当初は25日朝から参加する予定であったが、9月5日に緊急回収したK-TRITONブイを再設置する航海の実施を関係者の方々にお願いする機会を得たため、出張を1日遅らせ、25日夕方からの学会参加となった。
25日に新幹線で広島に向かう。駅の書店で「深海のYrr」を見つけ、思わず全3巻を買ってしまう(往復の新幹線の車中で読むも、未だに読了していない)。広島駅前のホテルにチェックイン後、呉(新広)の学会会場(広島国際大学呉キャンパス)へ向かう。
1.2008年度日本海洋学会秋季大会
学会会場では、
26日朝、会場へ向かう車中でKMさんと遭い、来年春の学会でのサイエンスカフェについて相談。午前中は口頭発表会場(主として第2会場)と休憩室を往復。自分が1980年代に現場観測をしたことのある海底エクマン境界層(地球自転の効果を受けて、海底付近の流れの向きと大きさが上層と異なる現象)についての数値モデル計算の話が面白かった。午後はポスター会場。立会説明はNAさんに任せる。KMさんとともに歩いて懇親会会場(産業技術総合研究所中国センター)へ行き、瀬戸内海水理模型実験施設を見学。懇親会開始までの間にKTさんと日本の海洋学研究の方向性や中国の原子力発電所計画への対応など雑談。5時30分頃より懇親会。MMさん他と故杉森さんを偲んだ。人ごみに疲れ、早々に会場の外でバス待ち。結局、KKさんの車で皆より一足先に帰途に就く。広島駅でNHさんとSTさんに遭うも2次会に行く気力もなく、ホテルへ直行。コンビニで明日のサイエンスカフェで配布するアンケート用紙のコピー。27日午前中は第1会場で「黒潮・日本近海」のセッションに参加した。
今回の学会の参加者は、若手が圧倒的に多数を占めていて、いつも学会でお会いする年配の方々が少なく、休憩室での議論も低調であったように感じた。また、字が小さくて判別が困難な口頭発表画面やポスターが多かったようにも思う。プレゼンテーションのガイドラインを示す必要があるという話を同年輩の仲間と愚痴っていた。
2.サイエンスカフェ
27日12時過ぎより事務局で設定して頂いた会議室で開催された教育問題研究部会に出席した。会場を食堂に移して食事をしながら来年春のサイエンスカフェ他について協議し、来年春の海洋学会(4月5-9日、東京大学で開催)では、今年と同じ品川駅前の喫茶店で5日(日)に「第3回海のサイエンスカフェ」を開催すること、話題提供は岡田賞受賞者に依頼し、若手研究者に自分の研究を非専門家の方々に紹介する際の心得を学ぶ場を提供することなどを決めた。その後、部会長のOTさんと広島市内の「サイエンスカフェひろしま」会場へ向かう。
今大会における「海のサイエンスカフェ」は、広島市科学技術市民カウンセラー連絡会議と広島市が主催する「第10回サイエンスカフェひろしま」に日本海洋学会教育問題研究部会が協力する形で開催された。会場は広島市民球場近くの「広島市こども文化科学館」内の一室で行われた。広島大学あるいは広島出身の学会関係者と協力して海洋学会独自に「海のサイエンスカフェ」を開催することも一時は考えたが、地元でサイエンスカフェ活動をしているグループと連携した方が良いかもしれないと考えていたところに、教育問題研究部会員の一人であって地元の高校出身であるMYさんが高校の同級生のTさんから「サイエンスカフェひろしま」での話題提供を依頼されたことをお聞きし、このような形態で開催することとなった。
広島市では、科学技術を真に人間的な目的のために利用し、豊かで活力ある社会を創造していくための取り組みの一つとして、市民と科学技術の橋渡し役を担う「科学技術市民カウンセラー」制度を試行的に導入している(詳細はここ)。このカウンセラーの方々が中心となって「サイエンスカフェひろしま」は運営されており、事前登録、定員20名、5つのテーブルの各々に配置された科学技術市民カウンセラーが会の進行を助けるという趣向であった。春の成功から多くの教育問題研究部会員が参加の意思を持っていたが、少数定員制のため、一般参加者として、数名の部会員しか参加できなかった。
3時から始まった「海のサイエンスカフェ-海流をつかむ話-」と題するMYさんのお話は、海洋観測航海の紹介、海流と潮流の違い、漂流物、海流の成因、漂流予測と多岐にわたっていた。このため、参加者の理解不足を引き起こすことを懸念したが、MYさんの巧みな構成と話術により、参加した方々に海への関心を持って頂くことに成功したと思う。「海のことをもっと知りたい」という参加者の言葉を聞き、「海のサイエンスカフェ」の重要性を再認識した。話題提供の後は、全体での質疑応答が行われたが、科学技術市民カウンセラーの方たちの先導的な質問が一般参加者からの質問を引き出す結果となっていたのが非常に良かった。ロゴマーク入りのボールペンや参加証の配布など、海洋学会が見習うことも多かった。部会から依頼したアンケートにも積極的に回答して頂いた。広島市役所および科学技術市民カウンセラーの皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
3.瀬戸内海水理模型実験施設
海洋学会の懇親会では、中国新聞の6月23日付け社説(ウェブ魚拓はここ)のコピーが配布されるとともに、2010年春以降には倉庫となる予定である瀬戸内海水理模型実験施設の保存と有効利用を旧知のUHさんが強く訴えた。
海洋基本法が制定され、海についての国民の関心を高めることが推進されようとしているにも関わらず、いろいろ事情があるにせよ、独立行政法人が経済原理を優先して、それと逆行する動きをしたことを残念に思う。「サイエンスカフェひろしま」の参加者に、足もとに海を知る立派な施設があることと、その施設が撤去の危機にあることを伝えた。
瀬戸内海水理模型実験施設は故樋口明生先生の指導の下に製作された。樋口先生は私の直接の恩師ではないが、4回生のときに京都大学防災研究所の高速風洞水槽を使って風波の実験を行っていた頃のある日、先生のお部屋をお借りして、夜遅くまで二人きりで黙々と各々の作業をした後、居酒屋で酒を飲みかわして以来、主として酒席で研究以外のことを含めた多くのことを学ばせて頂いた。その先生に縁のある施設が撤去されようとしていることに一抹の寂しさを感じている。維持費がかかるにせよ、敷地を買い取った王子製紙が社会貢献の一環として、この施設の活用について理解を示してくれることを願っている。