2010年6月9日01時45分 一部訂正、追記
2011年2月27日21時45分 一部訂正
昨年11月末頃からいくつかの新聞で「 風力発電施設の風車の回転などで出る「低周波音」と呼ばれる音波が、人間の健康に及ぼす影響を検証するため、環境省は来年度から初の大規模調査に乗り出す(読売新聞2009年11月29日、ウェブ魚拓はここ)」という報道があり、ようやく被害住民の声に応える動きが始まったと内心、喜んでいた。このことを拙ブログでも取り上げようと思っていたが、詳細に論ずるのに十分な時間を確保できず、断念していた(このことは、拙ブログ2010年4月5日付け記事の冒頭でも書いていた)。そうこうしている内に、定期購読している月刊「むすぶ」の5月号で「風力発電の現場から、4月30日風力発電を考える全国集会報告」が特集された。一読して、環境省の調査が大きな問題を含んでいることを知った。専門外ではあるが、以下に
1.風力発電問題
管理人が風力発電問題を知ったのは、月刊「むすぶ」の第454号(2008年11月号)で低周波騒音公害の源の一つとして風力発電があるという記事を読んだ時である。低周波騒音公害のことを初めて知ったのは、心茶会の先輩でもある汐見文隆さんのお話しが月刊「むすぶ」の前身の「月刊地域闘争」に掲載されていたのを見つけた頃だったと思う。汐見文隆公式サイト「低周波音公害を語る」には1994年に晩聲社から「低周波公害のはなし」という本を出版されていることが記載されており、それ以前だったかもしれない。低周波公害の詳細は
発信することが必要です。発信のない被害は無いのと同じです。公的発信のない”秘密情報”は無いのと一緒です。汐見さんと矢田野鴉さんの他に、ブログ「機能安全と安全工学、危険の管理 対 安全の管理」でブログ主のrakuinkyoさんがその2009年7月01日付け記事「クタバレ!騒音工学よ~~風力発電機の騒音公害」その他で欧米の「風力発電機の騒音規制」の紹介と我が国の状況の批判などを述べておられる。また、ブログ「気象・歳時・防災コラム」でブログ主のTwisterさんがその2010年1月29日付けの「風力発電の行方(低周波音害、バードストライク…) 」と題する記事で「稼動施設の近隣住民からは低周波音(振動)による健康被害の事例も多数報告されてい」ることをと紹介している。さらに、2010年4月30日発信のTwitterでtawarayasotatsuさんは
もちろん、紙の媒体(書籍、パンフ、チラシ等)は確実ですが、金が要ること、配布範囲が狭いことなどが決定的な欠点です。従って、いわゆる「浮動票」に働きかけることは出来ません。ネット上の情報は不確かなモノも少なくないのですが、それなりの信頼性が有れば定期的なアクセス数が増えます。これは浮動票が定着してくることを意味します。今は浮動票が世の動きを大きく左右します。
もうすぐ出かけるところだが、フランス2のニュースで「学校で体罰(お尻を叩く)が必要だと思っている」親は84%。風力発電の風車の音がウルサいという住民の訴えが認められ、裁判所は電力会社に「風車をすべて撤去し原状回復」することを命じた。この二つのニュースを日本人はどう見るだろうか?と呟いている。
ウェブサイト「巨大風車が日本を傷つけている」では、風力発電に反対する立場から種々の風力発電問題の情報を掲載している。ただし、このサイトの管理者の情報が顕わに示されていないのが残念である。
奇しくも、本記事をアップした翌日の6月8日付けでブログ「気象・歳時・防災コラム」でブログ主のTwisterさんが「“盲目的”風力発電開発のウラに… 」と題する新たな記事をアップされているのに気付いたので、追記する。NHKが4月30日22時38分に配信した「風力発電の影響を考える集会」紹介記事も示している。
拙ブログ関連記事:
2009年01月03日 里海
2011年2月27日 訂正
「黙殺の音 低周波音」は汐見文隆さんではなくて、矢田野鴉さんのサイトでした。訂正して、お詫び申し上げます。
2.月刊「むすぶ」の特集記事
全43ページの特集「エコって本当?見つめ直そう命と自然 クリーンエネルギーの実態を全国から報告」の構成は以下の通りである(月刊「むすぶ」の発行元であるロシナンテ社のウェブサイト:最新号の紙面紹介より転載)。
平和な生活を破壊した風車 大河 剛なお、その追記によると、この集会報告はロシナンテ社・しかたさとしさんの責任において、第一部はほぼ発言をそのまままとめたもの、二部は要約であり、テープ起こし、そのままの原稿および録音テープを希望する場合にはロシナンテ社(電話・Fax:075-533-7062)に連絡してください、とのことである。
この国はエコという幻想に食い物にされている!? 川澄 透
丸紅さん、こんな住民無視の事業では一流企業の名前が泣きませんか? 大岩 康久
巨大風車は、本当にまともな国策でしょうか? 後藤 美智子
敦賀市は計画をストップさせました 今大地 はるみ
風力発電の理想と現実 武田 恵世
平和の島に風車がやってきた 有吉 靖
第二部 現地報告者を囲む討論会(司会 今大地はるみ)
最初に総合司会の藤井廣明さんの「風車はエコではありません!」と題するお話しが掲載されている。「風車には、低周波音被害、騒音被害、バードストライク、野生生物への影響、景観問題があります」という言葉で、風力発電の問題を端的に要約されている。
例として、最初の愛知県田原市の大河さんの発言を紹介する。大河さんは、夜間、自宅外のアパートに避難しているにもかかわらず、環境省は被害を認めていないので苦情者とされていることを述べた後、環境省が4月にそのホームページに公表した風車苦情地域調査の最終報告書(マスコミは報道していない)に記載されていない打合せ内容、測定内容、結果についての住民側の言い分を紹介し、「環境行政は苦情者を一丸となって追い返そうとしている」と述べている。体験談として、風車からは風上に異常に音が出る、風速7m程の普通の風の時が最悪、メーカーによって発生音が異なる、地方自治法は環境行政が苦情者を追い返すのには非常に都合良く作られている、とのことである。
その他の方の発言記録も、読んで驚くことが多い。以前は風力発電の推進派であったが今は反対している三重県名張市の武田恵世さんはその反対理由を「デメリットがメリットをはるかに凌駕している。自然破壊や人的被害が激しすぎる。発電のための風力発電ではなくて補助金獲得のための建設になっている」とまとめている。
公害等調整委員会の対応の酷さが第2部の討論会の中で武田恵世さんが紹介している。それによると、事務局が提案した専門委員は、当初は、環境省の(問題の多い被害判定の)参照値を作成した委員会のメンバーであり、「超低周波音は人間には聞こえない。聞こえないから被害などありえない」と発言するような、低周波騒音被害に理解のない「専門家」であり、それを拒否すると、現場測定には、関連業界の測定業者が現れたとのことである。集会に参加していた保坂展人前衆議院議員は「風力発電問題は日本の民主主義の問題」という発言をしている。
ともかく、一読をお勧めする。なお、集会の主催者のお一人である今大地はるみさんのブログ「はるみのちょっとTea-time」に掲載されている集会当日付けの記事「風力発電を考える全国集会」が集会の雰囲気を伝えている。
3.科学技術研究のあり方
月刊「むすぶ」の5月号の巻頭言?「ロシナンテキャリー渡世」でしかたさとしさんは
関口(管理人:関口鉄夫さんか?)さんは言う。「住民運動に寄り添う研究者、とりわけ自然科学の専門家が育っていない」と嘆く。それは、結局、私たちがそういう専門的な人材に十分な保障を用意することができなかったわけだ。大学の理工系はますます成果を要求され、住民運動に関わるなんてとんでもない!ことらしい。住民のニーズに応えることが出来る研究の場を市民が作るしかないのだろうと思う。と述べている。このような認識が専門外の人々に広まっているいることに対し、専門家はどのように対処したら良いのだろうか。「しかた」さんの発言には、専門家集団への不信、諦めとともに、漠然としているが、科学に対する誤解、過度の期待もあるようにも感じる。科学で全てを解決できるわけではない。分からないことは分からない。分からないことは分からないとして、分かったことを基に住民の安全・安心のための政策がなされるべきであるが、政策立案者は完全には分かっていないとの理由で救済処置を施さない。でも、住民のために、分からないことを分かったということは科学者としては言えない。しかし、分からないことを分からないと強調することが、結果として、反住民的行動となってしまう。何が分かっていて、何が分からないのかを明示し、そのような状況で、最善と思われる政策を選択するように政策立案者に働き掛けるしかないと思う。
月刊「むすぶ」の5月号の全国集会報告の第2部の最後に、集会に参加していた汐見さんは「風車被害と言うのはまだ複雑怪奇であるということをしみじみ感じたわけです。また考えてみます。ありがとうございました」と述べている。科学者として、優れた態度と感服した。他方、地球温暖化問題で二酸化炭素原因説に異論を唱えている槌田敦さんは、二酸化炭素非原因説の主張の源が、科学的疑問ではなくて、原発反対運動
拙ブログ関連記事:
2008年07月26日 Carl Wunschさんのこと
4.おわりに
大学教養部時代に中学・高校
貴サイト最新記事で、「黙殺の音 低周波音」は汐見文隆さんではなくて、矢田野鴉さんのサイトであったとの言及をありがとうございました。本文を訂正するとともに、お詫び申し上げます。
交通事故映像と同じように迫力があります。