2009年05月02日

三角波と高波は違う

4月14日朝に長崎県平戸市沖で巻き網漁船「第11大栄丸」の沈没事故が発生した。毎日新聞4月15日付け朝刊は「長崎・平戸沖の漁船転覆:後方から三角波か 不明12人、捜索続く」という見出しの記事(ウェブ魚拓はここ)の中で、以下のように、この事故の原因が三角波の可能性があることを報じている。
 7管によると、現場付近には15~20メートルの強風が吹き、波の高さは2・5~3メートルあった。ただ、船舶などの専門家は「この大きさの船が転覆する波高ではない」と指摘。多方向から吹く強風で複数の波がぶつかり合ってできる「三角波」が発生した可能性がある。側面から三角波に乗り上げると、船体は大きく傾く。
この記事中の「三角波」の説明を読んで違和感を感じた。三角波は、多方向から吹く強風で複数の波がぶつかり合った場合にのみ生じるのではなく、流れも関係している。また、波の高さが2・5~3メートル程度の海況で船を転覆させるほどの三角波が発生するとは考えにくい。改めて今回の事故原因についての新聞報道、あるいは「三角波」について調べてみた。


1.新聞報道
上に引用した毎日新聞の記事では、誰が「三角波が発生した可能性がある」と指摘したのかが明確に述べられていないし、三角波の解説も不十分である。ネットで調べると、産経ニュースウェブ魚拓はここ)では、
館浦漁協(平戸市)によると、風向きと海流の関係で「三角波」と呼ばれる大波がたびたび起きる海域で、7管などが事故の状況を調べる。
と、「三角波」説の出処が館浦漁協であることが明記されている。また、「三角波」には風向きと「海流」が関係していることをごく簡単に述べている。また、東京新聞4月15日朝刊では、産経ニュースと全く同じ文で「三角波」説の出処が館浦漁協であることが明記するとともに、以下のような三角波の解説を示している。
<三角波> 突然起きる巨大波の一種で、強風や潮流の影響で複数方向からの波がぶつかってできる三角の波。荒天時に突発的に発生し、高さがほかの波の3倍以上になることもある。前線や低気圧の通過に伴い、気圧が不安定で風向きが頻繁に変わると、風と波の向きが逆になって発生しやすい。
なお、4月15日付け西日本新聞朝刊では、長崎大の高山久明教授(漁船運用学)の「現場は通常も波が高く、航行に注意が必要な海域。三角波が起きた可能性がある。大量の海水を船外に排出できず、バランスを崩したことも原因。悪条件が重なって転覆したのだろう」という談話を紹介している。また、4月15日長崎新聞では、「捜索に当たった関係者は「現場は潮の流れが速く、三角波が立ちやすい海域。波高は最大約五メートル、風速は約一九メートルあった」と話した。」という形で三角波に言及し、東京新聞と同じ三角波についての解説を掲載している。

このように他紙と比べると、毎日新聞の記事の記述の不適切性が分かる。字数制限があるにせよ、「館浦漁協(平戸市)によると」という語句を削除したために、「三角波」説の出処が不明となり、文脈からは「専門家」が指摘したような印象を与えてしまっている。また、「強風や潮流の影響で複数方向からの波がぶつかってできる」とすべきところを「多方向から吹く強風で複数の波がぶつかり合ってできる」と短縮したため、意味が不明確になってしまっている。なお、産経ニュースでは館浦漁協の説明を紹介するにしても、「風向きと海流」としているのは不正確で、「風向きと潮流」あるいはより厳密には「風向きと海水の流れ」とすべきであった。

3.三角波
「三角波」は財団法人日本水路協会 海洋情報研究センターの「海の事典」では次のように説明されている。
進行方向の異なる波がぶつかったときに出来る、峯の尖った波をいう。進行する重力波の頂は120度より尖らず、それ以上になると砕ける。しかし定常波(standing wave)の場合には頂角は90度まで尖り得るため、重複波では波形勾配の大きな波が起こり得る。風系の複雑な台風の中などでは、規模の大きな典型的な三角波が立ち、非常に危険である。
「海の事典」の多くの項目は永田豊東大名誉教授(専門:海洋物理学)が海洋情報研究センター在職中に整備されたもので、信頼に足る情報源であると管理人は思っている。しかし、この三角波の説明は、専門外の人には難しいと思うので、以下に補足する。

水面重力波:
水面が傾いている場合には、大気と水の密度の違いと重力のために、水面が高い方の水圧が低い方より高い。この圧力差のために、水は水面が高い方から低い方に向かう力を受けて、海面が低い方へ流れる。この結果、水面の凹凸が移動する。このようにして生じる水面の凹凸(波)は、復元力が重力であることから重力波と呼ばれる。水面重力波の形は力学的条件から数学的に決まる。その結果、進行する海面重力波の頂きは120度より尖らないということが得られている。また、波長と周期の間にも明瞭な関係があり、周期が長いほど波長も長くなり、周期を測定することで波長を決定することが可能である。また、波長が長いほど、伝播速度は速い。なお、波長の極めて短い海面波では復元力が重力ではなくて表面張力になる。このような海面波を表面張力波と呼ぶ。表面張力波は波長が短いほど伝播速度が速い。

進行波と定常波:
池の真ん中に石を落した時、重力波の波面が池一面に広がる。このように、水面の上下動(波動)が一定方向に伝播する波を進行波と呼ぶ。この場合には、池のどの点でも、波の通過と共に水面は上下する。これに対し、同じ周期(波長)で向きが逆の波がぶつかると、あるところでは2つの波の上下動が打ち消しあって水面が動かず、あるところでは2つの波の上下動が重なって大きな振幅となる現象が生じる。このように、波が伝搬していないように見える波を定常波と呼ぶ。重複波は複数の進行波が重なって伝播している波である。
 直上の風によって起こされる風波(風浪)は風下に向かって進行しながら発達する。発達した風波は直上の風が止んだ後も、高周波成分を急速に減衰させてウネリとなって伝播する。このため、風向きが急に変化した場合には、種々の向きの波が重なることになる。風向きと流れの向きが逆の場合には、海面に相対的な風速が強くなるため風波はより急速に発達する。流れの向きが波の伝播方向と逆向きで流れの速さが波の速さと同じ時には、波は海面上を伝播せず定常波のようにふるまう。

波形勾配:
波形勾配は(波高/波長)で表わされる。船の揺れ(傾き)は波高ではなくて波形勾配に依存する。波高が20mで波長が200mの波の波形勾配は0.1である。他方、波高が5mであても、その波長が25mならば波形勾配は0.2となって、波長100m、波高20mの波の場合に比べて船の傾きは大きい。

4.事故現場の波
ネットを検索していて、京都大学防災研究所気象・水象災害研究部門沿岸災害研究分野の間瀬さんのグループが4月14日午前8:00前後の事故現場(推定位置)の気象・海象条件について,高解像度の気象・波浪の再解析を行って得た結果を「第11大栄丸海難事故海象解析結果」と題して4月15日に公開しているのを知った。この資料は、社会への迅速な対応として高く評価するが、ちょっと専門的過ぎて報道関係者には難しいと思えるところがあるのが残念である。この資料によると、事故発生前後の現場海域における波の向きは 北北東であり、 有義波高が1.6~2m,有義波周期4.7‐5.0秒(波長34‐39m)であった。また、当日朝5:00から有義波高は約0.7mから2.2m(10:00)へ増加していた。ただし、この推定には、潮汐流の効果は含まれていない。

資料では、事故発生時の海況を要約して
• 事故3時間ほど前の比較的穏やかな状況から,事故発生時刻までに風速・波高が急激に増加している.
• 波高はそれほど大きくないが,周期が約5秒と短く波形勾配が大きい(切り立った波)状況であったと推定される.
と述べている。なお、有義波高が2m程度であっても、ウネリと風波の状況によっては、波高が4mを超える「異常波浪」が発生する。異常波浪(Freak Wave)は、海域に突如として出現する高波で、有義波高の2倍以上の波高を有し、海洋波の理論的な出現確率過程よりも高い頻度で出現する異常波として定義されている(田村他、2009年度日本海洋学会春季大会講演番号261要旨)。

この資料に掲載されている波向の時間変化推定図によると、前夜19時から当日6時まで南向きであったが、その後急激に変化して8時前に北北東とほぼ逆向きになっている。このことは、三角波が発生しやすい状況であったことをしめしているのかもしれない。また、有義波の波長が34-39mとほぼ「第11大栄丸」の長さと同じであって、波高限界(それ以上の波高では進行する重力波の頂が砕ける)が6m程度である点も気にかかる。こららのことから、今回の事故原因が三角波なのか異常波浪なのかを特定するのは現段階では難しいように思う。

注)有義波:20分程度の時間内に観測された波を、高いものから順にその1/3を選んで、それらの波の平均波高と平均周期を自分の波高および周期とする波を有義波と呼ぶ。この定義から1/3最大波と呼ぶことがある。有義波の波高・周期は、熟練した観測者が目視観測で報告してくる波高・周期に対応するように決められたもので、複雑な形状をもつ海洋の波浪の簡便な表現法として広く用いられる。天気予報等で通常用いられるのも有義波の波高・周期である。出典:海の事典

5.三角波と高波は違う
京都大学防災研究所の資料の最後に
マスコミの方へ:高波≠三角波ですので用語に注意して下さい.
という記載がある。「三角波と高波は同じではない」のは当然であるのに、このような記述をしているのはどういうことなのかと思ってネットを調べると、毎日新聞4月14日西部夕刊で、
高波と三角波を同一視している記事ウェブ魚拓はここ)が見つかった。この中で、京都大学防災研究所の森信人教授(海岸工学専攻、間瀬さんと同じグループ)が「約6メートルの大波が起きるケースは論理的に証明されており、今回も大波によって転覆した可能性がある」と述べているのに、「約5~6メートルもの突然の大波(三角波)が発生した可能性を指摘する声も出ている」と短絡的にまとめている。

毎日新聞4月30日付け福岡都市圏版の記事「取材ノート:「自問」の日々 /福岡」(ウェブ魚拓はここ)で、4月に報道部(福岡)に赴任したばかりの記者が、
昨年6月、千葉県犬吠埼沖で漁船が転覆し4人が死亡、13人が行方不明となった。新聞は当初、三角波説を主張したが、やがてその可能性は低いことが分かった。「新聞を読んでも混乱するだけ。なぜ沈んだのか、本当のことを教えてほしい」。肩を落とし、そうつぶやいた遺族の表情が忘れられない。

 今回もさまざまな原因が報道されているが、本当に関係者の思いに応えているのか、自問している。
と述べている。現場の記者の熱い思いが伝わってくる。しかし、その記者と同じ新聞社の同僚が犬吠埼沖での漁船転覆事故での報道と同じ轍を踏んでいるとしか思えないのは極めて残念である。

6.おわりに
新聞を読んでも混乱するだけ。なぜ沈んだのか、本当のことを教えてほしい」という思いに応えるためには、報道は何が分かって、何が分かっていないのかを正確に伝える必要がある。また、研究者は事故再発防止のために、その原因究明に全力を尽くさねばならない。そのためには、水深80mの海底にある「第11大栄丸」を引き上げる必要があるが、「船体の引き揚げは国の装備では不可能であるとの情報を海上保安庁と防衛省から得ている(石破茂農相は二十四日、閣議後の記者会見)」とのことである。

海底資源開発に膨大な経費を費やすくらいならば、国として、今後も起こりうる沈没事故に備えて、沈没船の引き上げ体制の整備してもよさそうに思うのだが・・・。

2009年7月13日追記:
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の項目「巨大波」で本記事が参照されています。合わせてご覧ください。

posted by hiroichi at 03:58| Comment(12) | TrackBack(3) | 海のこと | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
海が好きで海洋学者をめざしている中3です。
今回三角波と高波について教えていただき、とてもおもしろかったです。
また来ます!

今度質問にも答えていただけると嬉しいです。
Posted by かえで at 2009年05月03日 21:28
かえで 様

コメントをありがとうございました。

>海が好きで海洋学者をめざしている中3です。

海洋学者になるためには関係大学学部を卒業し、関係大学院博士課程を修了する必要があります。夢の実現に向かって、頑張ってください。高校生になったら、「研究船で海を学ぼう(平成22年度までの開催は確定していますが、平成23年度以降は未定です)」に是非参加してください。
http://www.jss.or.jp/kenkyusen/index.html

>今回三角波と高波について教えていただき、とてもおもしろかったです。

「おもしろかった」とのお言葉をお聞きして、このような記事を書くことの励みになりました。ありがとうございました。

>今度質問にも答えていただけると嬉しいです。

中3の「かえで」さんにはちょっと難しかったかもしれません。何でもご遠慮なくご質問してください。
Posted by hiroichi at 2009年05月04日 03:21
フネ屋としては見逃せないご発言です。

>沈没船の引き上げ体制の整備してもよさそうに思う

 海上大型起重機船の動揺特性と稼動条件を考慮された上でのご発言でしょうか?

 波周期、波高および波向などの波浪条件と起重機船の動揺および動揺周期、係留力、ならびに吊荷の動揺および吊荷張力を考えたら、年に数度動くかどうかの国にやらせるより、海上工事で手慣れたサルヴェージ会社の方がどう考えても技量的には上(不審船引き上げも民間会社の作業です)です。国が手がける必然性がありません。

 それに深度200mを超えたら平時はオイルリグのような海上構造物の基礎工事とかになりますから、海底資源開発をやってないと技術を生かす場所が無いのですが。

 他分野をけなすのなら足元である海洋学を固めてからにされてはいかがでしょうか?
Posted by HMS at 2009年05月04日 04:22
HMS 様

コメントをありがとうございました。

>国が手がける必然性がありません。

言葉が足らず、誤解を招いたようです。

国の装備では不可能である場合でも、国として、今後も起こりうる沈没事故に備えて、沈没船の引き上げ 「について、作業実施やその経費負担などに国が関与する」 体制を整える必要のあることを指摘したつもりでした。

今回のような漁船沈没事故の原因究明の一環として沈没船引き上げを行うことについて、国の装備では不可能である場合でも、国が何らかの関与(例えば、民間業者へ発注)をする体制は既に整っているのでしょうか? 専門家として現状をご教示いただければ、幸いです。
Posted by hiroichi at 2009年05月05日 01:16
>「沈没船の引き上げ『について、作業実施やその経費負担などに国が関与する』体制」

 一般に、領海または内水に存在する難破物の扱いは、沿岸国の法令による裁量権に委ねられ、日本国内では船体引き揚げは油流出による海洋汚染や航行妨害の恐れがあるときなど、国が船主に船骸撤去命令を出す場合に限られています(港則法26条、ただしその他の海域での法的根拠は無い)。

 それでも船主が自発的に引き揚げることはほとんどありません(保険で処理するのが一般的です)。船主が撤去する意思がない場合は国による「行政代執行」がありますが、応分の時間がかかりますし、船主がやるのが国際ルールですから、国がやるのには反対です。

http://www.qsr.mlit.go.jp/n-event/kenkyu/pdf/iv-5.pdf

 その他の海域で事故を起こした場合は救助費用等、船体及び貨物等を救済するのに共通に要した費用は、救助された各財産の所有者等利害者団体が、その救助された経済価値に応じて負担すべきである、という考え方があります。「助かった程度に応じて公平に分担する」考え方であり、一般的に受け入れられている、事後における事故処理方式です。

 この「公平分担の事故処理方式」は、国際的にルール化されており、いわゆる「共同海損」の制度です。

 これらのどこに「国が関与する必要性」があるのでしょうか?外国籍船であれば旗国との交渉の必要ぐらいはあろうかとは思いますが。

>国が何らかの関与(例えば、民間業者へ発注)をする体制は既に整っているのでしょうか?

 日本では下記の2社しかありません(地先の会社はあるかも知れませんが)。
(日本サルヴェージ)
http://www.nipponsalvage.co.jp/
(深田サルヴェージ)
http://www.fukasal.co.jp/

 不審船の時には測量船「拓洋」で事前調査を行い、深田サルヴェージに委託しています。下記のように防災目的でも利用することがありますので、話を通すことはできますが、やるかどうかは国の判断でしょう。

http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/knowledge/pdf/X0C5N307.PDF

Posted by HMS at 2009年05月05日 10:24
HMS 様

一般の難破物の引き上げについての詳細な情報をありがとうございました。

>下記のように防災目的でも利用することがありますので、話を通すことはできますが、やるかどうかは国の判断でしょう。

今回のような漁船沈没事故の原因究明・再発防止のために国が業者に委託して沈没船の引き上げを行うことについて、国の判断基準規定などは既にあるのでしょうか?
Posted by hiroichi at 2009年05月05日 18:46
>今回のような漁船沈没事故の原因究明・再発防止のために国が業者に委託して沈没船の引き上げを行うことについて、国の判断基準規定などは既にあるのでしょうか?

「日本国内では船体引き揚げは油流出による海洋汚染や航行妨害の恐れがあるときなど、国が船主に船骸撤去命令を出す場合に限られています」と示していますが?

 技術的可否などどうやって明文化するのでしょうか?水深20mでも泥に埋まってクレーンからのワイヤーが通せない事例などもありますが。

 http://www.pcs.gr.jp/doc/jsymposium/2007/2007_hugh_j.pdf

油濁に脆弱な経済・環境資源の近傍性、残留油量の不確実性、予測不能の二次被害等のリスク評価と、技術的可否、沈没水深からの作業に要する予想費用が適度であること等をサーベイヤーのレポートなどにより比較勘案し、当該費用が容認出来るとすれば行われることもあるでしょう。要は「重要なものは何か、コストはいくらかかるのか」です。別に沈没しているのは漁船だけではなく、商船などもありますので。

 不審船や「清徳丸」のように「政治的判断」で引き上げられる可能性もありますが、どの道、サーベイヤーのレポートを待ってからの判断になります。

 
Posted by HMS at 2009年05月06日 06:51
HMS様

早々にご返答をありがとうございました。

>リスク評価と、技術的可否、沈没水深からの作業に要する予想費用が適度であること等をサーベイヤーのレポートなどにより比較勘案し、当該費用が容認出来るとすれば行われることもあるでしょう。要は「重要なものは何か、コストはいくらかかるのか」です。

「行われることもある」というご説明は「国の装備では不可能である場合でも、国として、引上げを行う可能性がある」ことを意味し、非常に重要な情報と思います。ありがとうございました。
Posted by hiroichi at 2009年05月06日 13:27
 それと「技術的には可能だが、日本国内では無理」というケースもあります。

 理由は「海底資源開発に膨大な経費を費やなかった」ので「大水深や難易度の高い状況における海洋開発(工事)の技量が日本国内にないから」です。

 経験のある外国の作業会社に依頼するとどこかの工事を中断して来てもらいますので作業費用+成功報酬以外に違約金の負担も必要になります。

 その上で「海底資源開発は不要かどうか」述べていただきたく思います。私は沈船引き上げは国が行うべき仕事ではないことはすでに述べましたので。
Posted by HMS at 2009年05月07日 06:22
HMSさんからの5月7日05時30分投稿のコメントを間違って削除してしまいましたので、以下に再掲します。

---ここから---
>「国の装備では不可能である場合でも、国として、引上げを行う可能性がある」ことを意味し、

 その条件として日本国内では船体引き揚げは油流出による海洋汚染や航行妨害の恐れがあるときなど、国が船主に船骸撤去命令を出す場合」「コストとリスクに見合うかどうか」と書いたつもりですが「わざと」読み落とされましたか?

 その前の引き上げが可能かどうかの事前調査だけで「国として、引上げを行う可能性がある」状況でも「引き上げの技術的要件を満たさない(船体の状況であったり、海底の条件であったり、潜水士の安全であったり)から不可」もあり得ます。今回の「第11大栄丸」はこのケースに該当します。いかなサルヴェージ会社といえども過大なリスクを負って役務提供はできません。

 したがって定量的にどのくらいの確率で引き上げがなされるとは言えません。また何が何でも事故検証に船体が必要ということもありません(刑事事件の立証ならともかく、同型船の実験でも「船として必要な」ある程度の状況は再現できます)引き上げがまず不可能な大型商船は一切検証不能ということになります。

 前レスでも述べているように沈没船は「漁船」だけではなく、「商船」もいますので「極めて特殊な例だ」程度に思っていただきたく存じます。
---ここまで---

HMS様

度重なるコメントをありがとうございました。

>「極めて特殊な例だ」程度に思っていただきたく存じます。

ご理解いただけなかったのは残念ですが、キーワードを含めて引用して、この点を私が理解していることを示したつもりでした。

> その上で「海底資源開発は不要かどうか」述べていただきたく思います。

この点についても、私の言葉足らずが誤解を招いたようです。
「海底資源開発に膨大な経費を費やすくらいならば、国として・・・」は
「海底資源開発に膨大な経費を費やすくらいならば、その一部を回してでも、国として・・・」ということで、「海底資源開発は不要」と述べるつもりは全くありませんでした。「その一部を回す」ことも「海底資源開発」を軽視しているとお怒りになられるかもしれませんが・・・

漁船沈没事故の原因調査報告については、これまでの専門家の方たちの努力は多として認めますが、専門家ではない被害者の家族の納得ができるだけ得られるような結果を示す必要がこれまで以上に求められていると私は思っています。
Posted by hiroichi at 2009年05月08日 01:16
≪現状をインターネットで知り、ご自分たちの将来について考えてみませんか≫

★まともな対応無き、メディアの暴走
http://specialnotes.blog77.fc2.com/

★現状を憂える有力企業で、「優良放送番組推進会議」 が設立されました。
旭化成、旭硝子、 出光興産、大阪ガス、 関西電力、キヤノン、新日本製鐵、新日本石油、セブン&アイ・ホールディングス 、全日本空輸、第一生命保険相互、 大和ハウス工業、武田薬品工業、 中外製薬社、中部電力、東京電力、トヨタ自動車、 日本電信電話、日立製作所、 パナソニック、みずほコーポ レート銀行、 三井物産、三井不動産、三菱重工業、森ビル、リコー
http://good-program.jp/

★近い将来に危機感を抱く一般の人々も、行動を始めました。
NHK「JAPANデビュー」の偏向・捏造放送に抗議する国民大行動。
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/deliciousicecoffee/40417921.html

★日本人なら、もっと自信を持ってください。
アメリカと中国の仕掛けた罠がゆっくりと、確実に日本をしめつけ始めています。
http://kkmyo.blog70.fc2.com/
Posted by 賛同者 at 2009年05月16日 13:24
賛同者(博士の独り言) 様

コメント(情報?)をありがとうございました。

>一日一日を大切に、みなさまと共に考え、真実を共有できればと願っています。事実を指摘する批判は「悪口」ではなく、真実を掘り出し、その共有のために不可欠です。また、真実の共有はすべての第一歩です。正論は真実から生まれ、良識の声は必ず力になる。辛抱強く支えてくださるみなさまに心より感謝します。

上に引用しました、貴ブログの各記事に記載されている結語を拝見し、私と考え方は異なりますが、熱意溢れた真摯な態度に、敬服の念を感じずにはおれませんでした。

自然現象の解明において、すべての第一歩である測定結果は「事実」ではあっても、測定方法の誤りや測定対象自身の不確定性のために「真実」とは異なることが良くあります。ここでは、「真実」を「誤差を含めた真の値」の言い換えとしています。この場合には、何が真実であるかを議論することが不可欠であり、「真実の共有はすべての第一歩」というお言葉に同意します。でも、これに続く「正論は真実から生まれ、良識の声は必ず力になる。」というお言葉には違和感があります。

自然現象の解明(真理の探究)を目指して試行錯誤を繰り返す科学研究に身を置いている私には、科学研究以外のことでも、自分の考えのみが正論であり、良識の声であると断言し、他の説を排除するような態度をとることに躊躇してしまいます。

人によって考え方や価値観が異なれば、同じ真実から導き出す結論も異なるのが当然ではないでしょうか? 今の日本では、人それぞれの考え方や価値観が違っても良いのだという認識が薄いように思います(マスメディアが、できもしない不偏不党を標榜することとも同根だと思います)。今こそ、「価値観の多様性を認め、共通認識を構築するために、ともに考え、議論する」ことが必要だと私は思います。
Posted by hiroichi at 2009年05月16日 16:06
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック

第11大栄丸の引き上げと事故原因調査
Excerpt: 2009年10月11日16時58分 一部修正・加筆 4月14日朝に長崎県平戸市沖で沈没した巻き網漁船「第11大栄丸」が9月22日に引き上げられた。5月2日付け拙ブログ記事「三角波と高波は違う」の最後..
Weblog: 海洋学研究者の日常
Tracked: 2009-10-11 17:01

2013年08月29日のつぶやき
Excerpt: 2013年8月30日1時40分 追記hiroichik / 市川洋,Hiroshi Ichikawa永田豊先生 (東京大学 大学院理学系研究科 名誉教授) が28日 (水) にお亡くなりになったとい..
Weblog: 海洋学研究者の日常
Tracked: 2013-08-30 01:46

離岸流とはどのような流れか?
Excerpt: 2014年5月8日01時15分 修正・追記、書式変更   4日午後に新潟県上越市の海岸で5人が死亡した水難事故が種々のメディアで大きく報じられた。その中で、毎日新聞2014年05月05日付け朝刊東京..
Weblog: 海洋学研究者の日常
Tracked: 2014-05-08 01:15