2007年04月14日

プレスリリース

コメント欄での議論が格別に面白かったにもかかわらず,そのコメント受付を停止中の理系白書ブログの4月4日の広報戦略と題するエントリーで,以下の記述が目に入った.
大学側からの「リリース作成上の留意点」が記されたフォーマットが残っていた。

・結論から書く。
・専門用語はなるべく避けて、文章は短く。
・「初めて」という要素をきちんと盛り込む。
・暮らしに身近な部分があると、記事化の可能性が増す。
・問い合せ先は、研究を熟知していて、必ず連絡が取れる人に。記者は必ず問い合わせをする。
・数字の間違いは致命的。何度も確認を。

あまりにもツボを心得た留意点で、読みながら笑ってしまった。
「どういうリリースだったら記者さんは興味を持つのか?」と個人的に尋ねられたときに答える要素がもれなく入っている。

上に述べられた留意点,特に3番と4番がツボを心得ているとするのならば,研究成果がマスコミで報道されることは研究成果の社会への還元・貢献とは全く関係のない単なる宣伝ではないかと言いたくなる.


研究成果の社会貢献度の目安の一つとして新聞報道された件数を挙げなければならないために,「どういうリリースだったら記者さんは興味を持つのか?」という質問を発せざるを得ない立場に居ることに空しさを感じてしまう.

科学とは,より矛盾のない理解へ近づくための試行錯誤の過程であり,「初めて」ばかりを追い求めているのではない.検証があって初めて「新発見」に有効な意味が付加され,一般に認められる.また,「暮らしに身近な部分」を重視することは,目先の表面的な事象に関連することに重きを置く立場であり,根源的な問題の解決への努力を軽視していることになる.

一般の研究者に比べて科学普及に強い力を有する科学担当記者は,センセーショナルな話題を追いかけるのではなくて,科学普及の重要な役割を担っていることを強く認識して報道してもらいたい.科学立国を目指すのならば,学校教育の改革よりも,科学担当記者の拡充と再教育がもっとも効率的と思われる.
posted by hiroichi at 02:58| Comment(0) | TrackBack(1) | 報道 | 更新情報をチェックする
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