まあ,Wunschの番組への非難については,僕自身の印象では,Wunschが過剰に非難するほどには番組はデッチあげていないように見える.むしろ,Wunschの変に学者らしくない抗議の仕方に,アンチ地球温暖化学者と見られることに対する過剰な反応というか,自身の政治的な位置取りにコンシャスな何かを感じてしまう.と記述されているのを知った。私の知っているWunschさんはこんなことを言われるような人ではない。といっても、海洋物理学の研究者以外の人はWunschさんのことを知らないと思うので、以下に紹介する。
1. Wunschさんの経歴
Wunschさんの詳しい経歴はhttp://ocean.mit.edu/~cwunsch/cv/cv.pdfに掲載されている。Wunschさんは、1941年生まれ、1975年からMITの教授である。1980年代初めに水温・塩分の海洋観測データから深層を含む海の流れを推定するインバース法を提唱した研究者として、海洋物理学の世界では有名である(インバース法については別の機会に説明したい)。しかし、英語版wikipediaでのWunschさんについての記事は、輝かしい受賞歴を含む略歴の他は”The Great Global Warming Swindle”に関わる記述が主要部分を占めている。
2. Wunschさんとの出会い
私がWunschさんと初めてお会いしたのは、私が1988年12月から翌年にかけて文部省長期在外研究員としてウッズホール海洋研究所に滞在している期間中だったと思う。当時はまだ本格的な活動が始まる前の世界海洋大循環観測計画(World Ocean Circulation Experiment, WOCE。詳細はhttp://www.noc.soton.ac.uk/OTHERS/woceipo/ipo.html参照)の説明をセミナーで話していたと記憶する。小柄な体格で、穏やかな朴訥とした語り口が印象に残っている。管理人の出身研究室の先輩のISさんがMITで人工衛星海面高度計の海洋での利用についての研究していた時の受け入れ先がWunschさんであったことや、Wunschさんの教え子で、現在、JPL(Jet Propulsion Laboratory)で衛星海面高度計データの解析やで海洋データ同化モデルの開発で活躍中のFIさんのMITでの学位論文公聴会に同席したのを懐かしく思い出す。
3. 世界海洋大循環観測計画(WOCE)
WOCEは世界各国が協力して、世界中の海を端から端まで横断・縦断する観測線上で海面から海底までの水温・塩分・溶存酸素量・化学トレーサーを出来るだけ精密に測定し、世界の海の流れが気候変動に果たす役割を捉えようという壮大な計画であった。このような観測計画を提唱したのがまだ40歳代のWunschさんであった。
WOCEの集中観測は1990年から1998年まで行われた。この観測に日本は総動員体制で参加した。気象庁、海上保安庁、水産庁、東京大学、東海大学の観測船が北緯30度線上の北太平洋横断観測や東経137度線や東経165度線上の北太平洋縦断観測に参加することにより、我が国の海洋観測技術は世界と肩を並べる精度を確保できるようになった。私も、ISさんが代表者となってWOCEの一環として進めた足摺岬沖黒潮横断協同観測に参加したり、1991年1月から4年間には海洋観測計画委員会(Hydrographic Programe Planning Committee)委員として、観測計画の実施に関わる調整・情報交換に携わっていた。なお、これらのWOCE集中観測の約10年後の各観測線における変化を捉えるための再観測を地球環境観測研究センターが研究船「みらい」を使って行っている(参照 http://www.jamstec.go.jp/iorgc/ocorp/data/post-woce.html)。
4.「地球温暖化詐欺」騒動
"The Great Global Warming Swindle"をめぐる、Wunschさんの抗議を含む騒動の全体の説明はフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の日本語版(地球温暖化詐欺 (映画))と英語版(The Great Global Warming Swindle)に詳しい。また、7月21日BBC NEWSは地球温暖化詐欺 (映画)の一部に放送倫理規程違反があり、Wunschさんの主張が認められ、今後配布されるDVD等ではWunschさんのインタビューが削除されることを伝えている(このことは、Wikipediaでも詳細に述べられている。英国放送倫理審査会?の他の判断の当否についてはここでは触れない)。
WunschさんのHPの「London Channel 4 TV film "The Great Global Warming Swindle" 」に今回の映像放映後の経緯を理解するための資料が掲載されている。この資料の中の「Partial Response to the London Channel 4 Film "The Great Global Warming Swindle" Carl Wunsch 11 March 2007」で、Wunschさんは
When approached by WagTV, on behalf of Channel 4, known to me as one of the main UK independent broadcasters, I was led to believe that I would be given an opportunity to explain why I, like some others, find the statements at both extremes of the global change debate distasteful. I am, after all a teacher, and this seemed like a good opportunity to explain why, for example, I thought more attention should be paid to sea level rise, which is ongoing and unstoppable and carries a real threat of acceleration, than to the unsupportable claims that the ocean circulation was undergoing shutdown (Nature, December 2005).と述べている。この文章は、Wunschさんはアンチ地球温暖化学者でも地球温暖化二酸化炭素主因説の信奉者でもなくて、正に海洋物理学の専門家であり、教育者であることを示している。このように地球温暖化問題にはまだまだ未解決な問題が多く含まれていると考え、そのことを一般に広めたいと思って取材に協力したWunschさんが「The Great Global Warming Swindle」で自分のインタビュ-が恣意的に編集されて使用されたことに強く抗議したのは、当然であると思う。
I wanted to explain why observing the ocean was so difficult, and why it is so tricky to predict with any degree of confidence such important climate elements as its heat and carbon storage and transports in 10 or 100 years. I am distrustful of prediction scenarios for details of the ocean circulation that rely on extremely complicated coupled models that must run unconstrained by observations for decades to thousands of years. The science is not sufficiently mature to say which of the many complex elements of such forecasts are skillful. Nonetheless, and contrary to the impression given in the film, I firmly believe there is a great deal about the mechanisms of climate to be learned from models. With effort, all of this ambiguity is explicable to the public.
なお、これに関連してネットで調べると、ブログ「保守思想 Conservatism」さんの6月30日の記事のコメント欄でブログ主のMikeRossTkyさんは、
Carl Wunsch氏の抗議は彼の収入が温暖化否定発言で影響されるかも知れないと言う背景があるようです。と述べている。この記述は、出処を示さない伝聞の形でWunschさんを中傷しているように私には思える。
Wunschのコメントはまさに、私は環境学者から聞きたかったものです。地球の温暖化と特定のパラメタ(たとえば人為的CO2とか)の関係が、現在の未熟な科学や技術で10年とか100年先を、そう簡単にシミュレートして予測できるものではない。それを行ったとしても、あくまで実験室の中か、せいぜ論文の中の資料として扱うものであり、政治が「人類の未来」に利用するような種類のものではないと思う次第です。
それはそれとして、酒場の議論の類としてお聞きしたいのですが、北極(南極)の氷が大量に融ける事により、塩熱循環を阻害されて海洋大循環が乱され、(先端の海洋物理学ではどのように考えられているのでしょうか?アンガードリヤス・イベントのような現象が現代に起こる可能性について教えてください。
1)訂正1
誤:権威ある科学者が軽々しく(人為的温暖化論のような科学的根拠の薄い)憶測を公言するものではない。地球の温度が)大きな影響を受ける事は、最
正:権威ある科学者が軽々しく(人為的温暖化論のような科学的根拠の薄い)憶測を公言するものではない。
2)訂正2
誤:塩熱循環を阻害されて海洋大循環が乱され、(先端の海洋物理学ではどのように考えられているのでしょうか?
正:塩熱循環を阻害されて海洋大循環が乱され(地球の温度が大きな影響を受ける事は)先端の海洋物理学ではどのように考えられているのでしょうか?
>権威ある科学者が軽々しく(人為的温暖化論のような科学的根拠の薄い)憶測を公言するものではない。
どんなに「権威ある科学者」の発言であっても、その人の根拠のない推論を認めないのが科学の営みです。というか、科学の前では、権威は意味をなさなず、「権威ある科学者」なる者は存在しない、と私は思っています。科学的論争は科学的的証拠の解釈について行われます。その判定も新たな科学的証拠によって下されます。
>、現在の未熟な科学や技術で10年とか100年先を、そう簡単にシミュレートして予測できるものではない。それを行ったとしても、あくまで実験室の中か、せいぜ論文の中の資料として扱うものであり、政治が「人類の未来」に利用するような種類のものではないと思う次第です。
数値シミュレーションを含めた科学の営みは、単なる実験や論文の資料作成を目指しているわけではありません。対象についてのより深い理解を目指した挑戦です。政治家を含む社会の多数派が「科学の成果」が限定的なものであることを正しく理解し利用する時が来ることを願っています。
>塩熱循環を阻害されて海洋大循環が乱され(地球の温度が大きな影響を受ける事は)先端の海洋物理学ではどのように考えられているのでしょうか
私の理解している範囲でお答えします。間違っているかもしれません。ご自身で関係する書物を調べることをお勧めします。
かっては、温暖化に伴う塩熱循環の変化により表層海洋大循環が変化し、その結果、海洋による熱の南北輸送量が変化する可能性が指摘されていました。しかし、最近では、逆に、表層大循環や風が深層循環にも影響を及ぼしていることを指摘している研究者もいます。また、深層循環の海水は、グリーンランド沖の狭い範囲での冷却で生成された海水ではなくて、北極海の広い範囲で冷却された海水が陸棚斜面に沿って沈降した海水であると言う人が増えています。なお、ベーリング海峡が閉じていない現代ではアンガードリヤス・イベントのような現象は起きない、という説もあります。温暖化で深層循環が弱くなったことを海洋観測で捉えたという報告が一時ありましたが、報告した当人が、その観測結果の解釈に誤りがあり、温暖化の影響の有無を断言できないと述べています。現在、大西洋を東西に横断する線上に多数の係留流速計を配置して深層循環と熱輸送の変化を現場観測で捉える試みが進められています。
海洋団循環の件、hiroichiさんの考えをお聞かせ下さり、ありがとうございました。まずは用語の間違いを訂正させてください。最初のコメント時、濁り酒でかなり酔っていました。不手際が多々あり、すみません。
誤:アンガーガードリアス
正:ヤンガードリアス
北極と南極で大量の氷が解けて、「冷たくて軽い」真水が大量に発生していますが、それが海洋大循環(塩熱循環)へどのような影響を与えるのかについて大変興味があります。たとえば炎熱循環が阻害され、いまの海洋循環が止まるか乱された場合で、メキシコ湾海流が消失した場合、膨大な熱量が海流でヨーロッパ近くへ運ばれなくなりますね。
すごく面白いブログですね。いつも楽しく拝見させていただいています。
もしよろしければ相互リンクをお願いできないでしょうか。
ぜひご検討よろしくお願いします。
私のブログは有機化学のトピックを紹介しているブログです。
有機化学の話
http://topsynthesis.blog39.fc2.com/
>北極と南極で大量の氷が解けて、「冷たくて軽い」真水が大量に発生していますが、それが海洋大循環(塩熱循環)へどのような影響を与えるのかについて大変興味があります。
海水の密度は塩分が高いほど、水温が低いほど、重くなります。結氷あるいは蒸発により海水の塩分は高くなります。融氷あるいは降水により海水の塩分は低くなります。
北大西洋・北極海の表層の高塩分水が冷やされて、十分に重くなって海底にまで達し、深層循環の源を形成していると考えられています。つまり、深層循環が起きるためには、海面塩分が十分に高いことと強い海面冷却が必要です。
太平洋で深層循環が生じないのは、海面塩分が大西洋よりかなり低いためです。北大西洋の塩分が北太平洋より高いのは、北大西洋における海面蒸発量から淡水流入(河川水と雨水)量を引いた量が太平洋より多いためと考えられます(この原因としては北アメリカ大陸の地形に起因する降水分布の相違や地中海の存在が提案されていますが、確立はしていないようです)。
北極海が閉じた海の場合には、北極で氷が融けでできた真水の全てが北極海の海水に加わることになり、北極海の海水の塩分は低くなります。このため、海面冷却によって冷やされても海底に達する程には重くならなくなり、深層循環が停止すると考えられています。
メキシコ湾流を含む表層の北大西洋亜熱帯循環は海上風(偏西風)の東向き成分の南北分布が主な原因と考えられています。したがって、メキシコ湾流と深層循環とは直接には関係しません。
深層循環が停止すると低温な海水の赤道向きの輸送が減り、結果として、極向きと南向きに運ばれる海水の水温差が小さくなって、北大西洋北部への海洋による輸送量が減ります。この結果、大気循環(海上風)が変って、メキシコ湾流が変わるとは思いますが・・・
上の説明については私の誤解が含まれている恐れがあります(資料で厳密に確認していません)ので、ご注意ください。
宙太 様
>すごく面白いブログですね。
お褒めのお言葉をありがとうございます。
ブログを拝見しました。
今月から始められたようですね。
ご健闘ください。
相互リンクの件、了解しました。
先のコメントで塩熱循環とメキシコ湾海流との関係と言ったのは、非常に広い意味でのメキシコ湾海流の事です。つまり、南アフリカあたりから始まり、南米大陸に沿って北上して北赤道海流と呼ばれ、次にメキシコ湾海流と名前を変えて北上を続け、ニューファンドランド島付近で冷たいラブラドル海流と混ざり合い、北大西洋海流と呼び名を変えながら更に北上し、東グリーンランド海流と名前を変えてグリーンランド海に達する大きな海流の事です。「深海のyrr(中)」の452ページにこの記述があり、wikiのメキシコ湾海流でも似た説明がされています。(下記リンクを参照ください)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%82%B3%E6%B9%BE%E6%B5%81
この海流はメキシコ湾からニューファンドランド島に達するまでに、ヨーロッパへ十億メガワットの熱量(原子力発電所25万基分の発電量に相当)を運び、ヨーロッパを暖めているようです。(これも深海のyrrの452ページより)この大海流が最終的に冷たく塩分濃度の高い重たい海水となって、グリーンランド海の各所で、塩熱循環により表層から深海へ、煙突状に沈み込んで深層海流にかわるというように(小説では)なっています。グリーンランド海での沈み込みは、現在はまだ仮説なのかもしれません。この辺の知識は、謝辞の項目を見ると恐らく、ハンブルク=ハールブルク工科大学のギーゼルヘア・グスト氏のインタビューをもとにしていると思われます。小説ではこの仮説を更に大胆に進めて、この海流が止まる事で地球が氷河期へ突入する引き金が引かれると予測していますが、流石にその辺の理論はまだ無いのか、小説の中にも十分な説明はありません。
で、莫大な熱量をメキシコ湾からヨーロッパの北部まで運ぶ海流が、大量の氷が解ける事により塩熱循環の阻害によって止まるか弱まるかした場合、ヨーロッパの気候へ与える影響はかなりのものになるのかな、と思った次第です。
>つまり、南アフリカあたりから始まり、・・・更に北上し、東グリーンランド海流と名前を変えてグリーンランド海に達する大きな海流の事です。
これらの一連の流れを北大西洋亜熱帯循環と呼びます。北大西洋亜熱帯循環を「非常に広い意味」でも、「メキシコ湾流」とは呼びません。
細かいことを言うようですが、個々の言葉の正確な定義と正しい用法に慣れ親しむことによって、具体的な理解が得ることがより容易になります。新しい言葉に出会ったら、焦らず、慌てず、その言葉をマスターしてください。
>wikiのメキシコ湾海流でも似た説明がされています。
Wikiの記述でも、その冒頭に「メキシコ湾流とは、北大西洋の亜熱帯循環の西端に形成される狭く強い海流で、黒潮と並ぶ世界最大の海流である。」と明記されています。これが湾流の説明の肝です。
なお、Wikiの湾流の成因についての記述は誤りです。引用元が明記されていない日本語版Wikiを参照する場合、特に「書きかけ項目」の記載がある場合には、ご注意ください。
大分ご無沙汰しておりました。
あつさもひとしおましてまいりました。
まずは暑中お見舞いも兼ねてご挨拶させていただきます。
お体の調子はいかがでしょうか。
私の方は、普通・・・です。(苦笑)
深海のyrr。読みはイールでしたっけ?
最近、よく聞く機会はあるものの、まだ見たことがありません。
いつか物語として読んでみたいです。
「深海のyrr」のyrrの読みはイールです。本の表紙にイールと仮名が振ってあります。
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/31170.html
お盆休みにでも読めれば良いとは思っていますが・・・
http://blog.livedoor.jp/y0780121/archives/50071849.html
沈降地点って夏と冬でも違うと思いますし、常識的に考えて氷が解ければ、沈降地点もそれに合わせて北上するだけじゃないかと思います。ブログにも書きましたけど、グリーンランドの氷床がいくら急速に解けてもLake Agassizの代役は務まらないと思いますけど、どうでしょう?
以下はご紹介頂いたリンク元の記事へのコメントです。
>仮に海流の沈降スピードが熱塩循環の弱まりで減速しても即北極氷結になるというのも変だ。常識で考えれば、沈降地点がより北上するだけで、ますます北極海の氷が溶けるはずだ。現に北極海の氷は減少している。そもそもGCBというのは基本的に地球の自転に伴うコリオリの力によるものだ。熱塩循環は補佐ぐらいの役割しか果たしえないのに。仮に止まったとしても、コリオリの力は地球の自転が止まらない限り、なくなる訳ではない。GCBを動かしていたモーメントはどこに捌け口を見出すというのだろうか?
この解釈は厳密性に欠けています。
現在では、深層循環で世界の海の深層を廻る深層水はグリーンランド沖の狭い海域で局所的に沈降しているという考えに否定的な研究者が大勢と思います。
GCBは熱塩循環(深層循環)と表層循環を結びつけた海水の循環像であり、熱塩循環がなくなればGCBの土台が崩れます(深層循環の水はどこから来るのだろう、という疑問に対し、他の従来の知見も加えて説明を試みた結果がGCBです)。また、コリオリ力は運動を引き起こす力ではなく、自転している地上での運動を考えやすくするために導入された見かけの力です。コリオリ力でGCBが引き起こすことはありません(生活体験から全くかけ離れていますので、このコリオリ力の理解には多くの人が悩むと思います。Wunschさんの先生であった天才海洋物理学のStommelさんはコリオリ力について1冊の本を書いている程です。私も大学3年の時に悩み、結局、コリオリ力が関係しない風波の発達機構を卒論のテーマに選びました)。
日常生活・体験に基づく「常識」では計り知れないカラクリで自然が成り立っていることを思い知るのが科学の面白さだと私は思います。
>どう考えても例外的な仮説に過ぎないと思われるものが一人歩きして、それがあたかも必定であるかのように語られるのは一体どういう訳なのだろう。
検証が難しい仮説については、従来の知見に矛盾せず、従来の考え方(常識)を覆すものほど、有力な仮説として受け入れられやすい傾向にあると思います。この意味で、「塩分振り子」説は画期的でした。ただし、いかなる仮説であっても、それが実証されない限り「検証されていない仮説であって、間違いかもしれない」という認識が多くの人に共有されてないために、混乱が生じていると思います。また、検証されていない仮説そのものと、その仮説にに触発されたフィクションとの区別がつかない捉え方をしてしまう人が多いことも原因かもしれません。
「深海のyrr」についても「the day after tomorrow」と同じ状況が生まれることを危惧しています。
hiroichiさん、仰る通りです。上記は小説に影響された私の思い込みが原因の間違いでした。ご指摘、ありがとうございました。私のブログ記事を訂正致しました。
wikiにも北大西洋海流の記述がみつかりました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%A4%A7%E8%A5%BF%E6%B4%8B%E6%B5%B7%E6%B5%81
ところで、wikiによるこの北大西洋海流の説明には北赤道海流が含まれています。北赤道海流は赤道を挟んで、南大西洋から北大西洋へつながっているように見えます。(誤解であればご指摘ください)
南大西洋にも半時計周りの多きな海流があり、南極付近の冷たい海域に接しているように思います。南極の氷が大量に解けて、冷たい真水が増えれば、南太平洋の海流にも影響を与えそうです。
そして北赤道海流が、北と南の大西洋海流を(部分的にでも)つないでいるとすれば、温暖化によるヨーロッパへの影響は、北極だけでなく、南極も関連してくるように思えます。
このような考え方の方向性は正しいでしょうか。
>wikiによるこの北大西洋海流の説明には北赤道海流が含まれています。北赤道海流は赤道を挟んで、南大西洋から北大西洋へつながっているように見えます。
wikiの「北大西洋海流」のページに示された図はメキシコ湾流の項でも示されている図であり、メキシコ湾流や北大西洋海流を含めた北大西洋亜熱帯循環を示す図です。お気付きのように、この図は、北大西洋亜熱帯循環の説明図であるので、南赤道海流を明示してある必要はないのでしょうが、北赤道海流と南赤道海流が分離されていないという間違い(あいまいさ)があります。
赤道の北側を西向きに北赤道海流が、赤道の南側を西向きに南赤道海流が流れています(両者は同じ西向きです。間に東向きの赤道反流があります)。赤道大西洋の西端で南赤道海流の一部が赤道を横切って北赤道海流と合流していると考えられています。なお、赤道の北側と南側では地球自転の効果(コリオリ力)が逆向きになるため、赤道は力学的には壁のような役割を果たしています。したがって、赤道を横切る流れの力学の理解は簡単ではありません。
>南大西洋にも半時計回りの大きな海流があり、
アフリカ西岸を北上するベンゲル海流、南赤道海流、南アメリカ大陸東岸を南下するブラジル海流を含む反時計回りの一連の流れを南大西洋亜熱帯循環と呼びます。北大西洋亜熱帯循環と同じく海上の風によって引き起こされています。
>南極付近の冷たい海域に接しているように思います。南極の氷が大量に解けて、冷たい真水が増えれば、南太平洋の海流にも影響を与えそうです。
南極大陸を周回する南極周極流があるため、融氷による塩分低下は北極海ほどには生じないと考えられます。
>そして北赤道海流が、北と南の大西洋海流を(部分的にでも)つないでいるとすれば、温暖化によるヨーロッパへの影響は、北極だけでなく、南極も関連してくるように思えます。
インド洋からアフリカ西岸沿いにベンゲル海流によって北へ運ばれた海水が南赤道海流を経て北大西洋に入ると考えられており、南極付近での温暖化がヨーロッパの気候に及ぼす影響は小さいと考えられます。
しかし、ご想像通りでしょうか、コリオリの力というのが「見かけの力」というのはよく理解できませんでした。「運動を引き起こす力」との違いも分かりませんでした。
じゃあ、自転がもしなかったら、GCBは作動するのかとか疑問がわきました。
>赤道大西洋の西端で南赤道海流の一部が赤道を横切って北赤道海流と合流していると考えられています。
wikiの塩熱循環のページにある最初の図は、佐藤秀氏が言及しておられたグローバルコンベアーベルト(GCB)の事でしょうか。この図では水色の線(表層海流?)がベーリング海付近からはじまり、アフリカの喜望峰から北極近くまでつながなっています。これを見ると、あたかもこの経路で太い海流があるかのように錯覚してしまいます。(藍色の線は深層海流の事でしょうか?)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E5%A1%A9%E5%BE%AA%E7%92%B0
しかしながら、hiroichiさんの南・北赤道海流の繋がり方の説明を読むと、実際の海流はもっと細かくて複雑であり、単純化するのは間違いではないかとも考えます。それとも、個々の地域の海流とGCBとは、別々に考えた方が良いのでしょうか?
何度も質問してすみません。仕事がお忙しいでしょうから、時間のあるときで結構です。
「コリオリの力」が重要な役割を果たしている「回転系流体力学」を修めた人の間でも、コリオリの力を理解した方法は人によって異なります。学生に講義するときに、自分で理解できた方法が最も分かり易い方法と考えて、学生の理解を得るのに失敗した友人がいます。分からないからと言って落ち込む必要はありません。いろいろな解説を読んでみてください。そのうちに、分かるようになります(というか、どこかで踏ん切りが付きます)。
>コリオリの力というのが「見かけの力」というのはよく理解できませんでした。「運動を引き起こす力」との違いも分かりませんでした。
コリオリ力は実際に物体に働く力ではなくて、自転している地球に固定した座標系で見た物体の運動を理解するために導入された力であるため、「見かけの力」と呼ばれます。以下に、何故そうなのかを脇に置いて、結果だけを示します。
1)ある物体に働くコリオリ力の大きさは、その物体の速度(自転している地球表面に固定した座標系での速度=通常、測定できる速度)に比例します。
2)コリオリ力の向きは、その物体の移動方向(自転している地球表面に固定した座標系での向き)に向って、北半球では右手直角方向に、南半球では左手直角方向です。
1)から、自転している地球に対して静止している物体にはコリオリ力が働かない、すなわちコリオリ力は静止している物体を動かすことができない力(運動を引き起こすことができない力)であることになります。他方、物体から手を離せば、重力により物体は落下することでお分かりのように、重力は運動を引き起こす力です。
2)から、コリオリ力は速度の大きさを変えず、向きだけを変える働きがあります。また、赤道を境にして向きが逆になります。低気圧の周りの風が、北半球では反時計回り、南半球では時計回りとなるのはコリオリ力の向きが北半球と南半球で逆であるためです。
深層流を含め、空気と海水の全ての大規模で変動周期の長い水平運動はコリオリ力と圧力傾度力が釣り合うように(地衡流平衡が成立するように)流れています。コリオリ力は運動を引き起こしませんから、運動の原因は圧力傾度力(圧力分布=水温・塩分・海面高度の分布)であると言えそうですが、流れ(コリオリ力)が変われば、それと釣り合うように圧力分布(圧力傾度力)も変わりますので、運動と圧力傾度力とは鶏と卵の関係になっています。
>自転がもしなかったら、GCBは作動するのかとか疑問がわきました。
北大西洋深層の西側にのみ深層流が流れているのはコリオリ力の働きです。地球自転がない場合には太陽からの加熱の効果が変わります(1昼夜の長さが1年間)。このことから考えると話が長くなりますので、以下ではコリオリ力が働かない場合を考えてみます。このとき、大気循環では貿易風も偏西風もなくなり、この結果、黒潮や湾流を含む亜熱帯循環もなくなります。また、海底まで沈降した海水は海底一面に広がります。この結果、GCBは成立しなくなります。
>wikiの塩熱循環のページにある最初の図は、佐藤秀氏が言及しておられたグローバルコンベアーベルト(GCB)の事でしょうか。
はい、そうです。
>これを見ると、あたかもこの経路で太い海流があるかのように錯覚してしまいます。(藍色の線は深層海流の事でしょうか?)
GCBの中で表層を流れているところを水色線で、深層を流れているところを藍色線で表しています。
GCBの図は、海水が深層(熱塩)循環と表層(風成)循環を経て世界中の海を廻っていることを、種々の観測事実と矛盾なく説明する概念図、模式図であって、巨大な一連の流れがあることを流れの実測結果に基づいた図ではありません。
湾流、北大西洋海流、他の各海流の細かい経路に拘らずに、個々の海流を合わせて、北大西洋亜熱帯循環と呼ぶ大きな時計回りの渦として扱い、その成因・消長や気候システムでの役割を議論するのと同じです。
>しかしながら、hiroichiさんの南・北赤道海流の繋がり方の説明を読むと、実際の海流はもっと細かくて複雑であり、単純化するのは間違いではないかとも考えます。それとも、個々の地域の海流とGCBとは、別々に考えた方が良いのでしょうか?
その本質を取り出すために、複雑な現象を単純化して(仮説を構築して)、対象とする複雑な現象のカラクリの理解を深めることが、科学の営みの根幹です。なお、単純化作業には、その作業過程の説明が不可欠です。GCBの場合には、単純化作業の結果としての模式図だけが独り歩きしている傾向にあります。そのため、bobbyさんも混乱されたのだと思います。
GCBは、以下の観測事実の全てを矛盾なく説明する海の流れとして、多くの研究者に受け入れられています。
1)世界の海(以下では、外洋のみを示します)での炭素同位体比から得られる海水の年齢は、北大西洋深層で若く、北太平洋中層が最も古い。
2)世界の海では、常時、主水温躍層(深度1000m付近で水温がその上に比べて急に低下する層)がある。
3)世界中の海で、溶存酸素量(海面から供給され、生物により消費される)は中層よりも深層で高い。
4)深層の溶存酸素量は北大西洋で最も高く、北太平洋で最も低い。
5)深層の栄養塩(窒素、リンなどの溶存無機物。深層でプランクトンの糞や死骸が分解して生成される)濃度は北大西洋で低く、北太平洋で高い。
1)の説明として海洋化学者のBrockerさんが最初にGCBの概念を提案しました。ほぼ同時期に、Wunschさんの先生であるStommelさんが2)の海洋力学的説明として深層循環の存在を提案しましたが、GCBの図に比べて分かり易いとは言えなかったため、GCBが世間に広まったと言う人がいます(おそらく、そうなのでしょうが、確かめていません)。GCB提案の衝撃は、世界の表層から深層までの海水が大規模に循環しているという人々の心に響く解釈を具体的な形で提示したことから生まれたと私は思います。さらに「塩分振り子」説が人々の注目を浴びるのは、海洋のGCBが気候変動で果たすシナリオを端的に提示したことが要因と思います。
繰り返しますが、GCBはそれまでの種々の観測事実を矛盾なく説明する概念図、模式図です。世界各地のキーポイントの深層における流速の実測により、その存在は確認されていますが、変動特性や空間的繋がりなどの細かい点で不明な点が多く残されています。最近では、GCBにおける北極海の役割についての見直しが進んでいるようです。
>何度も質問してすみません。仕事がお忙しいでしょうから、時間のあるときで結構です。
ご遠慮なくご質問してください。このような説明、解説をするのが本ブログ開設の目的ですから。
リアル世界でのサイエンスカフェと同じですが、ご質問を受け、非専門家の人が疑問に思う箇所を具体的に知ることによって、専門家の独りよがりな解説に陥ることを避けることができ、喜んでいます(まだ、独りよがりなところが多いのではと危惧していますが・・・)。
<<出処を示さない伝聞の形でWunschさんを中傷しているように私には思える。
中傷する形でコメントを書いた訳ではありません。そのようにとられるのであれば、誤ります。I appologize. 私が問題視するのはAGWをサポートしないと大学での立場が無くなる、AGWをサポートする結果を出す研究にしかお金が出てこないという環境です。
私のコメントのバックグラウンドとしては、Carls Wunsch氏はRealClimateのサイトでこのドキュメンタリーに対する記事を投稿し、複数のブログにこの記事にリンクをする形コメントを3月に残していました。RealClimateはAGW論を広める運動の中心人物が運営するサイトです。このサイトをリンクする形でネット上複数のブログでコメントを残しています。(例:http://www.norcalblogs.com/watts/2007/03/gws.html 私はこのサイトが当初設立された時から読んでいます。このサイト今は大きなサイトになりましたが、2007年3月ではまだ小さなサイトでした。なのに…)
彼のビデオに対する気持ちはChannel 4へのレターやその後のChannel 4との経緯ではっきりしていると思います。それなのに、RealClimateのサイトでの記事の投稿、その後のブログへのコメントで彼を知る人でさえ、ここまでネット上で行動をとる必要があるのかと疑問に。これは元MITの教授のサイトでも取り上げられています:http://motls.blogspot.com/2007/03/great-global-warming-swindle.html
If you want to know which scientist is gonna complain that he has been misrepresented, it is Carl Wunsch. Well, just like in many similar cases, there are two Wunsches. One of them is a rational scientist who has contributed some of his technical knowledge to the documentary. The other Wunsch is controlled by his brainwashing movement and generates scientifically vacuous, alarmist, and unfriendly politicized misinterpretations of the documentary and his role in it on RealClimate.ORG.
OfcomがCarl Wunsch氏の抗議について正式に発表しているのが:http://www.ofcom.org.uk/tv/obb/prog_cb/obb114/issue114.pdf 70ページからです。
この発表についてhttp://www.climateaudit.org/?p=3334の取り扱いがベストかと思います。
Again, I appologize if my comments went to attacking Mr. Wunsch's character. This was not my intent. I think the bigger issue is the environment that exists at Universities. That is my main point I wanted to make in my comment.
MikeRossTky
私なりの理解では、コリオリ力というのは、地球表面にある大気や海水(湖水でもいいんでしょうが)のような流体が何らかの契機で動くと、自転による角速度が違ってくる。なぜなら、角速度は緯度が高くなれば減り、垂直的にも海洋の深度が深くなれば、わずかだが角速度が海面より弱くなる。
すると、流体は流体自身の速度(動く契機)と角速度の合力で動くので、動くことによって角速度が増減する。その増減の影響をコリオリ力と呼ばれている。
しかし、コリオリ力そのものは流体が動く契機と見なせないから「見かけの力」と呼ばれているということでしょうか?
コメントをありがとうございました。
本記事をアップしたとき、貴ブログにTBしたのですが、機能しなかったようでした。改めて、貴ブログのコメント欄に通知しようとも思いましたが、「苦言」を敢えてお伝えする必要もないと考え、放置しておりました。失礼しました。
さて、頂いたコメントですが、正直なところ、何をどのようにお答えしたら良いのか判断に苦しんでおります。冒頭で
>中傷する形でコメントを書いた訳ではありません。そのようにとられるのであれば、誤ります。
I appologize. 私が問題視するのはAGWをサポートしないと大学での立場が無くなる、AGWをサポートする結果を出す研究にしかお金が出てこないという環境です。
と述べておられますが、以下の文は「研究環境」の説明や元コメントの訂正ではなくて、私が言う「中傷」のバックグランドの紹介です。
私はMikeさんの謝罪を求めていませんでしたが、謝罪されるのでしたら、私でしたら、元のコメントを誤解されないような修正案と提示して、確認を求めます。この作業を通して、Mikeさんと私の、Wunschさん、あるいは「研究環境」についての理解が深まると思います。
私が、柏野さんの記事については「中傷」などの言葉を使わず、他方、Mikeさんのコメントについては「中傷しているように思う」と述べたのは、柏野さんは自分の感じたこと、思ったことを述べているのに対し、Mikeさんのコメントは出所が不明だからです。紹介されたコメントのバックグランドは、具体的な根拠・証拠ではなくて、他の人が言っている避難・中傷や勝手な推測の紹介でしかないと私は感じました。「風説の流布」に通ずることを懸念します。
>この発表についてhttp://www.・・・・の取り扱いがベストかと思います。
Mikeさんは紹介されたブログの記事に完全に同意されているのでしょうか? ご自分の言葉で発言して頂かないと、議論は成立しないと思うのですが...
拙ブログの以下の記事を参照して頂ければ、幸いです。
http://blogs.dion.ne.jp/hiroichiblg/archives/7321108.html
佐藤さんのご理解は回転座標系における「渦位保存則」という、コリオリ力ではなくて、コリオリ係数の緯度変化に関わる、1ステップ難易度の高い話題に関係しています。ここで、コリオリ係数とは、私の先の説明コメントで「コリオリ力の大きさ」について述べた箇所でのコリオリ力と速度との間の比例係数です。この話は、これで非常に面白いのですが(関連する語句として、例えば、ロスビー波、慣性振動、があります)、非専門家の人には高度過ぎると思いますので、これ以上は触れません。
目に見えるコリオリ力に「フーコーの振り子」があります。振り子は地球の自転に関係なく(慣性座標系)に固定した面内を往復していますが、地上に固定している人間(回転座標系)から見ると、何も回転させる力は加わっていないのに振動面が回転しているように見えます(北半球では時計回り、北極点上で考えると容易に想像できます。南半球では反時計回り)。この回転を起こす力がコリオリ力です。
Wikiによると、フーコーの振り子は日本各地の博物館で見れるとのことです。
昨日の私の説明を読み返すと、第1段落の記述はかなり不親切な説明をであったことに気付きました。回転座標系、渦位保存則、ロスビー波、慣性振動の語句を詳しい説明なしに使い、さぞかし面喰い、途方に暮れたことと思います。お詫び申し上げますとともに、昨日の私の説明の第1段落を削除させて頂きます。
佐藤さんの直観的なコリオリ力のご理解の内容は、間違ってはいるのですが、佐藤さんの理解していることを土台にどのように説明したら良いのか、苦慮しています。以下はその試みです。
>流体が何らかの契機で動くと、自転による角速度が違ってくる。
地球自転角速度(W:360度/24時間)は地上ではどこでも同じです。ただし、自転の効果は緯度に依存して変化します。これは、北極点では回転軸ベクトルが鉛直上向き(大きさはW)になっていることを北極点以外の緯度がLの点でも援用すると、そこでの地球自転軸ベクトルの鉛直上向き成分の大きさが
W・sin(L)
で表されることに対応しています。このことは、赤道(L=0)では自転の効果はゼロ、南極ではーWと欲協を逆になることを示しています。
>流体は流体自身の速度(動く契機)と角速度の合力で動くので、
物体の運動量(直進運動の強さを表す物理量:質量×速度)と角運動量(回転運動の強さを表す物理量)は異なる物理量です。
流体について、剛体の角運動量に対応するのが、渦度です。渦度には惑星渦度、相対渦度、絶対渦度があります。惑星渦度は地球自転による渦度で
2W・sin(L)
で表されます(惑星渦度=コリオリ係数)。相対渦度は流体の回転を表し、時計回りの渦(東向きの流速が北に行くほど大きい時)には負の相対渦度を持っていると言います。絶対渦度は相対渦度と惑星渦度の和です。
海水密度が一様な、深さがHの海では、渦位(=絶対渦度/H)が保存されます。Hが一定な場合には、惑星渦度が増えると(渦が北へ移動すると)、相対渦度が減ります(時計回りの渦が強くなります)。同じ緯度でHが小さくなると、相対渦度も小さくなります。
加速・減速させようとする外力が働かなければ運動量は保存されます。これを「慣性の法則」と言います慣性の法則が成立する座標系を慣性座標系と言います。
私たちの日常生活の場では慣性の法則が成り立っているように見えます。しかし、地球は自転しているため、厳密には慣性の法則が成り立っていない回転座標系の世界です。この回転座標系の世界を慣性座標系で考えるために導入されたのが、コリオリ力です。
フーコーの振り子は私も一度ならず見たことあります。
私の問題意識は「見かけの力」というネーミングにしっくり来なかったということに尽きるかと思います。
>厳密には慣性の法則が成り立っていない回転座標系の世界です。この回転座標系の世界を慣性座標系で考えるために導入されたのが、コリオリ力です。
日常的意識では慣性系だけども現実には回転座標系の世界だということの意識のギャップを修正というか翻訳するためにコリオリ力という概念が導入されたということでしょうか。
でもまだしっくり来ません。相対的に見れば「見かけ」じゃない、現実世界で作用しているのだからfictitiousじゃないという意識はまだあります。
それから前の角速度の表現、角運動量のつもりで書いていたみたいです。自転の効果は赤道では0になるというのは、コリオリ力が及ぼす自転の効果という意味なんですね。フーコーの振り子は赤道では回転しないということですね。
(^^)/
でもhiroichiさんの説明は、高校の理科の教科書に出てくる「コリオリの力」とは、かなり違う気がします。
私も素朴に「コリオリの力」って見えるじゃんと思うんですが・・。
議論は「見える、見えない」のレベルを越えた話に突入していますけど・・・。
一身上の都合により本日を持って、LOVELOGの更新をやめました。
以前にもご教授くださいました御礼とご挨拶を兼ねて伺いました。
また、別のblogで何かのご縁で知り合う機会があればと思っています。
それではお体を御自愛くださいませ。
失礼します。
突然の貴ブログ更新停止のお知らせに驚いています。貴ブログに
>LOVELOGの方でページ送り機能を追加されたことにより、私のようなblogで障害が発生しやすいことはLOVELOGのお知らせにより皆さんもご承知と思いますが。
と書かれているのを拝見しました。対応の悪さに業を煮やしての記事末梢・更新停止とのこと、了解しました。新たなブログが決まりましたら、お知らせください。
1)風成循環は、海表面の風の応力によって大洋に水平方向に合成された流れを生じさせる。
2)ある一地方で、ある特定の期間(季節・年)に吹く、最も頻度が多い風向の風を卓越風という。
3)地球上には、3種類・6つの大規模な卓越風が南北半球にある。
4)赤道に近い低緯度では貿易風、中高緯度では偏西風、高緯度地方では極東風である。
卓越風により、恒常的な流れである海流が生まれる。
5)海流(かいりゅう)は、地球規模でおきる海水の水平方向の流れの総称。
6)海流は、コリオリの力により北半球では風の進行方向の右手に、南半球では左手側へ流れる。
7)海流は大陸にぶつかると、大陸に沿って海流北半球では時計回り、南半球では反時計回りに流れる。
8)太平洋、大西洋、インド洋では、大陸をあいだを、北半球は時計回り、南半球は反時計回りの海流が生まれる。
上記のつながりは、私が勝手に想像したものですが、太平洋、大西洋、インド洋の海面をそれぞれ循環する海流は、どのようなしくみで生まれるものなのでしょうか?
新たなエントリーでお二人の説得を試みています。多分、まだまだ疑問は解消されていないと思います。ご遠慮なく、さらなるご質問をお願いします。
佐藤 様
>それから前の角速度の表現、角運動量のつもりで書いていたみたいです。
両者の違いをご理解いただいて、幸いです。
>自転の効果は赤道では0になるというのは、コリオリ力が及ぼす自転の効果という意味なんですね。
そうお考えになっても間違いではないようにも思いますが違和感があります。
「自転の効果は赤道では0になる」というのは、「コリオリ力あるいはコリオリ係数が0」になるということです。
>フーコーの振り子は赤道では回転しないということですね。
はい、そうです。
>上記のつながりは、私が勝手に想像したものですが、太平洋、大西洋、インド洋の海面をそれぞれ循環する海流は、どのようなしくみで生まれるものなのでしょうか?
この話題の解説は、XENAさんとのお約束もあり、拙ブログのかなり以前からの宿題でした。別エントリーでお話ししますので、しばらくお待ちください。
別エントリーの記事を、楽しみにしています。