2007年04月30日

挑戦

4月16日付け毎日新聞の「余禄」が,東京大学平成19年度入学式で先端科学技術研究センターの目が全く見えない、耳が全く聞こえない福島智准教授が祝辞の中で「他者の立場を想像する力と、他者と協力しながら新しいものを生み出していく営み」こそが挑戦であると訴えたことを紹介している.

早速,東京大学のHPにアクセスして,そのスピーチの全文を読んだ.その最後に「困難に挑戦するということ」について述べられている部分を,ちょっと長いが以下に引用する.
私は「挑戦」とは、一人だけでがんばって一人だけで成果を得ることではなく、常に有形・無形の他者の手助けと共にあるものだと思います。
 挑戦とは、単に無謀な危険を冒すことではなく、地道な努力と準備があって、成功するものです。
 挑戦とは、相手を打ち負かして競争に勝つことを意味するのではなく、その本質は、自分自身に挑戦することです。
 挑戦とは、他者の立場を想像する力と、他者と協力しながら新しいものを生み出していく営みです。
 挑戦とは、ときに孤独なものですが、一人だけで生きている人間は世界中どこにも存在しません。周囲の人とのつながり、他者とのコミュニケーションを常に重視すべきです。
 そして、挑戦とは、常識的な意味での社会的な名誉やステータスを得ることだけがその目標なのではなく、自らがしっかりと生きていくこと、そして自分と他者が共に生きていくことを支えていく営み自体の中に、本当に困難な部分があり、その営みこそが最も重要な挑戦なのだと思います。
上で述べている「挑戦」を「人生」に置き換えても全く同じことが言えると私は思う.このような,すばらしい祝辞を述べられた福島准教授と福島准教授にその機会を設けられた学長に深く敬意を表する.

なお,上の記述は,例えば以下のように「挑戦」を「(海洋学の)研究活動」に置き換えることが可能である.
・科学研究とは、同業者を打ち負かして競争に勝つことではなく、その本質は、まず第一に研究者が納得できる解釈を確立することである.
・科学研究とは、他の研究者の主張・論点・成果を理解しながら、他の研究者との議論を通して,実験・観察結果と矛盾のより少ない解釈・理論を生み出していく営みである.
・科学研究とは、常識的な意味での社会的な名誉やステータスを得ることだけがその目標なのではない.
・科学研究とは、人類が直面している種々の問題や未知な事柄を解決・解明して社会に貢献する営みである.

特に,国内外の研究者,同僚,学生,船の乗組員,技術支援員,事務局,その他多くの方々の助力を得て海洋の観測研究に従事してきた私にとっては,「科学研究は一人だけでがんばって一人だけで成果を得ることではなく、常に有形・無形の他者の手助けと共にあるものだ」ということを痛感している.
posted by hiroichi at 03:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑感 | 更新情報をチェックする
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