の表面にできる模様」は、おそらく、海面下の海水中の有色物質や太陽の向きとは関係なしに、海面の明るい所と暗い所が時々刻々と変化している現象を指していると思う。この現象は、上の説明の最後で述べた「海面に「さざ波」があるときには、太陽からの光が波面から反射して白っぽくみえる」ことが大きく関係している。
「さざ波」は海上に風が吹くとどこでも生じると思われているかもしれない。しかし、実際には、そよ風がふいても「さざ波」は発生しないのである。「さざ波」は対水風速(海面での流速に対する相対的な風速)が毎秒3mを超えると発生し、3m以下では速やかに減衰する。このことから「静かで波もほとんどない海の表面に模様ができる」仕組みは以下のように説明される。
1)風の息
海上を吹く風の強さと向きは絶えず変動している。風が強く吹く海面には「さざ波」が発生して海面は白っぽく見え、風が弱い海面では「さざ波」が発せしないため、黒っぽく見える。風が強く吹くところが時間とともに変化することにともなって、白っぽく見えるところも移動する。
2)表面の流れ
同じ風が吹いていても、その風の向きと海面表層の流れの向きと強さが異なれば、対水風速は異なる。同じ風が洋上を吹いていても、表層流の向きが風下を向いているときには、相対風速は小さくなり、風上を向いているときの相対風速は大きい。このとき、相対風速が限界速度(毎秒3m)を超える海面では、「さざ波」が発生し、白っぽく見える。
潮汐や沖合の流れの影響を受けて、海岸付近の流れはによって時々刻々と、複雑に変化する。この流れによって、たとえ空間的・時間的に一定な風が海上を吹いていても、海面の「さざ波」の状況はことなり、その結果、海面の色(白っぽさ)に濃淡が現れる。
表面の流れによる海面の状況の違いは、流速がその周辺で逆向きまたは大きく異なる「潮目」で顕著である。潮目付近では「さざ波」の状況が異なるばかりでなく、プランクトンが集積し、魚が集まっている場合も多い。
3)Sun Glitter
ウネリは波長と周期が長い波であり、ゆるやかな海面の動揺程度にしか認知されない場合もある。このようなウネリによって海面の傾きが微妙に変化し、その結果、太陽と空からの反射の強度が異なって、海面の色(白っぽさ)に濃淡が現れることもある。「さざ波」の発生状況を含めて、特に太陽光の反射による海面あるいはその他(例えば、砂浜など)の表面に濃淡が見られる現象を「Sun Glitter」と呼ぶ。スペースシャトルの窓から太陽の反射で光輝く海面を写した写真に複雑な渦状のSun Glitterを示す写真を見たことがある(ネットで探したが適当なのが見つからなかったので、以下に関連画像のリンク先を示す)。
http://optics.kulgun.net/GlitterPath/
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Fata_Morgana_of_waves_and_sun_glitter_2.jpg
4.おわりに
ohba_come_onさんの「静かな海を見てみれば誰だってそこには通常の波とは違う模様が見て取れて、あれはどうしてだろうと思う」というのは大事な視点だと思う。その仕組みは上に述べたように、結構、奥が深い話ではある。今度、静かな海面(湖面)を見た時に、本記事を思い出して頂けたら、幸いである。
拙ブログ関連記事:
2007年08月26日 「どうして海の波はたつのか」の補足
ありがとうございます