図中の○印は各日の正午の位置である。以下にこの航海の概要を述べる。
1.緊急入港(8月27日)
出航直後には台風10号の影響が残っていたため、館山湾で一泊。その後、26日未明から仙台沖北緯38度線上でのXCTD観測を開始した。しかし、PMELからの乗船者の一人が便秘と腹痛を訴えたため、26日午後に観測を中断して、仙台塩竃港に向かった。27日朝に港外で病人と付添い人1名を下した後、仙台沖北緯38度線上での残りのXCTD観測をせずにJKEOに直行した。病人は塩竃の病院で急性腸炎との診断を受け、抗生物質を投与された後、27日夜の成田発の航空機でシアトルへ向かった。帰国後の診断では、腎臓結石であった。
2.JKEOでK-TRITONブイの交換他(8月28、29日)
29日午後から高気圧に伴う強風による時化が予報されたため、予定を変更してJKEOで28日にK-TRITONブイの回収、CTD/LADCP観測、GPSゾンデ観測、29日にK-TRITONブイの設置と漂流式GPS波浪観測ブイの投入を行った。台風11号が日本東岸を北上する予報が出たため、JKEOから北緯38度線上で西に向かって残りのXCTD観測を行った後、宮古湾へ向かって避難を開始した。
3.台風11号避難(8月30、31日、9月1日)
30日午前には、台風11号によって宮古湾付近も大時化となるとの予報が出たため、陸奥湾内に避難することになった。結局、9月2日朝まで青森港外で避泊した。
4.黒潮続流横断XCTD、GPSゾンデ観測(9月3、4日)
台風11号の余波が残る洋上をJKEOへ向かい、3日昼過ぎからJKEOとKEOブイ設置点とを結ぶ線上で黒潮続流横断XCTD観測とGPSゾンデ観測を開始した。当初、観測を予定していた北緯30度付近の海況は台風12号の影響で大時化が予報されたため、黒潮続流横断観測はKEOブイ付近で中止し、最悪の場合には、KEOブイの回収・設置を断念して、東京湾へ避難することになった。
5.KEOブイの交換他(9月5日)
台風12号の影響で海況が悪化するのが予報されていたため、多少、海況が悪くても実施が可能なKEOブイの設置作業を4時30分から開始した。10時に設置作業完了。12時頃に海況を判断して、回収を引き続き行うことになったが、回収作業中に風速が増し、一時は毎秒15mに達した。KEOブイは5月末に約1km移動していた。係留系の上部に多くの延縄が絡んでいたことから、漁業操業の影響で移動したのは明らかである。観測機器の損傷、ガラス球の破裂、係留ロープの団子状の絡みという異常状態で回収された。18時30分に回収作業を終えた。
6.野島崎沖黒潮横断XCTD観測(9月5、6日)
KEOブイ回収後にGPSゾンデ観測を行った後、野島崎沖へ向かって、5日19時から6日18時までほぼ24時間の間に10点で黒潮横断XCTD観測を行った。
7.帰港
7日11時30分に横須賀の海洋研究開発機構本部の岸壁に接岸。機材の積卸を行った後、15時30分に「かいよう」は東京湾奥へ避難するために出港した。
8.おわりに
出港前の予報と大きく異なり、台風と高気圧の影響を大きく受けた航海であったが、幸運にも、当初計画していた観測、作業の大部分を実施できた。台風12号は5日に設置したばかりのKEOブイの直近を通過する予報が出ている。貴重なデータが取得されるものと期待される。
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9月11日まで乗船中のため更新停止