2007年08月05日

サイエンスリテラシー

昨日午後に、茂木健一郎さんがソニー教育財団講演会で理科教師を対象として科学と科学教育について行った90分間の講演・質疑応答の録音記録「科学という文化」を聴いた。その内容は、日頃、私が科学研究について思い、考えていることと多くの点で一致しており、大いに力付けられた。


英国での留学体験から、欧米の研究者たちは議論の進める際に必ず「証拠:エビデンス」も提示していること、自分の主張・研究成果を相対化していることを紹介して、これらのサイエンスリテラシーが英国ではおそらく小中学生時代の教育をとおして「文化」となっているのだろうと述べている。

上で述べたサイエンスリテラシーが日本では普及していないことを、自分の大学院教育での経験、日本のマスコミ報道のあり方や2チャンネル、日本語版ウィキペディアでの匿名発言・寄稿を例として挙げ、日本人の1%程度しかサイエンスリテラシーを理解していないのではないかとの認識を示している。また、今、最も注目されている理論物理学者の一人であるリサ・ランドールさんとの対談から「良き市民」にはサイエンスリテラシーが備わっていることを述べている。

科学研究の喜びに関して、「他人との関係性」の重要性が強調されている。茂木さんの説明では「他人との関係性」とは「他人から認められること」であるとのことだが、この表現は私には不十分なように思う。「他人との関係性」は他人への「貢献、寄与」と他人から受ける「支援・厚情」、いうなれば孤独ではないということを実感することではないだろうか?

科学教育に関連して、「他の人と違ってもいいんだ」ということを子供に伝え、各々の子供が持っている可能性を一緒に探すのが教育だという。全く同感である。

脳科学者による、人間の思考・行動を脳の各部の機能などと結びつけて述べた講演であり、興味深い内容ではあった。ただし、分析的・合理的・物質的なアプローチで得られ研究の成果を聞いていると、どこか違和感も感じる。

上で述べたことは、録音された講演を聴いて自分なりに感じたことの一部である。他にも印象深い問題提起が多い。是非、元の録音記録を聴かれることをお勧めする。

日本のマスコミ報道におけるサイエンスリテラシーの欠如の実例は、中国からの輸入食品の安全性についての報道に関してY日記でも指摘されている。「良き市民」が一人でも多くなることを願って、私もサイエンスリテラシーの普及に微力ながら努めたいと思う。
posted by hiroichi at 15:59| Comment(0) | TrackBack(3) | 科学リテラシー | 更新情報をチェックする
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