日本からはブイ観測を行っている私のグループから3名と数値モデル研究を行っている地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)から1名、米国からはブイ観測を行っている米国大気海洋庁(NOAA)太平洋海洋研究所(PMEL)のグループから3名、主として数値モデル研究を行っているハワイ大学国際太平洋研究センター(IPRC)他から10名程度が参加した。参観者のほとんどが研究意欲溢れる旧知の30から40代の人たちで、非常に気持ち良く、黒潮続流域における大気海洋相互作用についての研究の現状と将来計画について活発に意見交換することができた。さらに、今回の会合参加者を主な構成員とする組織を立ち上げて、国際的活動を推進することとなった。
この会合初日の夕食会場へ移動する車中で、米国における科学報道が話題になった。
米国では、いわゆる学界でほとんど通説となっていることを補強・補完する新事実の発見などを報道する際にも、必ず、そのことについての批判的な意見・談話を最後に加える。ほとんどの研究者が受け入れる成果を批判する研究者の数が少ないため、批判的な意見・談話を述べることのできる研究者は限定される。その結果、科学的裏付けなしに異論・反論を繰り広げる特定の研究者のマスコミ露出量が増えるという状況にあるとのことである。
日本の多くのマスコミ報道がNatureなどの科学雑誌に掲載された新説などを無批判に掲載することを非難している私にとって思いも付かなかった状況である。「科学的裏付けのない異論・反論記事」を排除するためには、記者および読者の科学リテラシーを高めるしかないと思う。
なお、同じようなことを、「市民のための環境学ガイド」の「理想的な温暖化防止対策の枠組みとは11.18.2007」の冒頭で安井さんが、
バレンシアでのIPCCの総会が終わって、本日の新聞は温暖化関係の記事満載である。その中でも、日経のSunday Nikkei α欄に掲載された塩谷喜雄論説委員の中外時評「決着した温暖化論争」は、是非お読みいただきたい。と述べている。私としては「感情的な反発」に迎合する非科学的な言説に惑わされるのは問題外であると思うが、「環境派が気色ばんで危機を触れ回る」のも多くの問題を含んでいるとも思う。「二酸化炭素排出削減」だけが地球温暖化対策ではないし、持続的発展の唯一の道でもない。複眼でものごとを見て、考え、行動する必要があると思う。
その論説から一文だけ引用しておきたい。「環境派が気色ばんで危機を触れ回るのに感情的な反発を覚える人がいれば、小気味よくその行き過ぎを指摘する言説が世間の注目を集めるのは当然かもしれない」。