13日のNHKニュースウォッチ9の内容は11月1日のNIKKEIBPの「【スクープ】地球シミュレータが08年度で停止、次期機は汎用製品で100テラを目指す」を後追いしたものであったようだ。NIKKEIBPでは「09年度中に次期地球シミュレータを稼働させたい考えだ」と記述しているのに、NHKニュースウォッチ9の報道では、「運用停止」を強調している。NHKの後追い記事として14日夕方付けで<asahi.com:「地球シミュレータ」部品交換で能力2倍に 海洋機構>が報じられている。結局、「海理学のブログ」の19日のエントリー「地球シミュレータ」運用停止へのコメント欄で述べているように、
メインの演算装置を地球シミュレータと呼ぶなら、リプレース=地球シミュレータ運用停止、
計算システム全体を地球シミュレータと呼ぶなら、リプレース=部品交換、となるんでしょう。
そう言えば、某計算システム計画・運用部の『次期システム計画グループ』が、今年度から『システム高度化グループ』に名称変更したのは、ひょっとしたら、その辺の微妙な問題があったんですかね。
ということのようである。Komorinさんは好意的な見方をされているが、私に言わせれば、NHKニュースウォッチ9の内容は誤報に等しいといえよう。NIKKEIBPでは、「コンピューターの国際的処理速度競争」については言及していない。結局、、NHKニュースウォッチ9は「地球シミュレータによる研究内容ではなくて、地球シミュレータが世界最速のスパコンであった」ことのみに注目していたと言ってよい。
この「コンピューターの国際的処理速度競争」について、NHKの報道があった13日夜には、「5号館のつぶやき」さんと「池田信夫ブログ」さんが、批判的に言及している。「5号館のつぶやき」には9件、「池田信夫ブログ」には114件のコメント(上のNIKKEIBPの記事は、その中で提供された情報です)が投稿されている。また、「池田信夫ブログ」さんは、23日に<スパコンの戦艦大和「京速計算機」>と題する関連エントリーで更に批判を加えている。このエントリーにも42件のコメントが投稿されており、今や「地球シミュレータの運用停止」より「京速計算機の開発の是非」に主な論点は変わっている。
なお、「池田信夫ブログ」へのコメントを読むと、いわゆる問題意識の高い人々の中にも、例えば
要は「その計算に1150億円以上もの金をかける必要があるのか?」というコストパフォーマンスの問題です。地球温暖化のシミュレーションなどは検証しようもない研究者の自己満足のための計算です。そのような自己満足の計算のために1150億円もの費用を掛けるのは正気の沙汰ではありません。のような、地球シミュレータを用いた数値予測モデル計算の意義と限界や、モデルの計算結果の検証・予測精度向上を目指している私たちの観測研究活動などについての理解が十分に得られていない状況が分かり愕然とする。
この点、21日朝の「Intersecting Voice Cafe」さんのエントリーは、良く理解されている方と思う。特に、
問題なのは、多くの変数(例えば温度、湿度、風向き、風速だけでなく、過去のデータやさまざまな条件)を飲み込んだ従順な計算機に過ぎないスパコンの排泄物から、結局、今は人間だけが大気現象を読み取ることができ、理論的理解に至ることができるということ。そして、その人間の数が足りないんじゃないかということ。という指摘は的を得ていると思う。なお、「Intersecting Voice Cafe」さんが示した格子点間隔についての疑問は、大気海洋結合モデル(CFES)で10分の1度(約10km)と私は記憶しているが自信はない。より細かい格子点間隔のモデルで雲の発生も研究されている。
ともかく、地球環境研究について、その基本をもっと広報する必要のあることを痛感している。
大気が 1/2° (50 km) で海洋が 1/4° (25 km) ぐらいです。
TBいただき、また拙ブログに言及いただき、ありがとうございました。付け焼刃の知識で書いておりますので、恐縮です。
現在IPCCレポートを読む勉強会に参加しておりまして、これからも継続的に考えて、エントリーUPしていきたい話題です。
http://blog.goo.ne.jp/hamarie_february/e/9ec0198b89fb14a19d5685d29d1beea4
今後ともよろしくお願いします。
CFESの格子点間隔について、ご教示をありがとうございました。
勉強不足で、CFES、OFES、AFESの各々の概略を示す表を見つけることができませんでした。
>hamarie_february様
こちらこそ、よろしくお願いします。
IPCCレポートの原文を読まれているとのこと、素晴らしいことと思います。頑張ってください。