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2007年5月30日 国際研究集会(PAMS/JECSS)
1.世代交代
今回の参加者数は、韓国から74名、日本から22名、中国から16名、米国から7名の他、ロシア、台湾からの参加者を合わせて140名であった。
主催地の韓国以外では日本からの参加者が最も多かったとは言え、国際運営委員会に日本から参加している九大のYTさん、、前回の広島大会の実行委員会のKAさん、いつも参加していた東大理学部のYTさん、九大のYH他の方々が多忙で参加できなかったこともあって、管理人が日本からの参加者中の最年長であった。
管理人と共に1980年代から参加してきた仲間は、中国のYYさんとGFさん、米国のYSさん、台湾のはCLさん、韓国のKKさんのみで、地元韓国のHLさんは要職にあって多忙な中、24日の午後に、短い時間、会場に顔を出して頂けただけであり、BCさんは引退旅行中という状況で、一段と世代交代が進んだとの印象を強く感じた。
2.再会
今回の集会には、管理人が海洋研究開発機構で関わった研究グループの元ポスドク研究員であった、下関水産大学校のTTさん、中国第2海洋研究所のXZさん、米国ロードアイランド大学のJPさんの3名参加していて、親しく話すことができた。こうして、縁のある人たちの各々の活躍・健闘振りを直に知ることができるのも、このような国際集会に参加する楽しみの一つである。地元の韓国水産研究所のIHさんは発表共著者として加わっていたが、航海中でお会いできなかったのは残念だった。
1997年頃に米国フロリダ大学をYSさんのお世話で訪問した際に、東中国海の人工衛星海面水温分布画像について親しく議論したDYさんと再会した。彼は現在、中国科学院海洋研究所教授となって、集会では盛んに発言していた。
3.基調講演
初日の午前中には韓国海洋研究所(KORDI)の旧知のJLさんが座長で5件の基調講演が行われた。最初の基調講演は、米国ロードアイランド大学のMWさんであった。彼とは2004年秋に行った「かごしま丸」で東シナ海でのPIES回収航海以来の久々の再開であった。70歳を超えた彼から、講演の最後に、海底ケーブルによるPIES黒潮観測網敷設の構想が提案された。3番目のMSさんの基調講演では、東シナ海を含めた黒潮・黒潮続流域の大気海洋相互作用研究の現状と将来について的確な要約を紹介された。4番目の基調講演では、管理人がウッズホール海洋研究所に滞在していた1989年当時は管理人の受入れ研究員であったRBさんの指導の下で東シナ海の観測データ解析を進めていたCCさんが、現在、精力的に開発を進めている地球規模から沿岸域を網羅した数値モデルを紹介した。
4.研究発表
初日の午後から25日午前中までは一つの会場で研究発表が行われた。管理人は、23日午後のセッションで四国沖黒潮通過流量の変動が西太平洋パターンインデックス(West Pacific Pattern Index、WPI)で表される大気の年変動に先行するというデータ解析結果を報告したが、多くの人の支持を得るためには更なる解析が必要であるとの助言をMSさんから頂いた。集会の研究発表の中では、JPさんが黒潮続流システム研究(Kuroshio Extension System Study, KESS)計画で設置した約50台のCPIESで得た深層の流速と水圧データを用いた近慣性波と黒潮続流との関連についての議論や、CLさんの夏季の台湾暖流の流量の船底ADCP観測の結果を興味深く聴いた。また、KSさんのインドネシア海における海面水温とモンスーンとの関連についての研究結果を聞いて、以前インドネシアからの留学生の修論指導での研究を思い出し、もう一度見直してみようと思った。全体に、観測および数値モデル研究の成果が得られているものの、今一つ、全体像についての理解の進展に乏しい印象を受けた。
5.おわりに
日頃は何かと慌ただしくてゆっくりと個人的に話す機会の少ない、HTさん、BQさん、MSさん、他と集会期間中を通して多くの時間を共有することができた。これも日本を離れた地での集会の効用である。とは言え、中堅・若手の人たちが、今回の集会で国の枠を超えて交流を深めるとこができたのか否か、一抹の不安を感じた(多分、年寄りの冷や水なのだろうが)。また、最後の総合討論でも話題になったが、化学、生物分野の研究者や日・中・韓・ロシア以外からの参加が少なかったのが気にかかった。PAMSの前身であるJECSSが28年前に始まった頃に比べて海洋学関係の国際研究集会の数が多くなった中で、PAMSの位置付けも微妙になっているように思う。次回は2011年5月に台北で開催される。それまでに、何らかの方策を立てる必要があるように思う(今回もそれなりに改革の意欲の後が見られたが・・・)。