「亀@渋研X」さんのご推察の通り、私が気になったのは、PISAの定義の述べている、例えば「科学の特徴的な諸側面」や「科学的な考え」という言葉があまりにも漠然としていることであった。概念の定義であるから仕方がないとも思うが、「科学の特徴的な諸側面」とは具体的にはどのような側面であるのか、あるいは「科学的な考え」とは具体的にどのような考え方なのか、を明示しなければ、定義としては不十分であると考えた。
ネット検索で、国際基督教大学の北原和夫さんが研究代表者となって、平成17年度年度科学技術振興調整費によって「科学技術リテラシー構築のための調査研究
」が始められていることを知った。
そのHPに記載されている研究目標には
・・・日本の社会、経済、産業などの現状に相応しい科学の知識と素養とは何かを検討し策定することです。すなわち、科学技術の成果が生活に大きく影響を与える現代において、国民が責任ある個人として充実感をもって社会に寄与してゆくためにどのような科学の知識と素養を持つべきかということについては、様々な分野にわたっての広域的検討が必要であると考えられます。と述べられている。
科学リテラシーとは良き市民が持つべき普遍的なものと考えている私にとって、この研究で目指している「科学リテラシー」とは科学技術立国のために国民に必要な「科学の知識と素養」と定義されるのだろうかと疑問を感じた。
他方、PISA2006における科学リテラシーの詳細が12月8日に開催された第12回教科「理科」関連学会協議会 [CSERS] シンポジウム「市民として身につけるべき科学リテラシー」において、国立教育政策研究所の小倉康さんによって紹介されていることを知った。
角皆さんから頂いた当日配布された資料によると、PISA2006の調査問題では、調査問題全体として総合的に科学リテラシーが捉えられるように、科学リテラシーの構成要素ごとの構成割合が以下のように設定されているとのことである。
能力配布資料には、科学リテラシーの3つの構成要素である「科学的な能力」、「科学の知識」、「科学についての知識」の各々のカテゴリーの詳細が示されているが、ここでは割愛する。私は、科学リテラシーの3つの構成要素のいずれも重要であるが、特に「科学についての知識」を伴わない「科学的な能力」と「科学の知識」は、科学信仰あるいは科学万能主義を蔓延させ、良き市民の指標とはならないと思う。今後、PISA2006で述べている「科学についての知識」を基に、さらに良き市民の指標となる科学リテラシーについて検討したい。
科学的な能力(合計100%)
・科学的な疑問を認識する(25-30%)
・現象を科学的に説明する(35-40%)
・科学的証拠を用いる(35-40%)
知識
科学の知識(小計60-65%)
・物理的システム(15-20%)
・生命システム(20-25%)
・地球と宇宙のシステム(10-25%)
・テクノロジーのシステム(5-10%)
科学についての知識(小計35-40%)
・科学的探究(15-20%)
・科学的説明(15-20%)
なお、「亀@渋研X」さんは、科学リテラシーとは「科学的な方法とはどういうものかを理解して、使える」ということと要約されている。この定義では、「どういうものか」の中に「科学についての知識」が含まれているかもしれないが、「科学リテラシーの3つの構成要素」の中の1つである「科学的な能力」についての説明に限定してしまっているようにも思う。