24日の昼前にTwitterのTLを眺めていて、「ワールドシフトフォーラム。ユーストリーム配信中」というTweetに気付き、何のことだろうと思って、ハッシュタグ#worldshiftをクリックした。何やら、興味深い内容の講演についてのコメントが続いていた。そこで、「ワールドシフトフォーラム」のHPに跳んで、どのような行事なのかを調べたところ、国連大学ウ・タント国際会議場で24日と25日に開催中で、そのサブタイトルは「いま伝えたい、提言がある。『EarthDay2010 WorldShift Forum』開催~持続可能で平和な社会へ~」という集会であった。その詳細記事によると、「ワールドシフト」とは、
2009年9月、世界的な金融・経済危機と環境問題に 対応するために、システム哲学者アーヴィン・ラズロ博士やゴルバチョフ元大統領 など世界賢人会議「ブダペストクラブ」が、 持続可能な社会への転換(WorldShift:ワールドシフト)の緊急提言を行ったこと からはじまった、世界的なムーブメント。であるとのことであった。予定講演に「フィンランドの教育に学び、超えよう!米倉 誠一郎 氏(一橋大学イノベーション研究センター長・教授)」と「イノベーション日本:常識なんかぶっ飛ばせ米倉 誠一郎 氏(一橋大学イノベーション研究センター長・教授)」という、拙ブログと話題とする内容があるのに気付き、中継を視聴することにした。早速、映像配信元を覗いたが、丁度、午前の部が終わったところであった。25日午後の中継も視聴した。以下は、その中継および録画の一部を視聴した感想。
1.ワールドシフトフォーラムの趣旨と形式
ワールドシフトフォーラムの開催通知には、その趣旨が以下のように述べられている。
アースデイに合わせて開かれる今回の「ワールドシフト・フォーラム」は、 日本におけるワールドシフトのはじまりとなるフォーラムで、 野中ともよ、田坂広志、竹村真一、ドクター中松、龍村仁、辻信一、マエキタミヤコ をはじめ、五井平和財団、一橋大学イノベーション研究所、日本ユニセフ協会、 自然環境復元協会、CBD(生物多様性条約)関係者などの約30人のプレゼンテーターが、 2日間にわたって、「生態系(いのち)」「経済(お金)」「社会(つながり)」 それぞれの視点でシフトのアイデアをプレゼンテーションします。また、プログラムの最後には、その講演形式の説明が以下のように述べられている。
ワールドシフト・プレゼンテーションとは?面白い形式だと思う。NPO法人ガイア・イニシアティブ代表理事の野中ともよさんが司会していた。いくつかのプレゼンテーションの後で野中さんが補足のコメント、質問をすることはあったものの、会場からの質疑応答はなかった。仕方がないとは言え、意見交換・相互理解というよりは意見発表のみであり、残念な気がした。また、野中さんのコメントや最後のまとめを評価するTweetが多かったが、管理人にはどこか違和感があった。
発表者である団体や個人が“それぞれの個性を生かした視点でのワールドシフト提言・宣言”をおこなう、ビジュアルを主体とした18分のプレゼンテーション。
はじめに、ワールドシフト・ロゴ(○○→○○)を用いたワールドシフト宣言(発表者にとって、ワールドシフトとは、何が何に変わることか?何を何に変えていくのか? 等)をおこなったのちに、未来に向けた自身の活動・アイデア・フィロソフィー・ストーリー等を自由に発表していきます。
2.世界の廃藩置県 ~世界法治共同体「世界連邦」の実現を目指して~
24日13時からの午後の部の最初は、国連認定NGO世界連邦運動協会執行理事の木戸寛孝さんのプレゼンテーションであった。録画はここ。「主権国家の連合体である国際連合」から「世界法治共同体としての世界連邦」へという宣言、世界連邦運動の歴史と現在、世界法治共同体実現へのプロセスとして、法の支配(国際刑事裁判所)、税(国際連帯税)、参政権(国連議員総会)、警察(国連緊急平和サービス)の概念を解説した。野中ともよさんからは「もっとやさしく」とのコメントがあったが、管理人は、構成もしっかりしており、面白く感じた。
3.「ダイアログの潮流と未来」 ~対立から共生へ、議論から対話へ~
24日13時20分からは、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科准教授の佐野淳也さんのプレゼンテーションであった。録画はここ。デヴィッド・ボーム著「ON DIALOGUE」の内容紹介を通して、議論と対話の違い(勝敗の有無)、コヒーレントとインコヒーレントの違い(一貫性の有無)、思考の源は「暗黙の領域」、など説明。さらにピーター・ゼンゲ著「出現する未来」の紹介。ただし、ゼンゲの主張については、表面的な理解の印象を受けた。バガバッド・ギーターの「あらゆる行動は、自然の中で起きる。・・・」紹介の後、対話の実践例として、ファシリテーショングラフィックを用いたワールドカフェを紹介。全体として、非論理的、あいまいな印象を受けた。「スモール・セルフ」から「ビッグ・セルフ」へが宣言。久松先生の「形なき自己に目覚めよ」という言葉を知っている管理人にとっては、疑問が残るプレゼンテーションであった。
拙ブログ関連記事:
2008年04月30日 心茶会と久松先生のこと
3.フィンランドの教育に学び、超えよう!
24日13時40分からは、東海大学国際文化学部教授の川崎一彦さんと川崎さんの教え子の新谷舞子さんのプレゼンテーションであった。録画はここ。ちょっと進行が早すぎた感はあったが、おそらく「高橋メソッド」を参考にした簡潔な表現で非常に分かりやすいプレゼンテーションであった。「教える教育」から「学ぶ教育」へが宣言。内容は、探求型科学教育に関連した教育手法とその実践例の紹介であった。管理人にとってキーワードとして「創造性と自己効力感」が目新しい印象を受けた。
拙ブログ関連記事:
2008年11月23日 サイエンスアゴラ2008
4.イノベーション日本:常識なんかぶっ飛ばせ
24日14時からの一橋大学イノベーション研究センター長・教授である米倉誠一郎さんのプレゼンテーションを録画(ここ)で、24日夕方に視聴した。「前例踏襲」から「創造的破壊」へが宣言。巧みな話術で、道州制の推進、その他についての話であったが、精神論的な話が主で、イノベーションの具体的な手法などの管理人が期待した内容ではなかった。
拙ブログ関連記事:
2010年04月15日 ブレークスルー研究
5.Think the Earth
24日昼前にハッシュタグ#worldshifに最初にアクセスしたときに盛んに話題になっていたThink the Earthプロジェクト プロデューサーである上田壮一さんのプレゼンテーションの録画(ここ)を米倉さんのプレゼンテーションの後で視聴した。「未来はいつかやってくるという意識」から「未来は一人ひとりが参加して創るものという意識」へが宣言について、阪神・淡路大震災や「宇宙からの地球の姿」による意識変化を例に説明。確かに、分かりやすく、「この50年は後年「アース・ジェネレーション」と呼ばれるだろう」、「我々はワールドシフトの時代を生きている」などの発言があって内容も深い。中でも、紹介された以下の言葉(中国の古い言葉らしい)は貴重だと思う。
一年先をかんがえるなら種を播け。
十年先を考えるのなら木を植えよ。
百年先を考えるのなら人を育てよ。
6.おわりに
25日午後には遅い昼食時を除いて、9件のプレゼンテーションの中継を視聴した。その中では、
公認会計士である天野敦之さんの「人を幸せにする会社を創る ~「つながり」を取り戻すビジネスとは~」、NPO法人自然環境復元協会副理事長である恵小百合さんの「この手でなおす、うみだす、つなぐ、この自然。この世界」が印象深かった。恵さんのお話の中には、沖縄におけるサンゴ礁回復に関わる里海運動についての紹介があった。なお、25日午後のプレゼンテーションの中には目指すところには同意するものの、その展開内容はトンデモの類と言わざるを得ないような話もあった。
「世界を変えよう」という意識改革運動があり、種々の人たちが、それぞれの活動をしていることを知り、力づけられた2日間であった。特に、上田壮一さん、天野敦之さん、柳澤大輔さん、波房克典さんのプレゼンテーションを視聴し、若い世代のしなやかな考え方に深い安堵を感じた。