このところ、いくつかの旧記事にいただいたコメントへの応答で手一杯で、ブログを更新できずにいる。Twitterでの発信に触発され、詳細に紹介、論考したい項目が次々と現れるのだが、Tweetするのみで時間が過ぎてしまい、Tweet、Retweetのまとめ記事も2月16日の前報以来、滞っている。記事にしなければと気になっている話題は、海のサイエンスカフェを含めた日本海洋学会2010年度春季大会の報告、津波予測の精度と警報への人々の対応、「新しい公共と科学技術」研究集会とその後、海洋エネルギー政策、低周波騒音公害、米国におけるサイエンスコミュニケーション、地球温暖化にかかわる新たな科学的知見、などである。
そうこうしているうちに、4日午後に、3月末に定年退職された北海道大学前教授池田元美さんから海洋学会期間中の3月29日夜の退職祝賀会出席と、翌日に学会会場で池田さんもコンビーナーの一人として開催されたワークショップ「ブレーク・スルー研究をめざして」での発言へのお礼のメールを受取った。その中で、池田さんは「これからは自称「環境教育コンサルタント」として第三の人生へ踏み出すつもりです」と述べられているのを拝見し、さらにメールで紹介されていた池田さんのホームページのいくつかの記事を拝見して、池田さんが科学と社会の繋がりを深める運動の同志のお一人であることを知り、嬉しくなった。以下は、その詳細。
1.最終講義資料
池田さんはご自分のホームページで、ご経歴その他を公開されている。このサイトで公開されている「エールをおくる」と題する最終講義の資料では、他の多くの方と異なり、これまでの研究成果についての総説・紹介ではなくて、題名の通り、「これからの研究に期待」することを4項目挙げている他、「これからの取り組みに期待」することと「これからの教育に期待」することが示されている。特に、「これからの教育に期待」することとして、
社会貢献と先端研究の相互啓発:ことを
市民である学生が専門家に育ち、
市民と専門家をつなぐ役割を果たす
2.環境教育コンサルタント
池田さんのホームページの環境教育コンサルタントのサイトで、池田さんは
小学生から大学院学生、そしてシニアに至るまで、環境教育の意義は普遍です。その目的も、自然に親しむ、地球規模の環境保全、さらに環境起業をめざすなど、まことに幅が広いものです。一言に環境と言っても、種の保存、衛生的な水資源、地球温暖化の間に関連があるとすぐにわかるでしょうか。このように多様な環境問題とそれを的確に学ぶことに対して、助言を必要としている方は多いと思います。私が提供できるものは、さまざまな世代への講演と個別指導、環境教育体系のデザイン、環境保全の考え方を提示すること、環境政策と事業の立案です。そのどれも、私がこれまで培ってきた大学における教育、市民講座などの講演、教科書の著作、各政府レベルの審議会委員、環境科学研究者のネットワーク、世界最先端の研究に基づくものです。具体的な項目をリストアップすると以下のようになりますが、これらに留まらず、御相談に応じることが可能です。として、「小中高大への出前授業」その他の具体的な相談内容を示している。まさに、退職した大学人の生き方として、尊敬に値する発言・選択であると思う。関心を持たれた読者は、遠慮なく、このサイトに示されているメールアドレスにメールしてご相談されるを強く推奨します。なお、上の文章を読んで、相談に応じるとか、助言する、という表現に「上から目線」を感じる読者が居るかもしれない。そのような読者には、池田さんは管理人へのメールで「大学院の教育は最近16年のもっとも重要な課題であり、そこで知り合った教育者、学生、市民の方たちから多くのことを学びました。私の活動がいくらかでもお役に立てたのなら、この上ない幸せです。」と述べておられることをお伝えしておきます。
3.ワークショップ「ブレーク・スルー研究をめざして」
本ワークショップは、広い意味でUNESCOに設置されているIOC(政府間海洋学委員会)の設立50周年記念行事の一環として、ICSU(国際科学会議、我が国の対応体は日本学術会議)の SCOR(海洋科学研究委員会)分科会と計画し、広く日本海洋学会春季大会の一環として、学会員とこれからの海洋学を考えるためのシンポジウム開催の準備活動として企画されたものである。最初に若
第1回の会合であり、漠然とした会合であったが、参加者は60名程度あり、盛会であった。大学院学生やポスドク研究員からの発言が少なかったのは残念であった。9月初めに網走で開催される海洋学会秋季大会でシンポジウムを開催することが決まった。
<参考>
市川惇信 著「ブレークスルーのために(オーム社出版局,1996年)」の複数の書評(名和小太郎、住 明正、瀬戸洋一)によると、本書では、「ブレークスルー研究」という概念は、「新しい現象を発見し、または新しい問題を設定し解決するため、あるいは、既知の現象を新しい方法で解決するための研究」と定義されている。また、ブレーク・スルー的な研究成果を生み出す「優れた研究組織に共通すること」は
1)広い領域での優秀な研究者を採用する,という5つの要件を満たしていることとのことである.確かに、このような組織だけが生き延びるのだろうことは容易に察せられる。
2)異なる背景の研究者を集める,
3)研究者に明確なピジョンを与える,
4)研究者に自由に発想させる,
5)相互に刺激し合う良い雰囲気を作る,