2007年05月03日

「地球温暖化のメカニズムの嘘」について

「らくちんランプ」さんが「地球温暖化のメカニズムの嘘」と題するエントリーで,
「地球温暖化のメカニズムの嘘」とは、「未だに人類が海洋生態系の実態を解明していないのに、海洋によるCO2吸収量が判明しているものとして成り立っている嘘である」と言い替えるのが、より適切な表現かもれません。
 また、「地球温暖化のメカニズム」の真の姿を解明する為には、 地球環境フロンティア研究センターのような公的研究機関による研究(参照:海洋生態系モデル研究グループ)を、結論ありきの偽りの研究にさせないために、その途中経過を監視する必要すら生じていると思います。

 それにしても、為政者達の金儲けのために協力している「エセ科学者」と、為政者達の嘘に気付いているのに、その嘘を暴こうとしないマスゴミに寄生している連中に対しては、自分の地位保全と金儲けのためには、世界中の人々に間違った常識を植え付けることに、後ろめたい気持ちすら持ち合わせていない「餓鬼」以下の存在なのかと言いたい気持ちです。
という表現で,「二酸化炭素悪玉説を声高に叫んでいるエセ科学者共」を非難しています.

社会の動きについて真剣に考え,発言されている「らくちんランプ」さんに敬意を表します.また,科学者の権威を疑い,IPCCの裏で行われていることを批判されることについて反対するつもりはありません.しかし,科学研究の方法について誤解されているようなので,老婆心ながら以下にコメントします.

科学研究の手法を地球温暖化予測に即して述べると,
1)過去の状況(気温の長期変動とそれに関連すると思われる要素の変動)を,その誤差を含めて把握する.
2)過去の状況を整理して,過去の気候変動を説明する主な要因を取り入れた仮説(概念モデル)を構築する(概念モデルの作成作業中に新たな要素の変動の資料を収集したり,資料解析を新たな方法でやり直したりする場合もある).
3)仮説に基いて作成した数値モデルによって過去の現象が再現されることを確認する.あるいは,その数値モデル結果を確認するために新たな観測を行う.仮説が正しいことを確認できない場合には,1)および2)をやり直す.
4)現在までの数値モデル計算を将来まで延長して,将来を誤差を含めて予測する.

現在の温暖化予測作業は3)と4)の中間です.3)には,1)と2)も含まれます.

ここで注意しなければならないのは,このような数値モデルが現在までを再現できても,今までは大きな役割を果たしていなかった要因によって,その数値予測モデルを全く適用できない場合もあるということです.未来は現在からの連続として捉えられない可能性があります.現在の地球環境は宇宙,大気,海洋,陸,生態系の微妙なバランスで成り立っています.これらの要因の一つが人為的にわずかに変化することによって,地球環境が大きく変化する可能性があります(このようなことは,自然現象ではありませんが,例えば株価の変動で顕著です).そうならないためには,卓越した想像力を持って,今までの地球環境変動を出来るだけ詳細に理解する必要があります.

「らくちんランプ」さんが重視している生態系や水蒸気の気候変動に及ぼす影響を含めるか否かは2)の仮説の構築に関連しています.1)によって生態系や水蒸気の役割を明瞭に示す観測結果が提出されれば(このことが非常に難しいのですが),それらはモデルに取り込まれます.今でも一部の革新的なモデルでは生態系の変化が取り込まれてはいますが,まだ,その可能性の指摘に留まっています.

例え,科学研究の結果を捻じ曲げて政治的に利用しようとしても,観測によって研究成果の正否は審判されます(時間はかかりますが).科学研究の目的は「真理の探究」であると言われることが多いのですが,科学とは真理を「探求」する過程(プロセス)です.すなわち,科学とは,「対象世界の無矛盾性,因果性,斉一性を前提として,観測という自然による審判に従いながら,普遍的な経験知を獲得する一つの過程」です.つまり,試行錯誤の繰り返しです.

なお,温暖化研究の現状については,
温暖化いろいろをご覧下さい.また,私は安井さんのスタンスに必ずしも同意しませんが,「市民のための環境学ガイド」の温暖化はニセ科学?
もご覧下さい.

データ解析結果「ホッケースティック論争」についての研究者達の苦闘振りについては
http://web.sfc.keio.ac.jp/~masudako/memo/hockey.html
をご覧下さい.

「らくちんランプ」さんのご発言が,これらのサイトをご覧になった上でのものでしたら,上に述べた私の余計なコメントをスルーしてください.
posted by hiroichi at 19:24| Comment(62) | TrackBack(3) | 温暖化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
私のブログ記事を紹介していただき、有り難うございます。
さて、私は現在の地球の温度の上昇は、人類の営みをも生態系の一部だと捉え、「下降局面に入る前の上昇期」だと考えています。
そして今後人類が、温暖化対策で二酸化炭素削減対策を講じた結果、温度上昇が抑制されたとしても、そんなものは後から取って付けた屁理屈にすぎないと思います。

>科学とは真理を「探求」する過程(プロセス)です.
その通りだと思います。それにしても科学者のウソが多すぎると思います。
仮説なら仮説だと言うことをもっと強調しろ!と言いたい物です。
他方、科学者の「曖昧模糊」とした物言いを、金儲けや人殺しの道具に「化粧」している、ずるがしこい奴の存在を、もっと世に知らしめる必要があると思います。
Posted by スパイラルドラゴン at 2007年05月04日 18:07
スパイラルドラゴン様

ご返答をありがとうございました.

>私は現在の地球の温度の上昇は、人類の営みをも生態系の一部だと捉え、「下降局面に入る前の上昇期」だと考えています。

人為的活動がなかった過去に自然変動として起きていた気候変動が人為的活動が加わった後も同じように繰り返されるかどうかは分からないと思います.

>その通りだと思います。それにしても科学者のウソが多すぎると思います。
仮説なら仮説だと言うことをもっと強調しろ!と言いたい物です。

「科学とは真理を「探求」する過程(プロセス)」であるということを多くの人が理解していない現状では,こう言われても仕方がないとは思います.
「科学者」の権威を堅持するために全てを解決したかのような嘘の発言を繰り返す「似非科学者」を排除するのは科学者の責任とも言えますが,単純・明快な答えを求め過ぎる世間の風潮も変える必要があると思います.多くの仮定・限定条件の下で得た結果を厳密に分かりやすく説明することは至難の業です.温暖化問題について言えば,その科学的基礎知識の普及が最も必要と思います.

>他方、科学者の「曖昧模糊」とした物言いを、金儲けや人殺しの道具に「化粧」している、ずるがしこい奴の存在を、もっと世に知らしめる必要があると思います。

科学の本質を理解し,問題の解決を科学者に任せる,あるいは科学者の単純化した結論を鵜呑みにするのではなくて,自分の頭で考える人が多数を占めれば,「似非科学者」や「ずるがしこい奴」が存在する余地はなくなると思います.物事を複眼視し,発言の裏(の裏)に隠された意図を読み取って,自分の頭で考える人(科学的思考法を身につけた人)が一人でも増えることを願っています.
Posted by hiroichi at 2007年05月05日 01:22
こんにちは。地球温暖化と海洋は切っても切れない関係ですね。hiroichiさんのブログも、このような話題が盛り上がった時には、しばしば拝見させて頂いております。本記事でも、hiroichiさんの抑制された反論を興味深く読ませて頂きました。

さて、現在の地球温暖化論で私が不審に感じる事がいくつかあります。まず1つは、氷床コアによる過去数十万年の大気中の二酸化炭素値は精度の低い推測地であるのに、過去数十年の実測地をつなげてひとつのグラフとする事で、グラフ全体の素人騙しの詐欺的行為を行っている事です。

もう1つは、現在の温暖化は過去数万年でもっとも進んでいるかのような記述が多くみられますが、考古学的の資料を見ると、これは間違いであると考えられます。縄文時代後期は現在より気候が温暖で、東北でも(改良されていない大昔の稲で)稲作が行われていた事が遺跡調査により判明しています。また貝塚の位置を見ても、海岸線がいまよりずっと内陸部にあり、海面が今よりずっと高かった(つまり縄文時代の方がいまより地球温暖化が進んでいた)という考え方もできるわけです。
しかしながら、そのような内容はいまの温暖化レポートには見られません。このような状況を見ると、地球温暖化の証拠を集めている学者の方々へ不信感がつのるのもやむをえないのではないかと思うのです。
これは、真面目に研究をしていhiroichiさんのような学者の方々には大変迷惑だと思います。プロの目で、人為的二酸化炭素排出論以外の、いろいろな学説や仮説や、学界での状況などを伝えて頂ければと思います。
Posted by bobby at 2008年05月15日 19:32
bobby様

コメントをありがとうございます。

>地球温暖化の証拠を集めている学者の方々へ不信感がつのるのもやむをえないのではないかと思うのです。これは、真面目に研究をしていhiroichiさんのような学者の方々には大変迷惑だと思います。

迷惑とは思っていません。

私が専門外の人にお話しするときには、どうしても分かりやすさを優先し、その結果、厳密さに欠けた、一部を誤魔化した内容になってしまいます。
参考:http://blogs.dion.ne.jp/hiroichiblg/archives/6105904.html

ですから、不信を持って私の話を聞き、つっこまれた方が、さらに詳しく説明する糸口となり、また専門外の人の質問が新たな発想を引き出すこともありますから、私としては、むしろ歓迎します。

スタートとしては「専門家の言うことを何でも信じる」よりは「専門家に不信を抱く」のが専門外の人(例えば生命科学については、私も専門外の人です)の望ましい姿と私は思います。一部の専門家は、自分の信条の正当性の強化や売名のための道具として「専門家の権威」を使っているように思います。このような専門家に専門外の人が不信を抱くのは当然です。まず、「多数派であれ、少数派であれ、専門家の言うことを疑う」ことが、新たな知識についての偏らない理解を深めるためには必要です。

次のステップは、専門家が専門外の人の理解を得るために、更なる証拠を示す番です。その際、何が分かっていないのか、何を前提としているのか、そのデータの出処は何か、などの事実を明示することが必須です。この証拠の提示には専門家の政治的立場、信条やライフスタイルは関係ありません。専門家も専門外の人も、各々、自分の信条を離れて、共有する客観的事実のみに基づいて議論し、対象についての共通理解を深め会う努力を続けるが本当の科学だと私は思っています。

>プロの目で、人為的二酸化炭素排出論以外の、いろいろな学説や仮説や、学界での状況などを伝えて頂ければと思います。

ご期待頂いて光栄です。
折に触れて、少しずつ、お伝えしていきたいと思っています。
Posted by hiroichi at 2008年05月16日 02:48
お世話になります。以下に質問を入れさせて頂きます。

1)海洋の表層水が吸収する大気の二酸化炭素が飽和レベルに達しているというのは、定説レベルなのでしょうか、それとも新しい仮説の一つなのでしょうか?
2)熱塩循環は「弱まっている」と考えられているのでしょうか?
3)弱まっていると考えられる場合、原因についての有力な仮説はあるのでしょうか?

宜しくお願いします。

Bobby
Posted by bobby at 2011年12月23日 12:39
bobby様

1)海洋の表層水が吸収する大気の二酸化炭素が飽和レベルに達しているというのは、定説レベルなのでしょうか、それとも新しい仮説の一つなのでしょうか?

「飽和レベルに達している」ということを私は聞いたことがありません。可能でしたら、そう言っている論文をお知らせください。読んでみます。

現在は海洋がCO2を大気から吸収しているが、温暖化が進行した場合に、海洋から大気へCO2が放出されるようになる(かもしれない)ということは聞いたことがあります。地球温暖化CO2起源説では、化石燃料の消費による大気へのCO2の人為的排出速度(排出総量の時間的な増加率)が海洋による吸収速度(大気と海洋の濃度(分圧)差が大きいほど増加する総吸収量の時間的な増加率)を上回っているために、大気中のCO2濃度が上昇し続け、このことが温暖化を起こしていると考えられています。

2)熱塩循環は「弱まっている」と考えられているのでしょうか?

一時、「弱まっている」ことが観測で検知されたという報告があり、注目を集めましたが、その後、結論が見直され、現在、大西洋で流れの実測(流速計係留観測)が続けられています。変動成分が大きいため、深層循環が弱まっていることを観測資料から検出するのはかなり難しいようです。ただし、最新の状況は知りません。

3)弱まっていると考えられる場合、原因についての有力な仮説はあるのでしょうか?

熱塩循環(深層循環)あるいは深層水の生成機構については、従来は、グリーンランド沖が注目されていましたが、近年では南極周辺の南大洋における大気との熱交換(加熱・冷却)が注目されているようです(うろ覚えです)。この意味で、「弱まっていると考えられる場合、原因についての有力な仮説」はまだないと思います。

Posted by hiroichi at 2011年12月23日 17:16
hiroichi様

1)飽和レベルに達していると聞いたことがない:
アゴラの記事(名前のところのリンク)で美山様から私宛に下記のコメントを頂きましたので、まずは全文引用します。

海は人間の排出している二酸化炭素を吸収してくれていますが、温暖効果ガスによる人為的温暖化により温度上昇と熱演循環の弱まりなどから、その吸収割合が減り、気候安定化をより難しくすると考えてられており、私自身それについてひとつ論文を書きましたしhttp://www.agu.org/pubs/crossref/2009/2009GL039678.shtml 他にも観測、モデル、他の研究者の多数論文があります (例えばhttp://www.data.kishou.go.jp/obs-env/cdrom/report/html/2_1bis.html)。念のため繰り返しておきますが、これは人類による二酸化炭素排出とそれによる温暖化と結論づけられているものです。

上記コメントで、「人為的温暖化により温度上昇と熱演循環の弱まりなどから、その吸収割合が減り」という部分と、美山氏から紹介頂いた下記の内容にある、

http://www.agu.org/pubs/crossref/2009/2009GL039678.shtml

Our calculations on centennial timescale in various scenarios reveal how saturation with respect to CO2 and climate-carbon cycle feedback reduce natural carbon uptake,

から、美山氏のコメントの趣旨は、「海洋の二酸化炭素吸収能力の飽和により、大気中の二酸化炭素が増大し、温暖化している」というように考えたのですが。。。
Posted by bobby at 2011年12月24日 09:43
bobby 様

>美山氏のコメントの趣旨は、「海洋の二酸化炭素吸収能力の飽和により、大気中の二酸化炭素が増大し、温暖化している」というように考えた

bobbyさんのおっしゃる「海洋の二酸化炭素吸収能力の飽和状態」とは、「もうこれ以上吸収できない状態」すなわち「吸収能力・量・割合がゼロ」という意味だと思いますが、違いますか? 

美山さんは「その吸収割合が減り」と言っているだけで「その吸収割合がゼロになる」とは言っていません。GRLの論文の結論も、種々のシナリオの下での数百年の時間規模の数値計算によって、(将来において)CO2の飽和と、気候と炭素循環のフィードバック機構によって海洋のCO2吸収量が減少することが明らかになった、と述べているだけで、「今現在の海洋の二酸化炭素吸収能力が飽和している」とは言っていません。bobbyさんは誤解されていると思います。

ご存じと思いますが、

大気中のCO2量の単位時間当たりの増加量(C)

大気へのCO2量の単位時間当たりの放出量(Inp)

海洋へのCO2量の単位時間当たりの吸収量(Out)

で表されます。
Outがゼロ(吸収能力が飽和している場合)でなくても、
Inp - Out 
が正である限り、Cは増加し続けます。
美山さん達の論文は、温暖化の進行によりOutが減少することを数値計算結果で示したことだと思います。

Posted by hiroichi at 2011年12月24日 16:56
hiroichiさん

>bobbyさんは誤解されていると思います。

前回の分も含めて、いろいろ教えて頂き、有難うございました。飽和は私の誤解だとわかりました。

それでは美山氏の論文など、人為次元二酸化炭素の増大で海洋の吸収量が減るというのは、現在すでにそのような状態になっているという事なのでしょうか、それともこれからそうなる可能性がある、という仮説と理解するべきなのでしょうか。


> C = Inp - Out

これについて、もう少し質問を続ける事をお許しください。美山さんに教えて頂いた下記の気象庁ページの「人為起源二酸化炭素の海洋への蓄積量」の項目で、

http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/cdrom/report/html/2_1bis.html

「海洋中に分布する人為起源二酸化炭素は、海域別にみると、北大西洋、南緯14~50度の海域で多く蓄積されており、それぞれ約23%、約40%を占めていること、また、深度別にみると200 m深までに約30%、400 m深までに約50%が蓄積され、人為起源二酸化炭素がほとんどみられない平均の深度がおよそ1000 mとされている。」とあります。

上記内容と本コメント前半の内容をつなげると、産業革命等で化石燃料由来の二酸化炭素を海洋が吸収し過ぎてOut(吸収量)が「減少」している(これからそうなる)のは、せいぜい海面から1000mまでの表層水である、という理解は間違っているでしょうか?

宜しくお願いします。
Posted by bobby at 2011年12月24日 23:05
bobby様

>それでは美山氏の論文など、人為次元二酸化炭素の増大で海洋の吸収量が減るというのは、現在すでにそのような状態になっているという事なのでしょうか、それともこれからそうなる可能性がある、という仮説と理解するべきなのでしょうか。

美山さんの論文は数値モデル計算であり、「これからそうなる可能性がある」ことを示しています。気温と海面水温に温暖化の影響が表れてからの経過時間が短いため、「海洋の吸収量」の減少をこれまでの比較的短い観測資料から検出するのは難しいと思います。

>産業革命等で化石燃料由来の二酸化炭素を海洋が吸収し過ぎてOut(吸収量)が「減少」している(これからそうなる)のは、せいぜい海面から1000mまでの表層水である、という理解は間違っているでしょうか?

間違いだと思います。気象庁資料は、「産業革命以降の化石燃料由来の二酸化炭素は現在、1000m深まで達している」といっているだけで、将来まで1000m以浅に留まることを示しているわけではありません。

水平方向の流れを考えない場合、非常に長い時間を経過した後には拡散・混合により海底まで広がると考えられます。他方、温暖化の進行により、上層の海水温度が上昇して、上下の混合が阻害されることを考えると、温暖化が進行した時に海洋に吸収されたCO2は上層にのみ蓄積される可能性もあります。
Posted by hiroichi at 2011年12月25日 00:29
hiroichi様

早速にご返事頂き有難うございました。

>美山さんの論文は数値モデル計算であり、「これからそうなる可能性がある」ことを示しています。

了解致しました。

>温暖化の進行により、上層の海水温度が上昇して、上下の混合が阻害されることを考えると、温暖化が進行した時に海洋に吸収されたCO2は上層にのみ蓄積される可能性もあります。

仮に(熱塩循環などによる)深層水と表層水の循環の効率が低下すると、海面(と表層水)の温度が更に上昇しやすくなるという正のフォードバックが起こり得ます。更にこの循環効率が低下すると、二酸化炭素の吸収量が低下すると考えられます。

海面は地球表面の7割を占めるので、海面温度が上昇すると、地球全体の地表近くの大気温度や気候へも大きな影響を与える事が考えられます。

そこで、下記のようなシナリオを考えて見ました。

1)表層水と深層水の循環量が何かの理由で減る。
2)大気の温度が上昇する
3)同時に、海洋の表層水が二酸化炭素を吸収する量が減る
4)大気中の二酸化炭素が増大する
5)温室効果が増大して、大気温度が低下し難くなる
6)大気温度が更に上昇する
7)高温海面の緯度が上がると、温められて乾燥した空気が降りてくる緯度が上がる。緯度が上がると陸地面積が広がるので、陸地の砂漠化や気候変動が広がる。

最初の1を仮定した場合、上記のシナリオは可能と思われますでしょうか?

宜しくお願いします。
Posted by bobby at 2011年12月25日 01:39
bobby様

地球気候変動システムは種々の要素が複雑に関係しながら変動しています。その変動メカニズムを理解するために、種々の「シナリオ」の可否を定量的に観測または数値モデル計算で検証するのは重要なステップと思います。この意味で、bobbyさんがご提案されたシナリオを含め、いかなるシナリオであろうとも、その提案の段階では否定されるものではありません。

ただ、疑問に思うのは、「何故、このようなシナリオを考える必要があるのか」ということです。例えば、極端な気象現象増加への温暖化の寄与については1)を前提にする必要はありません。また、1)の確認と原因解明こそが急務と考える人もいると思います。

「大風が吹けば、桶屋が儲かる」の類の話にならないためには、1)から逐次、一方的に進行して7)に至るという考え方、あるいは1)->2)、2)->3)他の各ステップを定量的に検証する必要があります。
Posted by hiroichi at 2011年12月25日 14:08
hiroichi様

何度もの質問にも丁重に答えて頂き、有難うございました。美山氏のコメントをあやうく誤って理解するところでしたし、それ以降の質問についても、とても参考になりました。

各ステップを定量的に検証するというのが科学的に大変重要である事は理解しております。いつか自分の作ったソフトで大儲けしたら、大学や研究機関の研究資金スポンサーになって、自分がブログで発表したアイデアの定量的な検証を行なってみたいという夢を以前から持っておりますが、今のところは不可能に限りなく近いというのが実情です。

大量絶滅や全球凍結などのイベントについて、科学的な情報をもとにしたシナリオ構築して思考実験して楽しむ事は、私や(こちらのブログへコメントを入れておられる)他の方も含めて、ハードなサイエンス・ファンにとっては大変楽しい時間です。(いつか居酒屋で酒を飲みながら楽しく議論させて頂きたいものです。)

そういう意味で、我々が生きているこの時代の最大の話題の一つが地球温暖化である事は間違いありません。(私が中学生の頃には、太陽中心の核融合が既に止まっており氷期に入るかもしれない、という話題を理科の先生から聞いた記憶がありますが、もはや氷期について心配する人は極めて少ないのではないでしょうか?)

しかも今は、自分が考えたシナリオをブログ記事で公表できるというファンにとっては恵まれた時代でもあります。どうせ書くなら、つまらない間違いはできるだけ無くしてリアルなものにしたい。しかしながら門外にいる我々素人は、研究者にとっては常識的な知識でも、ネットにない知識を知る事が困難だという問題があります。

そのような時に、hiroichiさんのような現役の研究者から意見をお聞きしたり質問できる事は、特に私にとって大変ありがたい事です。

ご指摘の「何故、このようなシナリオを考える必要があるのか」についてですが、wiki等で地質学的過去から現代までの気候グラフを見ると、人間がいなくても温暖化は数えきれないほど起きていると考えるのが合理的と考えられます。であれば、人間がいなくても、巨大隕石や大規模地殻変動が無くても、温暖化が起こるメカニズムというものがあると考えるのが合理的です。美山氏に紹介頂いた気象庁の記事を読んだときに、地球表面の7割を占める海面温度の上昇が起これば、温暖化や気候変動は可能ではないかと直感しました。そこで、海面温度と大気中の二酸化炭素の上昇が同時に起こる理由を考えてみたところ、表層水と深層水の循環効率が下がる事で、(定量的にどれくらいの上昇になるのかは不明ですが)理屈として辻褄が合うのではないかと思い、1を前提に持って来ました。

このシナリオの問題は、1の前提となる循環量の低下が、そもそも人為的二酸化炭素の急速な増大が原因であるという主張に対して反論するだけの理屈がネット上に見当たらない事です。しかしながら定量的な反論ができないのはどちらの側も同じですので、仮説としての有効性が著しく損なわれる事はないのではないかと楽観しております。

重ねて、有難うございました。
Posted by bobby at 2011年12月26日 02:00
bobby様

私の疑問に対するお答えをありがとうございました。

多くの観測事実(経験)を矛盾なく、整合的に解釈しようとするのが科学の営みであり、思考実験も種々のシナリオ、仮説を考えることも「科学の営み」の一つの段階だと思います。

地球温暖化と気候変動は、同じ物理(生物、化学)の原理が成り立つにしても、時間と空間の規模が大きく異なります。bobbyさんが提示されたシナリオは、数1000年の長い時間規模を持つ海洋深層大循環の変動から始めている点で、人為的に引き起こされたと考えられている近年(100年規模)の地球温暖化問題(気温の一方的な増加)ではなくて、地質学的時間規模の気候変動(気温の上昇と下降の繰り返し)のメカニズムの一部(気温上昇期)についてのシナリオであるように感じました。

地球気候システムでは種々の時間と空間の規模が異なる要素が互いに複雑に作用し合っています。この場合、ある程度同じような時間・空間規模別(季節内、年周期変動、数年ー10年、数10年、100年、数100年、数千年、数万年、数十万年、数百万年、など)に分離して考える方が理解が容易であると考えられています。ただし、最近では、時間・空間規模が異なる要素の間での相互作用も注目されています(異なる時空間規模の階層間の相互作用)。以前から導入されている渦粘性、渦拡散の概念もその一種ではあります。

>しかしながら定量的な反論ができないのはどちらの側も同じですので、仮説としての有効性が著しく損なわれる事はないのではないかと楽観しております。

「定量的な反論ができない」という点では同じでも、種々の観測結果をより矛盾なく説明できる方が優れた仮説として受け入れられます。「科学の営み」とは、お互いのシナリオ・仮説の矛盾を指摘し合い、その矛盾を解決していくことで、より整合性のある共通解釈・認識を作り上げていく、時空を超えた人類共同の営みだと思っています。「どちらの側も同じ」として、自説の検証・見直しを進めないのであれば、それは共通認識の構築を目指す「科学の営み」ではなく、各々が独自の説を唱えるだけの「相対主義」になってしまいます。
Posted by hiroichi at 2011年12月27日 03:00
hiroichiさん

ご返事ありがとうございます。ここから先は、最初の質問とは別の、新しい別の議論としてコメントさせて頂きます。

>bobbyさんが提示されたシナリオは、数1000年の長い時間規模を持つ海洋深層大循環の変動から始めている点で、人為的に引き起こされたと考えられている近年(100年規模)の地球温暖化問題(気温の一方的な増加)ではなくて、

大規模かつ長期の火山活動や巨大隕石落下による、急速かつ大量の二酸化炭素が大気中へ増大した時代は過去の何度もあったと推測されます。また地上に草食の脊髄動物が満ちていた時代には、現在の家畜とは比較にならない膨大な量のメタンがゲップや糞の発酵から長期に渡り放出されたと推測されます。

産業革命以降の200年間、人間が化石燃料を燃やして大気中へ放出させた二酸化炭素が、地質学的時間規模の中で急速に温暖化したどこかの時代に比べて、どれくらい「急速かつ大量に増大」したかを定量的に比較する事は可能なのでしょうか?

その事を過去の時代とくらべて特別視する必要があるのでしょうか?

という視点から、自然に生じる温暖化のプロセスについて考えました。
Posted by bobby at 2011年12月27日 11:56
bobby様

>産業革命以降の200年間、人間が化石燃料を燃やして大気中へ放出させた二酸化炭素が、地質学的時間規模の中で急速に温暖化したどこかの時代に比べて、どれくらい「急速かつ大量に増大」したかを定量的に比較する事は可能なのでしょうか?

億単位の地質学的時間規模ではありませんが、過去40万年間のCO2の変動と比較した図(以下のURL)が示していると思います。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Carbon_Dioxide_400kyr.png

この図でCO2が最大時と最小時の気温差は約10℃です。
これらは南極ボストーク基地での氷床コア分析結果です。
Posted by hiroichi at 2011年12月27日 13:26
hiroichiさん

過去40万年のCO2の変動と直近200年を比較した図を示して頂き有難うございます。この図にはちょっと疑問がありますので、質問させて頂いても宜しいでしょうか。

まずは、これを図1と呼ぶ事にします。横軸の右端が現在です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Vostok-ice-core-petit.png

これとよく似たものに下記があります。緑がCO2、青が温度、赤は塵です。これを図2と呼ぶ事にします。横軸の左端が現在なので注意してください。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Vostok-ice-core-petit.png

図1と図2を比較するとまずわかるのは、図1にある直近200年のCO2の急激な上昇を図2で見る事ができません。この2つの図のCO2濃度が基本的に同じものであると仮定すると、図1の直近200年のCO2急速上昇は、氷床コア分析ではない別の観測データで上書きしたのではないかという疑問があります。

仮に図1の直近200年の観測データが氷床コア分析でないとすると、氷コア分析データである図2は直近200年の急速なCO2濃度上昇を(図1ほどには)示していません。そこで、いったい氷床コア分析における時間軸の最小解像度は何年間(百年?千年?)なのかという次の疑問が生まれます。

更に、最小解像度より期間内で急速なCO2の上昇と下降があった場合に、氷床コアはどのようにCO2濃度を記録するのでしょうか?たとえば、仮に氷床コア分析の時間軸の最小解像度が1000年とすれば、CO2濃度は1000年間の範囲で平均化されてしまうのでしょうか?

宜しくお願いします。
Posted by bobby at 2011年12月27日 23:03
すみません、図1のリンクを間違えました。下記が図1です。つまりhiroichiさんに示して頂いた図です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Carbon_Dioxide_400kyr.png
Posted by bobby at 2011年12月27日 23:05
すみません、図1のリンクを間違えました。hiroichiさんに示して頂いた「過去40万年間のCO2の変動と比較した図」の事です。連続コメント中にリンクを入れようとしたらエラーで書き込みできませんでしたので、訂正文だけいれさせて頂きます。
Posted by bobby at 2011年12月27日 23:10
bobby様

図2は氷床コア分析データのみを示してあるのに対し、図1の赤・青・黒線は図1上部に示す直近1000年間の氷床コア分析ではないCO2濃度データを重ねて(時間スケールを合わせて)示してあります。

すなわち、
図1の直近200年のCO2急速上昇は、氷床コア分析ではない別の観測データで上書きしたものです。

>そこで、いったい氷床コア分析における時間軸の最小解像度は何年間(百年?千年?)なのかという次の疑問が生まれます。

原著に示された図によると直近1万年についての時間分解能は2000年程度のようです。
日本語の解説資料(月刊海洋だったと思う、号数は失念しました)で引用されていた図(昔、授業で使用)を以下のURLにアップしておきましたので、ご確認ください。

http://dl.dropbox.com/u/54273366/%E6%B0%B7%E5%BA%8A%E3%82%B3%E3%82%A2%E8%A8%98%E9%8C%B2.pdf

>たとえば、仮に氷床コア分析の時間軸の最小解像度が1000年とすれば、CO2濃度は1000年間の範囲で平均化されてしまうのでしょうか?

42万年分の氷床コアの長さは3300mあります。これを特定の厚さに切り取って、その中の気泡中のCO2濃度を分析したのだと思います。このようにして得られたCO2濃度は、分析した氷床コアの厚さに対応した期間で平均化された値になります。最上部500mがおおよそ直近25000年に対応しているようなので、4m長の氷床コアから直近2000年の平均濃度を分析したようです。原著の図ではCO2濃度の直近の値が現在(横軸の値=0)ではなくて、わずかに右にずれているのはこのためです。


Posted by hiroichi at 2011年12月28日 00:37
hiroichiさん

早速にリプライ頂き有難うございました。また、時間分解能について調べて頂き感謝しております。素人の私には、ここまで調べる事ができませんでした。hiroichiさんの示された図の考察に戻りたいと思います。

2000年平均のグラフは、1年平均のグラフに比べて、ピーク値が大幅に低下してしまうと考えられます。その好例として下記の株価チャートを示します。黒は1日の値動き、赤は26週平均値です。ご覧のように赤のピーク値は黒のピーク値を大きく下回るし動きも緩やかです。

http://stock.searchina.ne.jp/data/chart.cgi?span=90&asi=1&code=00076

思うに、現在(年平均測定値)に匹敵するCO2排出量を過去40万年のグラフ(2000年平均値)で見つけられないからという理由で、「過去40万年には現在のような短期で大量のCO2排出はなかった」という結論を出す事はできないと考えています。

オッカムの剃刀というのをご存知と思います。人間の有無に関わらず温暖化と寒冷化が繰り返し起こるのであり、人言由来のCO2が原因である事が証明されていないのであれば、「今回だけは特別だ」と考えるよりも、今回も前と同じ(自然が原因)である、と考える方が合理的ではないでしょうか。
Posted by bobby at 2011年12月28日 01:14
bobby様

>思うに、現在(年平均測定値)に匹敵するCO2排出量を過去40万年のグラフ(2000年平均値)で見つけられないからという理由で、「過去40万年には現在のような短期で大量のCO2排出はなかった」という結論を出す事はできないと考えています。

確かにそうですね。

>オッカムの剃刀というのをご存知と思います。

どういう意味合いで「オッカムの剃刀」を持ちだされたのか私には理解できませんでした。

>人間の有無に関わらず温暖化と寒冷化が繰り返し起こるのであり、人言由来のCO2が原因である事が証明されていないのであれば、「今回だけは特別だ」と考えるよりも、今回も前と同じ(自然が原因)である、と考える方が合理的ではないでしょうか。

直近の200年間と同程度の大気中CO2濃度の急増が今までにも頻繁にあったというデータはありません。なお、1万年の間のCO2増加と気温上昇の間の人間活動が関与しない過去の対応と直近の200年間での対応とでは時間スケールが大きく異なるため、前例とはなりません。したがって、「今回も前と同じ(自然が原因)である」と言えないと思います。

十分なデータがない時には、種々の入手可能なデータについて整合的で矛盾のない解釈をベストな解釈であるとみなすしかないと思います。もちろん、その解釈は新しいデータの出現によって覆る可能性は大いにあります。この意味で、今の段階では、今回の気温上昇はCO2の人為的増加に起因すると言って良いだろうが、今後のデータの蓄積や新たなデータの発掘によって別な原因が特定される可能性は残っている、ということになると私は思っています。
Posted by hiroichi at 2011年12月28日 03:08
hiroichiさん

ご回答頂き、ありがとうございます。

>どういう意味合いで「オッカムの剃刀」を持ちだされたのか私には理解できませんでした。

これは本質的な話ではないので、どうぞ忘れて下さい。


>>思うに、現在(年平均測定値)に匹敵するCO2排出量を過去40万年のグラフ(2000年平均値)で見つけられないからという理由で、「過去40万年には現在のような短期で大量のCO2排出はなかった」という結論を出す事はできないと考えています。

>確かにそうですね。

認めて頂き有難うございます。上記内容を改めて下記にまとめました。

1)氷床コア分析グラフはCO2排出量が2000年平均でプロットされるので変化が緩やかになり、1年平均グラフの鋭いピーク値と単純に比較する事はできない。
2)上記1でのべた変化が緩慢になるという理由から、現在に匹敵するCO2排出ピーク値を氷床コア分析グラフで見つけられないという理由で、「このような排出は過去になかった」とは言えない。

>直近の200年間と同程度の大気中CO2濃度の急増が今までにも頻繁にあったというデータはありません。

データが無いというのは事実ですが、過去になかったという結論にならないのは、上記1,2で述べた通りです。いまの氷床コア分析よりも時間分解能を2桁か3桁上げられないと、本当のところはわからないという事ではないでしょうか。

たとえば現在の温暖化と6000年前の縄文海進を比較してみましょう。氷床コア分析では、現在と縄文時代のどちらのCO2排出量もそれほど高くありません。しかし海進速度で比較すると、現在は0.6cm/年で、縄文時代は1-2cm/年(仮説)です。また縄文時代の方が現在よりも温暖であったと(考古学的には)考えられているようです。

もし地球温暖化の一義的なパラメタが大気中の温暖化ガス濃度であると仮定する場合、現代と縄文時代の比較では、縄文時代の方が温暖化ガス濃度が高くなければならないという事になります。

この点をhiroichiさんはどうお考えになりますでしょうか?
Posted by bobby at 2011年12月28日 15:59
bobby 様

>データが無いというのは事実ですが、過去になかったという結論にならないのは、上記1,2で述べた通りです。いまの氷床コア分析よりも時間分解能を2桁か3桁上げられないと、本当のところはわからないという事ではないでしょうか。

「過去になかったという結論にならない」と同時に「過去にあったという結論にもならない」ということです。氷床コア分析データだけでは、時間分解能以下の短期変動については、本当のところはわからないという事です。この意味で、氷床コア分析データを私が示したのは、bobbyさんの

>産業革命以降の200年間、人間が化石燃料を燃やして大気中へ放出させた二酸化炭素が、地質学的時間規模の中で急速に温暖化したどこかの時代に比べて、どれくらい「急速かつ大量に増大」したかを定量的に比較する事は可能なのでしょうか?

というご質問の答えにはなっていたと思いますが、「過去になかった」ことを示すデータとして不適切だったと思います。

私はbobbyさんの「今回も前と同じ(自然が原因)である、と考える方が合理的」という言葉に対し、「氷床コア分析データに現れた長期変動と同じような変動が短期的にも起こる」という考え方に疑義を唱えました。この疑義に対していかがお考えでしょうか?

この氷床コア分析データの解釈と縄文海進とは話の筋が違うと思います。あえてお答えすれば、縄文海進と地球規模の温暖化ガス濃度の増加とを結びつけて考えるのは不適切だと思います。以下の解説をご参照ください。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/qr/QA/answer/ans010.html

http://www.cger.nies.go.jp/person/emori/files/nikkei/ecolomycolumn_8.htm の最後の節

http://blogs.dion.ne.jp/tacthit/archives/9584588.html
Posted by hiroichi at 2011年12月29日 02:07
私はいろんな温暖化論争をネット上で見てきましたが、短絡的な議論が多いように思えました。
温暖化とは関係ありませんが、最近のニュートリノ実験でも、長い時間の積み重ねですし、結論がつくのにも時間がかかなります。

まず産業革命以後に急激に大気中の二酸化炭素が増えたことと、1980年以後の温暖化は、分離して考える必要があると思います。
産業革命以後に急激に二酸化炭素が増えたことは事実ですし、その原因が人為的である可能性は極めて高いと思います。
この調査は精度が高く信頼性が高いと思っています。

けれど、1980年以後の温暖化の原因は「よくわからない」というのが現状の認識ではないでしょうか?
人為的温暖化ガスの削減が叫ばれる背景は、もし人為的な温暖化ガスが原因だったら手遅れになるかもしれないから、対策をしようということだと思います。
だから人為的な温暖化ガスが原因ではない可能性も充分にあると思います。
Posted by おおくぼ at 2011年12月29日 09:02
おおくぼ様

コメントをありがとうございました。

>けれど、1980年以後の温暖化の原因は「よくわからない」というのが現状の認識ではないでしょうか? 

確かに「よくわからない」と言っても良いとは思います。ただし、人によって、その度合いが異なると思います。何が、何処が「よくわからない」のか、あるいは「よくわかる」ためには、何を、何処を調べれば良いのか、ということを議論しないと、原因に対する共通理解は深化しないと思います。

>人為的温暖化ガスの削減が叫ばれる背景は、もし人為的な温暖化ガスが原因だったら手遅れになるかもしれないから、対策をしようということだと思います。

このように考えて行動している国もありますが、様々な理由・思惑でこの考え方・選択を受け入れようとしない国もあります。このために、地球規模での対策が進んでいないのが現状だと思います。

>だから人為的な温暖化ガスが原因ではない可能性も充分にあると思います。

「原因ではない可能性も充分にある」のは確かにそうなのですが、私は「原因ではない可能性を否定できない」という程度だと思っています。

いずれにせよ、完全な答えがない、答えを得るのが難しい状況で、政策決定に際して、科学に完全な答えを求めていることが決断を遅らせている原因だと思っています。
Posted by hiroichi at 2011年12月29日 19:12
大気中の二酸化炭素の濃度は調査しやすいです。
けれど水蒸気や雲の経年変化の調査は難しいです。
しかも全地球的規模ならなおさらです。
温室効果は水蒸気や雲の方が二酸化炭素より大きいです。
また二酸化炭素以外の人為的な温室効果ガスの影響をどのように計測するかは難しいです。
気候変動への人為的な影響は温室効果ガス以外にもありますし、森林伐採などの地形変化は人為的な温室効果ガスよりも大きいかもしれません。

また太陽と地球の関係はわかっていないことが多いです。
20世紀の統計を見ても、どの要素がどの程度影響を与えたかの判断は難しいです。
地域を限定すれば、原因の特定の精度は上がると思いますが、全地球的規模で考えるのは難しいです。
全地球的規模の研究は魅力的ですが、精度は徐々にしか上がらないと思います。

温暖化とは関係ありませんが、原発事故時に予測システムSPEEDIは精度が悪かったので使われませんでした。
もし精度の悪い予測をすれば、いたずらに人々を混乱させることになります。

政策は重要ですし、政策に科学者の意見が反映されることは大賛成です。
でも政策が実行されたからといって、科学的な真実にはなりません。
人為的な影響によって気候変動が起こったという仮説は正しいと個人的には思っています。
でも二酸化炭素にだけ注目が行き過ぎだと思います。
だから反発があるのは当然だと思います。
Posted by おおくぼ at 2011年12月29日 19:53
hiroichi様

ご返事頂きありがとうございます。

>氷床コア分析データだけでは、時間分解能以下の短期変動については、本当のところはわからないという事です。

この考え方に賛成致します。

>この氷床コア分析データの解釈と縄文海進とは話の筋が違うと思います。

間違いをご指摘頂き有難うございました。縄文時代の温暖化の原因は黒潮海流なのですね。海流が地域に及ぼす温暖化の影響を再認識する事ができました。


>私はbobbyさんの「今回も前と同じ(自然が原因)である、と考える方が合理的」という言葉に対し、「氷床コア分析データに現れた長期変動と同じような変動が短期的にも起こる」という考え方に疑義を唱えました。この疑義に対していかがお考えでしょうか?

まずは短期と長期の定義を明確にしたいと思います。氷床コアの時間分解能の中に吸収されてしまう時間尺度の変動を「短期」、氷床コアのグラフで識別できる変動を「長期」と定義して宜しいでしょうか。

その上で、私の考えをリビューしてみましたが、現在の温暖化のメカニズムが解明されるまでは、短期で終わるのか、長期の一部なのかは「わからない」というのが私の認識です。

宜しくお願いします。
Posted by bobby at 2011年12月30日 15:21
補足

ドームふじの分析

http://polaris.nipr.ac.jp/~icc/NC/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=410

平均時間分解能 1100 年ですが、かなり信頼できる分析結果だと思います。
Posted by おおくぼ at 2011年12月30日 17:51
おおくぼさん

ドームふじの氷柱コア分析資料をご紹介頂き有難うございます。前のものとふじのものを比較していて、ふと思いついたのですが、氷の中にCO2が閉じ込めれる「しくみ」とはどういう理屈なのでしょう?
Posted by bobby at 2011年12月31日 21:37
bobbyさんへ

私は専門家ではありません。
あくまで机上で学んだにすぎません。

http://caos-a.geophys.tohoku.ac.jp/bujunkan/archives/000047.html

http://polaris.nipr.ac.jp/~academy/science/hyosyo/index.html

上のサイトには気泡が氷の中に閉じ込められていることが書いてあります。
だから氷床コアは気泡のタイム・カプセルなのです。
融解法は二酸化炭素の分析に向かないと書かれていますが、前のコメントで紹介したpdfファイルによると、融解法の弱点は克服されたそうです。
氷床コアは北半球にもありますが、二酸化炭素の分析は南極でなくてはいけません。
例えばグリーン・ランドの場合は夏に氷が溶けた時に、別の気泡が混じるからです。
Posted by おおくぼ at 2011年12月31日 22:52
おおくぼさん

氷の中に空気が閉じ込められるしくみがわかりました。とても参考になりました。有難うございました。

南極大陸は氷の大陸で、地球上の真水の90%が凍って南極氷床をつくっている。(記事より引用)

これは凄いですね。南極の氷床が溶けると、いったい海面は何メートル上昇するのでしょう?とても興味があります。
Posted by bobby at 2012年01月01日 00:52
bobbyさんへ

http://www.skepticalscience.com/translation.php?a=21&l=11

このサイトによると
>西南極の氷が全て溶けると、地球の海面水位は6~7メートル上がるが、東南極が融解となると、海面水位が50~60メートル上がる事になる。南極の氷床は海面水位上昇に重要な役割であり、その役割は引っ切りなしに拡大しています。



現代と過去を比較する時に石炭紀は興味深い時期だと思います。
石炭紀はゴンドワナ大陸という一つの大陸だった時期でもあります。
南極大陸上の氷は現在よりも少なく、地球の気温も現在より高かったそうです。
そして大陸は沼地状態の面積がかなり多かったと推測されます。
酸素濃度は現在よりも少なく、二酸化炭素濃度は現在よりも高かったそうです。
Posted by おおくぼ at 2012年01月01日 08:02
hiroichi様、おおくぼさん

何度もコメントをありがとうございました。
ボストーク基地の氷床コア分析の図をもとにした簡単な記事を書いて見ました。

【地球は1.5万年前から急速に温暖化している】
http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=4313
Posted by bobby at 2012年01月01日 20:39
hiroichi様、おおくぼさん

こちらで勉強させて頂きた内容をもとに、アゴラに記事を投稿しました。

http://agora-web.jp/archives/1419740.html

私は、現在の「急速なCO2濃度の増大」は、氷河期終了してから急速に温暖化する局面で頻繁に発生するありふれた現象ではないかと考えています。時間解像度2000年のグラフに記録される急速はCO2濃度上昇は、分解能より短期では、更に大きな濃度上昇が発生している筈、だからそこ平均してこれだけの上昇カーブを得られる、という意見です。

しかしながら「現在は特別」という意見の方は、そこが出発点になっているので、そのような明白な記録が無い限り認めない、というスタンスなので、議論が咬み合いません。

未知の事情における科学的な議論で、「証明されていない仮定」が出発点になる場合には、おたがいに前提条件を証明する明白なデータを提示できないので、噛みあう議論というのはなかなか難しいようです。
Posted by bobby at 2012年01月07日 08:50
bobbyさんへ

>時間解像度2000年のグラフに記録される急速はCO2濃度上昇は、分解能より短期では、更に大きな濃度上昇が発生している筈、だからそこ平均してこれだけの上昇カーブを得られる、という意見です。

それは違います。

http://tgr.geophys.tohoku.ac.jp/index.php?option=com_content&task=view&id=16&Itemid=33

時間解像度が荒くても、計算して平均値を出している訳ではないのです。
デジタルなグラフではなく、アナログなグラフなのです。
だから、もし現在のような二酸化炭素濃度の高い時期が過去にあれば、短期間でもわかります。
Posted by おおくぼ at 2012年01月07日 20:29
おおくぼさん

いつも貴重の資料の紹介を有難うございます。

>時間解像度が荒くても、計算して平均値を出している訳ではないのです。
>もし現在のような二酸化炭素濃度の高い時期が過去にあれば、短期間でもわかります。

氷床コアの時間解像度が1000年とか2000年という長さになる理由について、私は下記のように理解したのですが間違っておりますでしょうか?

1)氷床に積もった雪がフィルン状になり、フィルン中の細孔が閉じて周囲の空気と隔絶された気泡となるまでの時間を仮にXヶ月としましょう。それまでは上下左右の空気が混ざる可能性がありますので、氷床コア分析の限界的な時間解像度はXヶ月となります。Xヶ月に相当する氷床コアの縦の長さが、ひとつの時間を表す限界とも考えられます。これを仮にYセンチとします。
2)測定装置が氷床コア分析から採集された空気の分析を行うには、装置に必要な空気量の下限があります。上記1で求めた縦Yセンチの長さの氷床コアで、測定装置の下限より多い空気を採集するには、コアの直径を大きくする必要があります。これを仮にZセンチとします。
3)上記1で述べた氷床コアから得られる最小時間解像度でCO2分析をする為には、縦Yセンチ、直径Zセンチの氷床コアを切り出せば良いと考えます。但し、測定装置の感度が改善すれば、最低必要な空気量は減少しますので、Zセンチはその分小さくなります。
4)ボストーク基地の氷床コアの時間解像度が2000年となっているのは、氷床コアを切り出す装置の関係で、コアの直径が十分に大きくないのと、測定装置の感度の限界の問題で、1回の分析に必要な空気を採集する為に、氷床コアの縦の長さを多めにとっているのではないかと推測しました。

つまりボストーク氷床の時間解像度が2000年となるのは、氷床コア分析の為に2000年分のコアを削って分析用の空気を採集するので、2000年分の空気が混ざり、結果として平均化されてしまうと理解しました。

上記3で述べたように、氷床コアの直径を大きくする事ができれば、時間解像度Xヶ月で、古気候の分析が可能になるのではないかと思います。


Posted by bobby at 2012年01月09日 16:54
bobbyさんへ

訂正します。
私の勘違いみたいです。
時間解像度が2000年というのは平均値みたいですね。

http://polaris.nipr.ac.jp/~icc/NC/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=385

http://polaris.nipr.ac.jp/~icc/NC/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=430

↓ アルゴンや窒素の時間解像度は二酸化炭素より高いみたいです。

http://www.nipr.ac.jp/info/notice/20111122.html

↓ 南極のLaw domeの氷床コアの過去千年間の分析グラフです。

http://www.elmhurst.edu/~chm/vchembook/images/lawdome.GIF
Posted by おおくぼ at 2012年01月09日 23:32
追記

氷床コアの分析から作られたグラフを見ると、気温と二酸化炭素濃度の相関性が高いのは万年単位の場合で、千年単位になると相関性が低いように見えます。
Posted by おおくぼ at 2012年01月10日 10:10
追記 その2

LAWドームの氷床コアのグラフを見ると、1000年頃~1800年頃までは、二酸化炭素濃度の変化は小さいです。
だから100年単位の気温と二酸化炭素濃度の相関性も低いと思われます。
Posted by おおくぼ at 2012年01月10日 10:40
おおくぼさん

いつも貴重な資料を紹介頂き有難うございます。
とても参考になりました。
Posted by bobby at 2012年01月10日 10:51
hiroichi様

おおくぼさんから紹介された下記記事の一番下の青色の図によれば、過去4000年間だけで、現在に匹敵する温暖期が繰り返し発生しているそうです。更に、現在の温暖化を大きく上回る高温期が約1300年前と3000年前にありました。

「グリーランド氷床の表面温度を過去4千年にわたり正確に復元」
http://www.nipr.ac.jp/info/notice/20111122.html

最初の図は過去170年間の気象データで時間解像度は1年。氷床分析データは約12.5年(200年間でプロット数16個から逆算)

12.5年平均値がこれだけ大きくなるという事は、1年平均では更に高い温度ピーク値が得られた可能性があります。

やはり、過去200年の「急激な温暖化」は、数千年という短期で見てもありふれた現象であると推測されます。
Posted by bobby at 2012年01月10日 11:19
bobbyさんへ

http://polaris.nipr.ac.jp/~kawamura/wakateS.html

ふじドームの気温と二酸化炭素のグラフは、こちらのサイトの方が見やすいと思います。
グラフはクリックすると拡大します。

またサイトには

>一方、過去8000年間のCO2の増加が人為起源であり、氷期への突入を人類が数千年前から妨いだとの説が論議を呼んでいる(Ruddiman, Rev. Geophys., 2007; AGU2008大会ではユニオンセッション開催)。

・・・という説明があります。
でも35万年間のグラフを丁寧に比較すれば、1千年間以上のズレがたくさんあります。
だから8千年間で30ppmぐらいのズレをどう解釈するかは、かなり難しいですね。
Posted by おおくぼ at 2012年01月10日 15:18
追記

8000年間で32ppm増えたと仮定して平均すると、1000年間で4ppm増え、100年間で0.4ppm増えたことになります。
Posted by おおくぼ at 2012年01月10日 15:31
追記 その2

二酸化炭素は、炭素を含む物質を燃やせば発生します。
だから人類の燃やす量が増えたという仮説を考えれば、わかりやすいです。
日本でも明治時代から人口が急増しています。
欧米の植民地政策と同時並行で世界人口は急激に増えていますので、人口増加によって燃やす量が増えたと考えればどうでしょうか?
Posted by おおくぼ at 2012年01月10日 18:08
おおくぼさん

いつも貴重な資料をご紹介頂き有難うございます。
上記URLのKawamura氏によれば人為起源CO2は過去8000年だそうです。8000年前に人類がどのような生活をしていたかは考古学も絡んでくるのでしょうし、現在はコメントできません。しかし人間が化石燃料を燃やす遥か以前から、中東や欧州で大量の木を燃やしてレンガを焼いたり開墾したりして広大な森林を丸裸にした事は事実です。

そういう意味で、自然環境から放出されるCO2以外に、人為起源CO2がある事は事実であると理解します。
Posted by bobby at 2012年01月11日 17:29
私の書き込みは、これで終了したいと思います。
管理人のhiroichiさん、ご迷惑かけてすいませんでした。

参考までに私のブログの地球温暖化について書いた記事を紹介します。

http://blogs.dion.ne.jp/tacthit/archives/cat_221999-1.html

何かの役に立てば幸いです。
Posted by おおくぼ at 2012年01月11日 23:14
おおくぼさん
ありがとうございました。

hiroichi様
いろいろお教え頂きありがとうございました。
Posted by bobby at 2012年01月12日 16:34
bobby 様、おおくぼ 様

正月明けの自宅PC破損への対応に追われ、ご返事が滞ってしまい、その間に、お二人の意見交換も終わってしまいました。

bobby 様

アゴラの貴記事と辻さんとの議論を拝見しました。
貴記事について、一言、申し上げれば、記事中で示した図などについては、出典を明記していただきたいと思います。私がbobbyさんに示した氷床コア分析データの図がそのまま貴記事で使われていることに驚きました。その他の図も出典が示されていません。科学的議論を行う場合には出典(元の論文)を示すことが必須です(著作権の問題ではなくて、内容の確認のためにです)。今後の記事作成に際に、ご留意ください。

おおくぼ 様

度重なるコメントと情報をありがとうございました。興味深く拝見しました。これからも宜しくお願いします。

おおくぼさんは十分にご存知だと思いますが、本コメント欄の一般読者のために一言:科研費の研究計画調書の記述は、レビューを受けていない、計画申請者個人の生の思いです。「こう考えている人もいる」という意味では貴重な情報なのですが、一般的ではない場合が多い(一般的ではないことだから研究する訳ですが)ので、ご覧になる際にご注意ください。
Posted by hiroichi at 2012年01月15日 18:23
hiroichi様

ご返事が途絶えておりましたので、実はちょっと心配しておりました。PC障害だったと知り安心しました。いつもコメントを頂きありがとうございます。

>アゴラの貴記事と辻さんとの議論を拝見しました。

私の幼稚な記事にわざわざ目を通して頂き有難うございました。実は2目の記事のあとで、私の疑問点について言及しているMANTAさんのブログ(海の研究者)の温暖化関連記事を読み返しながら、疑問点についてリビューしております。

>記事中で示した図などについては、出典を明記していただきたいと思います。

手違いがあったようで申し訳ありません。「出典を明記」には私も同意します。アゴラへ投稿した下記の2つの記事で使わせて頂きました図は、各記事の文末の参考文献の欄にリンクを貼りましたが、特にhiroichi様よりご紹介頂いたボストーク氷床分析のオリジナルの図は、リンクしたのが分析図のページだけで、そのもとの資料を自分で探す事ができなかったのが心残りでした。

http://agora-web.jp/archives/1419740.html
http://agora-web.jp/archives/1423053.html

>私がbobbyさんに示した氷床コア分析データの図がそのまま貴記事で使われていることに驚きました。

実は、hiroichi様へアゴラへの投稿記事について相談しようかとも考えたのですが、記事内容から言って、プロの研究者であるhiroichi様へ逆にご迷惑がかかる可能性を考えて、あえて事前には何も申し上げませんでした。こちらでの議論をもとに、hiroichi様とおおくぼさんへ断り無しにアゴラへの記事を書いた事で、気分を悪くされたのであればお詫び申し上げます。
Posted by bobby at 2012年01月24日 02:56
bobby 様

>各記事の文末の参考文献の欄にリンクを貼りました

リンクを張っているのに気付きませんでした。参考文献ならば論文(著者、題目、雑誌名、他)を示さなければならないのが、図の説明しかなく、不思議に思っていました。

>気分を悪くされたのであればお詫び申し上げます。

気分を害してはいませんので、ご心配なく。こちらで議論がbobbyさんのお考えの整理に多少とも役立ったのであれば、嬉しい限りです。

「私がbobbyさんに示した氷床コア分析データの図」は公表されるためにbobyyさんにお示ししたものではありませんでしたので、公表前に言っていただければ、原著を調べてお伝えしたのに・・・という意味です。

氷床コア分析データの図の出典は以下の通りです。
source: http://www.usgcrp.gov/usgcrp/images/Vostok.jpg

これは、bobbyさんが示された
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Carbon_Dioxide_400kyr.png

Related images 欄に示されている
Solar variation and greenhouse gases during 420,000 years の図(これは私がbobbyさんに示した図のカラー版です)の元資料として示されています。

この図は
http://www.usgcrp.gov/usgcrp/seminars/990923FO.html
に示されています。多分、このセミナーで講演している二人が著者となっている以下の論文が出典元だと思いますが、手元でNature誌を読めないので未確認です。

Climate and atmospheric history of the past 420,000 years from the Vostok ice core, Antarctica

Petit, J. R.; Jouzel, J.; Raynaud, D.; Barkov, N. I.; Barnola, J.-M.; Basile, I.; Bender, M.; Chappellaz, J.; Davis, M.; Delaygue, G.; Delmotte, M.; Kotlyakov, V. M.; Legrand, M.; Lipenkov, V. Y.; Lorius, C.; Pépin, L.; Ritz, C.; Saltzman, E.; Stievenard, M.

Nature, Volume 399, Issue 6735, pp. 429-436 (1999).
Posted by hiroichi at 2012年01月27日 02:54
bobby 様

確認しました。以下をご覧ください。

http://www.nature.com/nature/journal/v399/n6735/fig_tab/399429a0_F3.html#figure-title
Posted by hiroichi at 2012年01月27日 03:00
hiroichi様

いつも有難うございます。

>気分を害してはいませんので、ご心配なく。

安心しました。

>確認しました。以下をご覧ください。
http://www.nature.com/nature/journal/v399/n6735/fig_tab/399429a0_F3.html#figure-title

有難うございました。機会を見て本資料を既存の記事または新しい記事へ参考文献として提示させて頂きたいと思います。

今後とも宜しくお願い申し上げます。
Posted by bobby at 2012年01月27日 12:55
hiroichi様

こんにちは。最近、こちらのブログが更新されなくなりましたが、もしやお体かパソコンに何か問題が生じたかと心配しております。

前回の議論の後、温暖化についてたくさん記事を書かれている「海の研究者」さんのブログを読んでおりましたところ、下記の疑問が膨らんできました。ネットを探しても答えを見つける事ができないので、ネット外の文献などもご存知のhiroichi様へ質問させて頂ければと思い、再びこちらに戻ってまいりました。

もし都合がよろしければ、下記の件について教えて頂けますでしょうか。


1)低緯度・低地の砂漠地帯(たとえばサハラやゴビ)は、同じ緯度・高度の森林地帯や穀倉地帯と比べて、夜間の温度がより低いようです。一般的には、砂漠地帯は夜間の放射冷却がより大きい為という説明が多いようです。大きくなる原因は、比熱容量の大きい水(水分)が、砂漠地帯の土地と大気に少ないからだという説明があります。一定量の水分があると、地面の温度低下が減り、大気温度も下がりにくくなるので、砂漠のような乾燥地帯と湿度が一定量ある地帯では、夜間の温度低下に差があるという事がと理解しました。

http://oshiete.goo.ne.jp/qa/1620216.html

ところでIPCCのレポートでは、地球が温暖化している理由として正の放射強制力が増していると述べています。放射強制力の時間解像度を時間単位に分解すると、昼と夜の放射冷却とだいたい同じ意味になるのではないでしょうか。その場合、大気中のCO2濃度は地球全体でだいたい同じであると考えられていますので、地域的な湿度の差によって夜間の放射冷却量の差が生まれているという事は、温暖化に必要な温室効果の主因はCO2ではなく水蒸気なのではないでしょうか?

2)CO2が温暖化ガスである事は科学的に証明されいる事は納得しており、ネットでも大学の実験室レベルでの実験記事(CO2が100%の容器での温室効果実験など)を見つける事ができます。しかしながら大気成分のたった約0.3%のCO2が3割増えて、現在の温暖化が生じたと言われると、直感的には納得し難いものがあります。大気中のCO2増大と大気温度の上昇の因果関係を明白に証明できる、定量的な実験結果を含む文献を探しておりますがネット上では未だ見つけられません。

そこで質問なのですが、CO2が何ppm増大すると温室効果がどれだけ増え、空気の温度が何度上昇するという事を定量的に示す実験結果の文献があれば、こちらのブログ(コメントでも新記事でも結構です)で紹介して頂けないでしょうか。

宜しくお願い申し上げます。

石水
Posted by bobby at 2012年03月14日 20:53
bobbyさんへ

こちらのブログはどうでしょうか?

http://blog.livedoor.jp/climatescientists/

私も何度か書き込みをさせてもらったことがあります。
Posted by おおくぼ at 2012年03月14日 21:36
おおくぼさん、有難うございます。森林と温暖化の関係は面白くてかつ参考になりました。ただ、夜の温度が砂漠ほど下がらない地域は、森林以外にも多くの非乾燥地帯にあるので、そういうところぜんぶを含めた辻褄の会う説明というものを探しております。  石水
Posted by bobby at 2012年03月14日 23:34
bobbyさんへ

近藤純正さんのサイトはどうでしょうか?
近藤純正さんは著作も多いです。

http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kisho/kisho58.html

http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kisho/kisho02.html

あとブログ「気候変動・千夜一夜」のブログ管理人は増田耕一さんという方です。
質問すると、丁寧に答えてくれる場合が多いです。

増田耕一さんの気象専門サイト ↓

http://macroscope.world.coocan.jp/ja/edu/clim_sys/index.html
Posted by おおくぼ at 2012年03月15日 07:08
bobby 様

更新が滞っていることに対し、ご心配頂き、恐縮しております。

種々の作業に追われ、じっくりとブログ記事作成に取り組む心境になれず、TwiterやFacebookでの発信に留まり、ブログ更新まで至っていません。4月初めまで、この状況が続きそうです。

以下、私の認識を取り急ぎお知らせします。

1)地域的な湿度の差によって夜間の放射冷却量の差が生まれているという事は、温暖化に必要な温室効果の主因はCO2ではなく水蒸気なのではないでしょうか?

局所的な現象の仕組みが大規模な現象の仕組みに適用できると類推する際には注意が必要です。

水蒸気量が温暖化で大きな役割を果たしているとは思います。しかし、水蒸気は大気中で、気体、液体、固体の間で熱の出入りを伴って変化します。また、飽和水蒸気量は気温に大きく依存します。このため、水蒸気は地球温暖化を加速する働きを持っていると思いますが、数値モデル化の難しさもあって、その詳細はまだ十分には解明されていないと私は思っています。

2)CO2が何ppm増大すると温室効果がどれだけ増え、空気の温度が何度上昇するという事を定量的に示す実験結果の文献があれば・・・

実験とはどのようなイメージでしょうか? CO2の温室効果そのものは理論的に明確と思います(室内実験の論文は知りませんが・・・。必要もないほど、明確だと思っています)。ただし、そのことと実際の地球規模の温暖化とを結びつけることは、容易ではありません。このために、種々の数値モデル計算が行われています。

自然界は微妙なバランスの上で成り立っています。その極一部が変化すると、その効果が一部に大きく現れることが多々あります。

>大気成分のたった約0.3%のCO2が3割増えて、現在の温暖化が生じたと言われると、直感的には納得し難いものがあります。

「直観的に納得できない」と言われるお気持ちはよく分かります。海洋物理学の分野でいえば、地球自転の効果としてのコリオリ力あるいはその緯度変化の効果は、「直観的に納得できない」最たるものだと私は思っています。地動説、大陸移動説も昔の人にとっては「直観的に納得できない」ことだったと思います。それを納得するためには、種々の知識の積み重ねしかないように思います。いろいろ調べて、どこかでストンと腑に落ちた時の快感は楽しいものでもあります。もちろん、「定説に納得できない」という思いから、科学は発展してきたのですから、無理に納得する必要はありません。

以上、取り急ぎ、ご返答申し上げます。

おおくぼ 様

早々にbobbyさんへのご回答をありがとうございました。
Posted by hiroichi at 2012年03月16日 01:54
hiroichiさんへ

hiroichiさんの主張に賛成です。
二酸化炭素の温室効果は明確にあります。
分子は分子運動します。
3原子以上の分子は、赤外線を吸収し、放射しやすいです。

また地球の対流圏という複雑な構造の中で、二酸化炭素の温室効果を精確に計測するのは困難です。
雲の温室効果は計測しやすいみたいですが、雲の量や質(色など)は一定ではありません。

私が温暖化ブームに懐疑的な理由は、「現在の温暖化の原因追求」の「統計的な裏付け」が弱いと思うからなのです。
だから私の場合はbobbyさんと違って理論的な部分にはありません。

地球を温暖化する原因を精確に数値化するのは困難です。
でも困難だからあきらめるのではなく、仮説を立てながら検証していくしかないと思います。 

bobbyさんへ

砂漠と言っても、いろんな種類があると思います。
沿岸部の砂漠と内陸部の砂漠は、成立条件が違うと思います。
また緯度や高度や周りの地形の影響も考慮のいれた方がいいと思います。
乾燥地帯ということであれば、南極も乾燥地帯です。
Posted by おおくぼ at 2012年03月16日 10:52
hiroichi様

忙しい中、ご返事を頂き有難うございました。

CO2の温室効果に疑問はありません。ざっとググってみても、下記URLのような簡易実験の記事をみつける事ができます。たぶん、自分でやってみる事も可能でしょう。しかしながら下記のような簡易実験は、容器内のCO2濃度が自然の濃度に比べて非常に高いので、地球温暖化の再現実験にはなりません。私が知りたいのは、産業革命前(を再現したCO2が280ppm)の容器と、2005年(を再現したCO2が380ppm)の容器で、他の温暖化ガスの条件を同じにした場合、2つの容器で、IPCCレポートにある0.5から1度の温度差が生じるかどうかを確認したいというのが質問の趣旨でした。

http://www.hyogo-c.ed.jp/~rikagaku/jissen/no_45/kitagawa/kitagawa.htm

http://www.eco816kids.com/lecture/globalwarming/01_thehow.pdf#search='二酸化炭素の温暖化実験'

http://www2.hamajima.co.jp/~elegance/kawamura/ondankajikken.htm
Posted by bobby at 2012年03月16日 23:15
おおくぼさん

近藤さんと増田さんのサイトを紹介頂き有難うございました。日本の最低気温を記録した場所での夜間冷却のメカニズムというのは、非常に興味深い記事でした。

あと、砂漠でも海辺から内陸部へ連続して続いている地形というのは、まさに湿度の違いが顕著に示される例ではないかと思います。サハラ砂漠で、日本の気象庁サイトのように、1年12ヶ月の昼と夜の月別平均気温を掲載しているようなサイトを見つける事ができればと思っていますが、なかなか探し当てられません。
Posted by bobby at 2012年03月17日 09:58
Posted by おおくぼ at 2012年03月17日 12:27
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